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第35話


「……こいつは、良い刀だな」


 鍛冶師の元へと持っていくと、ドワーフの男性は雪切に目を見開いていた。


「みたいですね。マジックコーティングお願いしても良いですか?」

「ああ、了解だ。承るぜ、そんじゃまあこれ引換券な。明日の朝までには完成させておくから取りにきな」


 ドワーフの男性が微笑みながらこちらに引換券を差し出してくる。


「ありがとうございます、それではまた明日」

「おうよ!」


 それを受け取った俺はまだ約束の時間には早かったため、一度宿へと戻った。

 空は気づけば暗くなっていた。街中を照らすように等間隔で設置された街灯が街を照らす。

 魔力を貯め込んで光る魔石を用いた明かりだ。基本的には日中の間に魔力を貯めて夜に光るようなのだが、一部光っていないものもあって場所によっては少し暗い。


 あれらを作っているのは確か錬金術師の才能を持っている人たちだったか。錬金術師は魔道具と呼ばれるものが作れるそうで、手に入れて研鑽を積めばまず金に困らないそうだ。

 そんなことを考えていたのは、ちょうど錬金術師が営んでいる店が視界に入ったからだ。


 魔法の才能がない人でも魔法に似た力が使えるようになる魔道具。それを出店の見える位置に置いて商売していたので、少し気になって視線だけを向けて歩いていった。

 それからすぐに借りている宿が見えてきたので、中へと入っていく。


「いらっしゃいませー、あれ兄さん? 早いですね」


 宿の受付では可愛らしい服に身を包んだルーナがいた。天使のように微笑んでいた表情が驚いたようになる。

 

「今日はキリが良かったからな。俺は部屋で休んでるから、仕事頑張って」

「はい、分かりました兄さん」


 俺はすぐに宿の階段を上がり、自室へと向かう。ルーナと同じ部屋であり、彼女の折りたたまれた衣服がベッドの上に置かれていた。

 俺も汗をかいたので服を着替えようと脱いでいると、ちょうど扉が開いた。


「あっ、兄さん。すみません着替えをしていたところみたいで」

「ん? ああ、いや鍵をしていなかった俺が悪いし、気にするな」


 ルーナとはもうずっと一緒にいるので別に裸を見られたくらいは気にもならなかった。


「それにしても……何だか以前とは比べ物にならないくらいがっしりしていますね」

「……ああ、そうだな」


 筋肉などは再生の勇者もあってか比較的つきやすい気がする。

 あとは、単純に魔物の心臓を食べたときに肉体自体が強化されているというのもあるだろう。


「ちょ、ちょっと触ってもいいですか?」


 ルーナが頬を染めながら、こちらへと近づいてくる。


「べ、別にいいけど……ちょっとおまえ鼻息荒いぞ?」

「そ、そうでしょうか? だって、兄さんの筋肉が立派なんですもん。失礼します……!」


 ルーナがつんつんと、俺の腕をつついてきた。

 くすぐったい感触だった。彼女のすらりと伸びた手は、少しひんやりとしている。


「お、おい。もういいだろ?」


 俺はルーナの手から逃げるように服を着た。

 ルーナは少しだけ残念そうにこちらを見てから、ため息をついた。


「す、素晴らしい筋肉でした。ありがとうございます」

「……どういたしまして」

 

 この返事で果たして合っているのだろうか?

 首を傾げながら着替えを終えると、


「それでは、ごはん食べに行きましょうか?」

「そうだな。今日はどこに行く?」

「今日もこの前と同じ店に行きませんか? なんだかお魚が食べたい気分ですので」

「ああ、了解だ」


 そういって彼女とともに部屋を出ると同時、ルーナが腕に抱きついてきた。

 腕を組んで歩くことになるため、周囲の視線が痛い。

 ……まあ、恥ずかしいけどルーナに変な虫が寄り付かないと今は自分を納得させておこうか。


「誕生日まであと一週間か」


 ぽつりと呟くと、ルーナが頷いた。

 今日は4月16日だ。ルーナの誕生日まで残り一週間だ。


「成人の儀で、才能も鑑定しますね。……私、初めは戦闘できる才能が良かったですけど……」

「そうなのか?」

「はい。兄さんと一緒に冒険したかったので……でも、正直今の兄さんに追いつくのは難しいですよね……。確か、レベル差があるとレベル上げってできないんですよね?」

「そう、だな」


 戦闘に参加することで経験値が得られるのだが、高レベルの人がいるとすべてそちらに経験値が入ってしまう。

 つまり、ルーナのレベル上げを行うのであれば、ルーナは近いレベルの人と一緒に行うか、一人で戦う必要があった。


 一人は危険なので絶対にそんなことはさせられない。


「どうしましょうかね……?」

「……まあ、才能をもらってからまた考えればいいんじゃないか?」

 

 あまり深く物事を考えない俺にルーナもにこりと微笑んだ。


「そうですね。出来れば兄さんをサポート出来るような才能だったらいいんですけどね」

「……成人してからもずっと一緒にいるのか?」

「……ダメ、ですか?」


 不安げにルーナは俺の腕を握ってきた。

 ……ダメ、じゃないな。


「まあ、ルーナが良い人を見つけるまでは一緒にいてもいいけどさ」

「それならもう見つけていますから」


 嬉しそうに微笑んだルーナに、俺も悪い気はしなかった。

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