第29話
迷宮の最奥は通常六名で入ってしまうと、次の人間が入れないようになっていた。
逆にいえば、六名全員で入らなければ、出入りは自由に行える。
迷宮攻略の裏技ともいえ、同時に基本的な技術ともいわれているこの技を知っていれば、安全にボスモンスターの情報収集を行うことができる。
……まあ、たまに荒らし、とも言われるような冒険者たちが手柄を奪うために乱入することもあるため、一長一短の技であるが。
どちらにせよ、一人で行動している俺は自由に最下層の移動はできる。
とりあえず、この最下層の魔物……暫定的にデュラハンと名付けるが、デュラハンはかなりの力を持っていることが分かった。
……まだ今の俺では実力不足なので、もう一度挑んだところで勝ち目は薄いだろう。
奇襲を仕掛けるにも、その土俵にさえ入っていなかった。
スタミナ勝負を仕掛けるにしても、デュラハン自身が疲れ知らずといった様子だったからな。
それらを総合的に考えた結果、デュラハンの討伐ランクはSランク相当はあるはずだ。
とりあえず俺は14階層でしばらくレベル上げを行ってから、迷宮を脱出した。
最終的なレベルはここまで成長した。
エミル 男 18歳
体レベル 3023
才能:【再生の勇者:レベル3023】【憑霊ブラッドウルフ:レベル2511】【憑霊ミノタウロス:レベル2582】【憑霊シャドーアサシン:レベル2421】【憑霊ヘビーミノタウロス:レベル2022】【憑霊ダークスケルトン:レベル2301】【憑霊アクアリザードマン:レベル2000】【憑霊ウォリアオーク:レベル2012】【憑霊サムライオーク:レベル456】
今日一日だけでも400程度は上昇することができた。
ようやく3000レベルを超えたので、これからさらに高難易度の迷宮や魔物にも挑戦できるだろう。
レベル上げの効率はタウロス迷宮の方が明らかに良いな。
ただ、ウォリアソードの強化も考えると……うーん、という感じだ。
難しいところだな。
この二つが両立できる迷宮が良い迷宮と言われているのだが、中々そういった迷宮はないものだ。
ギルドへと戻り、受付に事情を説明する。すぐに奥へと通してもらった。
紙の匂いが充満するギルド長の部屋へとついた俺は、示されたソファへと腰かけた。
「よぉ。帰りが遅かったから心配していたんだぜ? 大丈夫だったのか?」
「はい、攻略については特に問題はありませんでした」
「ま、まさか……おまえ一人で攻略したわけじゃないよな!?」
「……いえ、出来ませんでした」
「ま、まあ……そりゃあそうだよな。移動だってかなり時間かかるだろうし……とりあえず10階層くらいまで様子見って感じか?」
「最終階層は15階層でした。ただ、そこに出現するモンスター……見た目はデュラハンのようなそいつがかなり厄介で討伐まではできませんでした」
……勝ちたかった。
そんな悔しい思いを胸に抱きながら、俺が歯噛みしているとギルド長が頬を引きつらせた。
「ちょ、ちょっと待て! おまえ最終階層まで行ってきたのか!?」
「はい」
「……は、はえーなおい。だって、10階層から先はまだ情報がなかっただろ? よくもまあ攻略できたな」
ああそっか。
まったく情報がない中での移動はかなり時間がかかるんだった。
といっても、それはパーティー単位で移動する場合だ。パーティーで移動をするとなると、魔物と遭遇したときに戦うかどうかの選択をする必要がある。
そういった選択は、たくさんある。休憩を取ったり、右側から回っていくのか、誰を先頭に歩いていくのか……。
俺は一人なので、そういったロスになりそうなことが一切ないのだ。
「まあ、それは……一人で戦いはほぼ逃げていたというのもありますね」
「……そうはいってもな。んで、15階層が最下層は分かったが、デュラハンか。かなり強かったのか?」
「はい。正直言って歯が立ちませんでした」
「……お前さんの能力でも無理となると、敵はSランク以上ってことか」
「恐らくはそうなりますね。……道中の魔物たちは10階層までの魔物と代わり映えしませんでしたね。11階層から14階層まではこれまでに出てきた魔物がランダムに出現する感じでした」
「了解だ。……それならまあ、最奥に挑まないようにってことで冒険者たちに開放しても問題なさそうだな。とにかく、助かったよ、ありがとう。……今頼れる冒険者はお前くらいだからな。これからも頼むぜ?」
ギルド長に肩を叩かれ、俺は笑みを返す。
とりあえず、無事依頼を達成できてよかったな。
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