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第18話


 ウォリアオーク。

 そいつは15階層のど真ん中にて挑戦者を待ち構えていた。


 全長は3メートルほど。大きい体は、筋肉で膨れ上がっていた。

 他のオークたちはどちらかといえばだらしない体つきの者が多かったが、このオークはとにかく鍛え抜かれていた。


 さすが、Aランク相当の認定を受けている魔物だけある。


 15階層は、平原が広がっており円形であった。


 迷宮の壁が見えるまで、何もない。まるでここは闘技場のようであった。

 ウォリアオークがこちらに気づいたため、俺はすぐにブラッドウルフの憑霊を行う。


 敏捷力を強化してくれるブラッドウルフは、初見の魔物相手では使い勝手が良い。

 俺がじっとウォリアオークを見ていると、ウォリアオークは腰に差していた剣を抜いた。


 あれが、ドロップ品であるウォリアソードだ。

 ボス級の魔物は仕留めたあと、エリア内に宝箱が出現する。

 その宝箱の中には、ランダムでアイテムが入っているんだ。


 ちなみに、ウォリアオークが持っているウォリアソードを盗んでも無駄だ。

 ウォリアオークが死ぬか、第15階層を出るときに霧のように消えるからだ。


 ウォリアオークが剣を握りしめ、腰を下ろす。

 俺がじっと集中していると、ウォリアオークの体がぶれた。

 ……速い!?


「……くっ!?」


 何とか剣を合わせる。Aランク相当、という話だったが、ボスモンスターということもあってか、ヘビーミノタウロスよりも強く感じた。


 ……この迷宮の難易度をAランクにまで跳ね上げるだけの実力は、確かにあるようだ。


 以前、スパーダたちと攻略したときの俺は見ているしかできなかった。

 そのときは、自分との力量差がありすぎて、戦いでは何が起こっているのか分からなかったが、今は視える。


 この戦いにおいて、剣の技量は完全に負けている。

 ウォリアオークは、人間でいえば【剣術】のような才能を持っているのだろう。

 俺も訓練を積んではいるが、やはり才能持ちの相手ではどうしたって劣る。


 ウォリアオークによる人体の急所を狙う連続攻撃――。

 それに剣を合わせるのがやっとだ。押されていく。

 レベルは十分にあがっているのだが、それでも足りない。


 馬鹿正直に正面からぶつかってみても、ウォリアオークには勝てないだろう。

 だからこそ、搦め手を使う。

 ウォリアオークの重い一撃に、よろめく。


 その隙を、ウォリアオークは見逃さない。

 ウォリアオークの両目が鋭くなり、魔物の剣が俺の心臓を貫いた。

 普通ならば死んでいるだろう。だが、俺は死なない。


 そのままの状態で、ウォリアオークの首を斬りつけた。


「……」


 ウォリアオークは驚いたように目を見開いたまま、その首がかたりと傾いて落ちた。

 ……俺は体に刺さっていた剣を抜いて、穴がぽっかりあいたそこを撫でた。


 すぐに再生して、傷はなくなったが、まあ、さすがにちょっと痛い。


「なんとか、勝てたな」


 ……【再生の勇者】がなければ間違いなく死んでいただろう。

 ウォリアオークの死体をちらと見て、俺はすぐに心臓へと手を伸ばす。


 ぱくりと噛みついた。そして飲み込むと、新たな力が手に入る。

 【憑霊:ウォリアオーク】。

 まとった瞬間、俺の剣に対しての理解が深まった。剣を握ると、今までと感覚が大きく違った。


 腕と剣の感覚が、繋がった。そんな感じだ。

 ……もしかしたらウォリアオークの憑霊は、才能【剣術】のような効果があるのかもしれないな。


 さすがに、【剣の勇者】ほどはないようだったが、それでも武器系統の才能を何も持たない俺からすれば、非常に嬉しいものだ。

 体も、筋力と敏捷力がバランスよく鍛えられている気がする。


 力だけでいえば、ヘビーミノタウロスが、敏捷だけでいえばブラッドウルフのほうが僅かに優れているようだが、ウォリアオークはその両方ともが高水準でまとまっている。


 さすが、ボスモンスターの憑霊だ。

 さて、次はドロップアイテムだな。

 宝箱があったので近づいて開いた。


「……ぽ、ポーションかい!」


 大外れのドロップアイテムだ。いや、確か結構質の良いポーションだったはずだけど、俺別に怪我しても再生するからな。


 ……とりあえず、ここからは周回だ。

 宝箱をあけると、その近くに魔法陣が出現する。

 これは、迷宮の外に自動でワープできるものだ。


 ちなみに、このボスモンスターの部屋は七人以上で入れないため、パーティーは基本六人編成だ。

 魔法陣に乗り、外に出ると、再度ボスモンスターの部屋へと挑戦できるようになる。


 ……ここからが、周回だ。

 今日の目標はウォリアソードの回収だな。


「一周30分くらいで終わらせたいな」


 俺はブラッドウルフを纏い、再びオーク迷宮へと挑んだ。

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