第15話
俺に決闘を挑んでくる奴はいなかった。
俺の再生能力を目の前で見たのだから当然か。
少しでも戦いを経験したものならわかるだろう。
俺はどんな攻撃を受けても再生するんだからな。
決闘は俺の勝利で終わり、奴隷の首輪をつけたスパーダは騎士とともにその場から離れることになった。
他の勇者たちは、最後に俺を一睨みして立ち去った。
……ま、あれだけの力をみせたのだからバカな行動を起こすこともないだろう。
バカな行動を起こす金も武器も今はないしな。
俺はギルドの一室へと戻り、そこに並べられていた品々を見る。
共にやってきたギルド長がこちらを見て来た。
「そんでどうする? 欲しいものは持っていけばいいさ。必要ないものはこっちで買い取るぜ」
「それなら、アイテムボックスはもらいますね」
「剣はいいのか? こいつは中々良い剣だぜ?」
ギルド長はスパーダが使っていた剣を手に持って何度か素振りをする。
「……そうは思いますが、スパーダが使っていた剣だと思うとあまり使う気がおきなくて」
俺がそういうとギルド長は鞘から抜いていた剣を戻した。
アイテムボックスを回収した俺は、それを腰にくくりつける。
……あいつらのものはできる限り使いたくはない。
とはいえ、俺はこれから本格的に冒険者として活動していこうと考えていた。
アイテムボックスは、冒険者にとって必需品であり、そもそも市場に中々出回らない。
市場で買おうとすると、結構な値段になるだろうしな。
今こうして買い取り自体は200万ほどだったが、おそらくこのサイズのアイテムボックスでも500万くらいはするだろう。
「とりあえず、これでパーティー関係の問題は解決だな。それで、エミル。これからどうするんだ?」
「ルーナがもうすぐ15歳の誕生日を迎えます。それまでは、この街で俺もレベル上げを行います」
最終的には10000レベルを目指したい。
この世界に少数しかいないSSSランク冒険者のレベルは最低でも10000を超えていたはずだ。
……やはり、冒険者になった俺もそこに到達したいと。
ルーナが才能を手に入れたあとは、この街に残るかはたまた旅をしながらレベル上げをするのか。
今後についてはそれから考えればいいだろう。
「ほぉ……それなら、うちのギルドも色々と依頼を出していいですか、勇者様?」
「……依頼は出来る範囲であれば。あと、別に勇者って呼ばないでください。あんまり好きじゃないので」
「悪かったな。それじゃあ、アイテムボックスの分差し引いた1700万ゴールドはすべてギルドバンクに預けておくか?」
「お願いします」
俺がそう声をかけると、どこに隠れていたのか妖精が現れた。妖精はギルドカードの管理を行っている。
依頼達成の状況であったり、ギルドバンクなどの情報がギルドカードには記載されている。
妖精に俺のギルドカードを渡すと、何かを記してくれた。暗号化されているため、俺には解読できなかったが、預けた金額が書かれているのだろう。
とりあえず、これで問題は解決できたな。
明日からは予定通り、今の力を活かして冒険者活動をしていこう。
どれだけ戦えるのか、どれほど攻略が進められるのかと思い、俺はうずうずとしていた。
宿に戻った俺はちょうど宿屋でのアルバイトを終えたルーナとともに夕食を食べに行く。
「腕、貸してくださいね」
「……そんなくっつくなって」
「くっついたらダメな理由があるんですか?」
「ほら、妹なんだから普通くっつかないだろ?」
「では、女としてみてくださいね」
「いや、それは飛躍しすぎだって」
ルーナはもう何を言っても無駄なようで、腕を組んできた。
……いや、別に悪い気はしないけどさ。
「それで、今日のギルドはどうだったんですか?」
「とりあえず、賠償金として1700万ほどもらったよ」
「そうなんですね。それで、これから冒険者として頑張っていくんですよね?」
「……ああ、レベル上げまくって最強の冒険者を目指そうと思う」
「頑張ってください、私も応援していますからね」
「これまで、色々と助けてもらってたからな」
「つまりそれは……一生私と一緒にいたいということですか?」
「……ちょっと過剰だが、とりあえずはまだしばらく一緒だな」
「寿命尽きるまでですね?」
「それまでじゃないからな?」
ルーナはぺろりと舌を出して悪戯っぽく笑う。
そんな彼女の額を軽く小突き、俺たちは笑いあう。
……これから、本当の意味での冒険者生活が始まるんだ。
これまで、ルーナにはアルバイトをして支えてもらっていたんだ。
今度は俺が、その分を返していけるくらいの冒険者を目指そう。
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