第13話
俺の問いかけが意外だったのか、スパーダは目を丸くしていた。
その驚きは一体何に対してなのだろうか? 決闘への誘いに乗ったことなのかそれとも他の理由があるのか。
「な、なに? オレが、てめぇに負けるだと?」
……いや、まったくもって違った。
さすがにスパーダは俺の想像の上を行く男だった。
「……ああ、そうだ。俺がおまえとの決闘を受ける意味がまるでないだろ? だから、負けたときに何かしらのものを賭けてくれないとわりに合わないんだ」
そういうと、スパーダは拳を握りしめ震えだす。
かっと目を見開き、こちらへと指を向けてくる。
「昨日は油断したが、剣さえ握ればオレがてめぇに負けるわけねぇだろ!」
「それなら、俺が負けた場合はスパーダにその剣と服を返してやる。それで? わざわざ受ける必要のない決闘を俺が受けてやるといって、ここまでのものを用意したんだ。何もそっちが用意しないのなら、この決闘はなかったことにするぞ?」
俺がそういうとスパーダは目を輝かせた。同時、ブロックやナイチアたちまでもが同じように声をあげる。
「待てよ! それならオレたちも決闘だ!」
「そうですわ! あなたみたいな雑魚を倒して全部取り返せるのなら、わたくしもやりますわ!」
「僕もです!」
「私も!」
……ああ、やりたいのならいくらでも引き受けてやる。
ここで約束を取りつけてやってもいいが、とりあえずはスパーダと戦ってからまた判断させればいいだろう。
「スパーダとの決闘が終わったあとでいくらでも受けるよ」
俺がそういうと、スパーダは眉間を寄せる。俺の先ほどの返答はスパーダにはこう聞こえただろう。
『スパーダを倒した後で、いくらでもやってやる』、と。
「て、てめぇ……オレにボコボコにされて、その後も決闘できると思っているのか?」
「負けるつもりはない。それで、何を賭けるんだ?」
「……はっ! 何も賭けるものはねぇが、敗北した場合はオレを好きにすればいいさ! どうせ負けねぇからな!」
「……わかった。それなら、スパーダを奴隷商に売ってその金を俺がもらう。それでもいいか?」
「はっ、なんでもいいぜ!」
スパーダはそういって、笑みを浮かべる。
まさか……自分自身をかけるとは思っていなかったな。
奴隷というのは男よりも女の方が需要が大きいが、スパーダに関して言えば話は別だ。
彼のような優秀な才能を持っているものなら、高値で売れるだろう。
「分かりました。それを足りない分の100万ゴールドへの補填にもあてましょう」
騎士もこの決闘を認めた。
これに勝利すれば、俺は2000万ゴールド以上の金が手に入ることになる。
……これは想定以上の結果だ。まあ、そんな大金あっても何に使うかなんて見当もつかなかったが。
「それじゃあ、やるとしようか。武器は自由に使ってくれていい」
「……へっ、本気で言ってんのか?」
「ああ、その代わり後でいい訳をするなよ?」
「言い訳ってのは敗北者がするもんなんだよ」
「だから言っているんだ」
俺が念を押すようにそういうと、スパーダはがんを飛ばしてきた。
昔はこの視線にも怯えていたものだが、今は違う。
「はっ、上等だ。覚悟しろよ」
スパーダは剣を腰に差し、それから俺を睨みつけてきた。
俺たちはすぐに中庭へと向かい、それからお互い距離をとって睨み合った。
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