第11話
「お、おい! ふざけんじゃねぇぞ! オレたちの仕事道具だぞ!?」
彼らが装備を失えば、冒険者活動が停滞するのは間違いないだろう。
ゼロから始まるわけではないが、今彼らが身に着けているような装備を整えるのには長く時間がかかるだろう。
「別に、今の装備ではなくとも挑む迷宮、依頼の難易度を下げれば十分に活動可能でしょう」
「ふざけんな! オレの剣は、クラセルト迷宮のボスを倒しまくってようやくドロップした大切な剣なんだよ!!」
「よかったですね。借金のかたにできますよ」
騎士さん……結構良い性格をしている。
笑顔でそういった騎士に、スパーダは頬をひきつらせていた。
「うるせぇ! こいつはオレのものなんだよ!」
「大人しく回収させてもらえないのであれば、罰則の変更もありえますが? 罪人として処理されれば、罪人として危険な迷宮の調査に駆り出されますがどちらが良いでしょうか?」
……罪人を利用した迷宮攻略というのもある。
危険というのは様々だ。魔物が単純に強い場所もあれば、あちこちにトラップがあって一歩歩けば死にかけるような迷宮もある。
今の俺ならば再生の速度もあがったので、ちょっとの状態異常ならすぐに再生できるだろうが、常人では一たまりもないだろう。
スパーダは顔を青ざめさせていた。罪人たちの末路を知っているからだろう。
「冒険者として活動できるのですからそれで納得してください。ああ、とはいえ、今回問題を起こしたあなた方にはしばらく監視がつきますのでその点だけはお忘れのないように」
それでも、冒険者としての生活はまだできる。
心を入れ替え、ここからやり直せばもう一度名誉をつかみとることは可能だろう。
それだけの才能を、皆が持っているのだから。
「……」
スパーダは諦めたように剣を騎士へと渡していた。その手は震えていた。
「それでは鑑定していきましょうか」
騎士は【鑑定】の才能を持っているようだ。
「非常にレベルの高い剣ですね。これならばそれなりの金額で買い取り可能ですね。300万ゴールドといったところでしょうか」
ちらと騎士がブロックたちを見た。
「それぞれの身に着けている装備をこちらへ」
ブロックが顔を顰めて声をあげようとすると、騎士はにこにことと続ける。
「危険な迷宮への調査と、どちらが良いですか?」
……え、えげつない。
この街で事件を起こせば、この騎士さんがやってくる可能性があるんだな。
絶対に事件を起こしてはならないと思えた。
皆が黙って装備を渡していった。
といっても、彼らが身に着けていたものの中ではスパーダの剣が最高額で、あとは大したことはなかった。
それでざっと1400万だった。
「足りませんね……どうしましょうか」
「も、もうこれ以上はないぞ?」
スパーダが震えるような声でそういった。騎士はちら、とスパーダ達を見る。
騎士の視線は……スパーダたちの衣服を見ているようだった。
「まだ、身に着けている服がありますね。宝石やアクセサリーの類もすべて出してください」
「ふ、ふざけないでくれませんの!?」
「こ、これは大事なもの!!」
これに対して、一番反応したのはナイチアとフエリモだ。
女性陣二人は宝石類が好きで、特に色々と買っていたし、この反応は当然だろう。
「分かりました。それではお二人は罪人として――」
「ま、待ってくださいまし! え、エミル!」
「……なんだ?」
急に名前を呼ばれて首を傾げる。すると彼女は頬を染め、
「あなた、わたくしの体を一夜だけ自由にしたいと思いませんこと?」
そういうと、彼女は胸元を見せるようにアピールしてきた。
ちら、と騎士とギルド長の視線も向いた。
「どうしますか? そういう手段での和解の方法もありますが」
「いえ、興味ありません。お金でお願いします」
「な、なななな!」
俺がそういうと、ナイチアは顔を真っ赤にする。
……興味ないと言われたことと、お金の支払いの両方に怒りがあったのだろう。
結局、ナイチアとフエリモは宝石類を渡していき、それによってようやく1700万まで到達した。
「身に着けている服も売れば100万くらいにはなりそうですね。こちらで、寂れた服も無料で提供しますので、それぞれ着替えてきてください」
……そ、そこまでするのか。
冒険者としての規則はきちんと守らないといけないな。
改めて、そう思われされた。
そして、着替えを終えたスパーダたちは、あまりにもみすぼらしい格好となって、顔を怒りで真っ赤にしていた。
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