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聞きたい言葉、伝えられていない言葉

作者: 樫原 せりな

他サイトで掲載したものを加筆修正したものです。


誤字脱字報告ありがとうございます!

『今年こそ笑顔の絶えない1年になりますように。』

パンパンと神様の前で手を合わせて必死に祈る私。

よしっと気合いを入れ境内を背に振り返った。

年末年始も過ぎ御用始めで会社の上司を始め部署の人たちと近場の神社へ毎年恒例の参拝へやってきていた。

「やけに熱心だったけど?」

会社に戻る最中、同僚が言った。

「あははは・・見ちゃいました?初詣に行ってなくてついつい」

気まずさから苦笑いを浮かべ答えた。

「はっ?彼氏と行かなかったわけ?」

驚く同僚を尻目に無言で私はデスクに座り仕事を始めた。

「おかえりなさい」

カチャッ

という音と同時に真っ暗な中、光が零れ私は口を開いた。

「うわっ・・・・いるなら電気ぐらい点けろよ。」

床に座り込んでいる私に気付き部屋へ入ってきた当人が叫んだ。

肩に担いでいる荷物をドスンッと下ろし電気に手を伸ばし点けいつもの定位置のように私の隣に座った。

「ねぇ、楽しかった?」

視線を向けることなく隣に向かって言葉を投げ掛けた。

「楽しいもなにも仕事だ。楽しいわけない。」

はぁーと大きな息をわざとらしく吐きゆっくり腰に腕を回してきた。

私は、その腕に気付かない振りをしてその場から立ち上がり窓に近づいた。

コンコンと、ノックの後にカチャッと音がした。

「光輝、お雑煮のお餅いくつ・・・あらっ、初音ちゃん来てたの?夕食一緒にしない?日曜まで一人なんでしょう?」

彼の・・光輝の母親は私がいることを気にも止めずに話を進める。

「いえ、今から出掛けるので。」

彼の方を見ることなくおばさんにそう言うと窓を開け自分家側のベランダへと渡った。

「あんたたちケンカでもしたの?」

私が出ていった後、やれやれと呆れたように部屋から出ていったようだ。

光輝は私の1つ上のお隣さん。

両親が親友同士ということもあり昔から互いに行き来があった。

特に私たちは二階の窓からベランダを使いお互いの部屋に行き来していた。

高校までは一緒だったが向こうは大学、こっちは短大と別々に進学してからはまったく交流が・・いや、会うことがなくなってしまっていた。

だから私たちの間には6年間の空白がある。

そんな私たちがまた一緒につるむようになったのはたまたま居酒屋で隣のグループに光輝が座っていただけのこと。

でもそれももう2年も前のことになってしまう。

現在25歳になった私と26歳になった光輝は友達以上恋人未満を続けていた。

周りは、私たち二人は付き合っている以外の何ものでもないと言う・・・

でも実際に付き合っているわけではない。

確かに、一緒にでかけたりイベントごとも一緒に過ごしたりとしている。

でも、光輝に何も言われないのも事実だ。

私は幼いころから気づけば光輝のことが好きになっていた。

その気持ちに気づいたのは高校を卒業し、会わなくなってからだった。

だから今の状況を楽しんでいる。が、いいかげん限界なのも事実・・・

「きゃぁぁぁぁかわいぃ~」

パシャパシャッと幾度となくシャッターを切る私。

「ちょっと・・・旦那よりも親バカを発揮しないでくれる?」

ベッドの端に掛け産まれた我が子を抱きはしゃぐ私に冷たい視線を投げ掛ける友人

「だって、見てよ。この小さな手!!!」

小さな手に指をちょこんっと乗せはしゃぐ私

「おい、そこのバカ。もう面会時間終了だぞ。」

突如後ろから頭をはたかれ突っ込まれた。

「なによ、バカって!!」

噛みつくように後ろにいる奴に言った。

「ほら、送るから用意しろ。じゃぁ、また明日来るからな。」

引き剥がすように子どもから私を放し急かした。

そして、友人と胸に抱かれている我が子に言った。

「送ってくれてありがとう。落ちついた頃に家に行くわね。」

車から降り私はそう言いさっさと家の中に入った。

カチャッ

家に入りリビングの電気を点けた。

テレビをつけ冷蔵庫からビールを取り出し喉に流し込んだ。

「あいつ誰だよ。」

誰もいない筈の家に低い聞きなれた声が響いた。

「・・・光輝。びっくりさせないでよ。」

ビクッと肩を揺らし、いつの間にか背後に立っていた光輝を睨みつけた。

口に含んだものを出さなかった私をほめてもらいたい。

玄関の音はしなかったからきっと2階からやってきたんだろう。

「答えろよ。」

私の睨みなどまったく気にする様子もなくただそう言葉を吐いた。

「誰だっていいじゃない。光輝には関係ないでしょう?」

彼の横暴な態度にイラッとした私は手に持っていたビールをそばにあったテーブルに叩きつけるように置いた。

「関係ないな」

私の言葉にハンッと吐き捨てる光輝

「えーぇ、まったく関係ないわ。光輝に約束を破られたからって怒る権利が私にないのと一緒でね。」

本当は初詣は光輝と行くはずだった。

そう約束をしていた・・・なのに、光輝は急な出張を親に連絡をいれても私には一切連絡をくれなかった。

「もう帰ってくれない?」

その時のことを思い出し、目頭が熱くなっていくのが感じた。

でも、光輝にそのことを悟られたくなかった。

顔を見られたくなくて光輝から逃げるように後ろを向いた。

後ろから押されたような振動が起こったと思ったら目の前に現れたいつも目にする光輝の腕・・・

一瞬何が起こったかわからなかった。

少しして彼に後ろから抱きつかれていることに気づく

「ちょ・・・何するの・・・放して」

「いやだ。」

パニックっている私を余所に即答する光輝

「好きだ。」

光輝から離れようともがいていた手をピタッと止めた。

いや・・止まった・・・

「・・・」

何の反応も示さない私に後ろから怒鳴るように叫ぶ光輝

「なんか言えよ。」

イラッとした彼の言葉

「・・嘘だ。」

ポロッと出た言葉はそれだった。

「なんで、嘘って決めつけるんだよ!!」

私から身を離し、ぐるっと体を回転させられた。

「う・・そ・・・だ・・・・・ヒック」

目の前に光輝の顔があることに気がつかずに私はただそれだけを繰り返し泣き始めた。

「いつになったら俺を見てくれる?」

肩に手を置いたまま、聞いたこともないような絞り出す声をしている光輝

私はその声にびっくりして光輝を見た。

「・・・なんで、光輝まで泣きそうなのよ・・・」

目の前にいるのは誰?

さっきまでの強気ないつもの光輝はどこにいるの?

こんな今にも泣きそうな切ない顔をしている光輝なんて知らない。

「お前がいつまでも俺のことを好きにならないからだっ!!気付けこの鈍感」

「クスクス・・・」

光輝の言葉を聞き私はつい笑いが止まらなくなってしまった。

そんな私を見て呆気にとられてしまっている光輝

「・・・悪かったよ。もうお前にはかまわない」

しかし、しばらくすると光輝は諦めたように私から一歩づつ後ずさった。

「いつから?」

立ち去ろうとする光輝に投げかけた。

「なにがだよ。」

もう話かけるなオーラを出し、うっとおしそうに叫んだ。

「いつから私のこと好きだったの?」

こっちを振り向かない光輝の背中を見つめ私は言った。

「知るかっ。気づいたら好きだったんだよ。」

吐き捨てるような光輝の言葉に私は自然と笑みが零れた。

そぉーと彼の背中に手が伸ばせるところまで近づいた。

「私も一緒・・・好きよ。もういつかなんて思い出せないくらい前からずっと・・・」

光輝の体を両手で精いっぱい包んだ。


気持ちが通じ合い、落ち着いた頃

「あいつは誰だ?」

忘れていないぞとばかりに詰め寄ってきた。

「友達の旦那さん。ってか、夫婦そろって友達。子どもが産まれたからお見舞いに行ってたの。面会時間が終了したから、ついでだから送ってもらった。」

疑いのまなざしで私を見る光輝

「信じなくてもいいけど、そっちの言い分も聞くわよ?」

こっちこそ忘れていないからと言い返す。

「なんで、初詣に行けないって連絡しなかったのよ。」

視線を泳がせながらごまかすように私の頭を撫でる光輝

「まぁ・・なんだ。一種の賭け?」

一体何の賭けだ・・・・

「人がどれだけ悩んだと思ってんのよ!!」


HAPPY END




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