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彼女から見た俺
ポクポクポクポクチーン。
すすり泣く声。
もはや何言ってるのかわからないお経を読みあげる声。
葬式だ。
「葬式は人生最後の最大なセレモニーなんですって。知ってた?」
フェンスに寄りかかり誰ともなく呟いた女の服装は真っ黒だ。
腰まである長い髪が風に揺れる。
斎場の看板は故綾瀬政春儀葬儀式場と墨で雄々しく書かれている。
人当たりと面倒見がよく人望も厚い。
流されることなく自分の意思をしっかり持った人物。
傍観者の女にとって綾瀬政春はそんな存在だった。
「これからなのに」
欲にまみれた汚い大人たちは皆口を揃えて惜しむ。
「そんなの本人が1番知ってるし、知ったような口を利くことではないのに」
聞こえてきた言葉に顔をしかめ独りでに反論した。
忌々しげに斎場を睨みつけると背を向け、
「またね」
そう言うと消えた。