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「温泉に行きたい」

 オムライスを食べ終わった彼女が唐突に切り出した。

「今から泊まれる宿なんかないだろう」

「大丈夫よ。もう予約してあるわ」

「えっ? いつのまに?」

「ふふふ」


 夕刻だというのに新幹線の車内は混み合っていた。このグリーン車の車両にも通路に立つ乗客が何人か居た。彼女が宿どころか新幹線の乗車券まで予約していたのには驚いた。

「人の予定も聞かずに予約するなんて、無茶苦茶だな」

「あら、裕子の予定ならわかっていたわ」

「なるほどね。裕子が居ないとき、僕は君の思い通りってことか」

「だってそうでしょう?」

「違いない」


 熱海に着くと、タクシーでホテルへ直行した。着替えや必要なものは東京駅で調達した。

「取り敢えず、風呂に行こうか」

「お風呂ならそこにあるわよ」

 案内された部屋には専用の露天風呂があった。

「凄いな! 夜景がきれいだ」

 そうやって僕が露天風呂を物見しているうちに彼女は服を脱いで入って来た。そして、僕の服をはぎ取ると、体を密着させてきた。

「おい、ここじゃあ、外から見えるんじゃないか?」

「いいじゃない。誰も私たちの事なんか知らないんだから」

 それから湯に浸かって再び体を合わせた。のぼせそうになったのは温泉のせいなのか彼女のせいなのかも判断できなくなりそうになったころ、僕たちはようやく部屋に戻った。そして、そのまま何も身に着けずに布団にもぐりこんだ。


 ホテルをチェックアウトすると、彼女が手配していたレンタカーで付近の観光地を回り、夕方には東京へ帰ってきた。そして、そのまま彼女と別れて、僕は一度帰宅した。今日は妻が帰って来る。

 帰宅して間もなく、妻から電話があった。

『駅まで迎えに来て』

 僕は車で駅まで妻を迎えに行くと、両手いっぱいにお土産の袋をぶら下げた妻が待っていた。

「お帰り」

 



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