23. 虚構の歌
「……身体は大丈夫なのか?」
このような時に真っ先に身体の心配をしてくれる盟主は相変わらずだ。
初めて雨の庭で会った時から、ずっと温かな優しさで包んできてくれた。
さすがに私も、薄々気づいてはいる。
このヒトがきっと―――――。
だからこそ、その優しさが憎らしい。
なぜ「私の王」ではダメだったのか。
なぜ私に罰を与えてくれないのか。
「身体は大丈夫です。むしろ抑えてきたものを解放できているので楽なぐらいで。」
わざと銀髪を摘んで言うと、盟主はぐっと口を噛み締める。
「正直、こうして愛し子と話をすることが許されるのか、わからない。
ただ―――全ての責任は私にある。貴女の大切なものを奪い、辛い思いも沢山させた。この大罪は命をもって詫びても到底足りない。それにも関わらず此度の一件では国を、私たちを救ってくださった。心より感謝申し上げます。」
そう言うと、盟主は深く頭を下げた。
「巫子として何も知らぬまま振る舞っていた私が最も罪深いです。なにより、愛し子様をお守りできませんでした。申し訳ありません。」
アリアナ様もそう言って同じくらい深く頭を下げた。
まさか、謝罪されるなんて思っていなかった。
大罪、と言うならば、よっぽど私の方が罪深い。
それなのに責めもせず、真っ先に説明を求めるでもなく、自己弁護に徹するわけでもなく。
皆が皆その罪を背負おうとする。
なんて善良な人たちなのだろう。
思わず笑ってしまった。
ふっと肩の力がぬける。
「聞いていただけますか?」
私と、私の王の話を―――――。
✳︎
「まず先に断っておきたいのですが、私は愛し子ではありません。」
「えっ?」
訳がわからないという顔をする二人を前に、事実を淡々と述べてゆく。
「確かに私は風の精霊から選ばれ、それに相応しい力を授かっています。でも愛し子ではないのです。」
「それはどういう…」
「“愛し子”という存在は、“王”がいて初めて愛し子となるのです。」
そう。愛し子を護る役割を精霊から任されるヒト、愛し子と契約をするヒト、それが王となる。
護るヒトが決まらない限り、精霊の愛し子は“愛し子”にはならない。
「いつの時代も、どの国にも、必ず精霊に愛されし者は現れます。でも、その存在は一国を左右する。だから本人の自覚と気持ちが求められます。愛し子となって精霊に愛され、王に護られる、それを認める気持ちが。」
自分の中に眠る力に驚き、悩み、葛藤し、それでも精霊に愛され王と共に立つ覚悟をするのだ。
「私は覚悟を決められず、愛し子である事実を認めませんでした。だから“愛し子”ではないのです。」
「だが、前代では王と愛し子がいて、確かに儀式が行われていたはずだ。」
「そうですね。儀式は行っていました。私と、クレイが。」
「クレイ?」
「クレイドル・エル・リュミエール。直系の血を受け継ぐ最期の王です。」
「えっ!?」
「だが、そのような名前の王は……」
「クレイは……存在しない王。王家の罪を背負って死んでいった、私の“王”です。」




