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永遠に響く風の歌  作者: 長澤まき
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18. 暴風の歌



神殿が不意に、不気味なほど静まり返った。



「ギル、下がって。」


突然、水の巫子が静かに言った。


「ソフィー?」


戸惑う水の王を掴み、水の愛し子は小さく歌い水の壁を出現させた。


「水の巫子?」

「今度は何なんだ?」


怪訝そうな王たちとは対照的に、それぞれの愛し子たちはハッとして次々に歌で防壁を創り出した。


ざわつきが大きくなる。

声がたくさん聞こえる。



『終わりだ』




一瞬だった。




私を押さえつけていた兵士たちは空高く風の渦に巻き上げられた。


それと同時に、ディアス親子とヒンギス文官も渦の中に取り込まれた。


「キャーッ!!!」

「うわぁあああ!!」


それを見てその場にいるあらゆる者が恐慌に陥った。


「下がれ!!扉から出ろ!」

「盟主と巫子を!!」


父様が怒鳴っている。

アル兄様が盟主を庇うように前に出るが、盟主はこちらへ向かって来ようとする。


「フィオ!こっちへ来い!!」


手を伸ばす盟主を風が阻む。


巫子付きの神官たちが素早く巫子の側へ行くも、アリアナ様は動かなかった。


「アリアナ様!お早く!」


「無駄よ。誰もここから出られないわ。」


アリアナ様は静かに祭壇を見つめている。


「風の精霊がお怒りになっている。」



そう、怒っているのだ。

全て視ていたから。


十年経ってなお、変われない愚かな民が。

よりにもよって祭祀の日に。


私をーーー。




「リュー。」



私の口から久しく呼んでいなかった名が溢れる。


その音に導かれるように風が人型となる。



『ここまでだ。』



私を優しい風が包んだ。



神々しい姿。男か女か、子どもか大人かわからない。

でも、いつも私の側にいる。



風の精霊リュミエール。



光と闇の加護を与えられ、レジーナより世界を守る力を譲り受けし精霊。



突然現れた風の精霊に、皆は呆然としていた。


本来ならば、加護を受けた愛し子や王の前にしか姿を見せない精霊が、目の前にいるから当然だろう。


「なぜ姿が……」

「風の精霊は世界で最も強大な力を持っている。その気になれば姿を見せるくらい造作もないわ。」


防壁を維持しながら水の愛し子が呟く。


「マルティナ!」

「大丈夫よ。でも長くはもたない。相性悪いのよ風とは。」


王の呼びかけに応える火の愛し子の防壁が揺れる。こめかみに伝う汗が風で吹き飛ばされた。


「最悪な状況ですね。」

「力、強い。ぜんぶ、飛ばされる、かも。」


木の愛し子も、土の愛し子も、桁違いの風の力を体感し、防壁を維持するのに精一杯なのだろう。


アリアナ様の周囲は加護の力により風力はやや弱まっているようだけれど、点在する神官たちは一歩も動けず蹲っている。


見上げれば、風の渦の中でもがき苦しむディアス親子とヒンギス文官。



一つ、また一つと増える渦が周りの物を巻き上げていく。



覚悟していたはずなのに、頭の中はぐちゃぐちゃ。感情も入り乱れているから自分の気持ちすら自覚できない。



だけど。これだけは分かる。



渦に巻き込まれた祭壇の柱が盟主たちに向かったのを見た瞬間、自然と身体が動いていた。



「「「フィオっ!!」」」



盟主の前に躍り出て、迫り来る柱と対峙した。


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