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三年前と似て非なる世界 7

 ほどなく、アリスとティーネが母親のお見舞いをすませて戻ってきた。

 アリスが俺達の元に駈け寄ってくる。おそらく母親の容態が思わしくなかったのだろう。その表情は、どこか思い詰めているように見えた。

 だけど――

「あのね、私、ティーネちゃんを助けてあげたいんだけど、なにか良い方法はないかな?」

 アリスが開口一番に俺達の予想通りの答えを口にしたものだから、俺とユイは顔を見合わせてクスクスと笑ってしまった。


「え、え? どうして笑うの?」

「なんでもないわよ」

「アリスがそう言うだろうと思って、素材を持ち込んで、ポーションを売ってもらったらどうかってなって、二人で話してたんだ。お互いにとって得だからな」

 駆け出し冒険者のアリスやユイはもちろん、しばらくここで活動予定の俺にとってもポーションの供給を安定させられるのは利点になる。


「え、そっか。素材を持ち込めば、私達もポーションを安く買えるし、ティーネちゃんはポーションを作るだけで差額をゲットできるんだね。さすがユイとアルくんだね!」

 アリスがぴょんと跳ねた。喜んでもらえてなによりである。


「問題はティーネだけど……どうだ?」

「えっと……皆さんが持ち込んだ素材でポーションを作れば良いんですか?」

「ああ。出来たポーションは適正価格で買い取る。薬草の代金はそこから引いてくれればいいし、余ったポーションはよそに売ってくれてもいい。……どうかな?」

 俺が問い掛けると、ティーネは俺達を見回し、最後にもう一度俺を見る。


「私、中級のポーションとか、作ったことないですよ?」

「どうせこの辺りじゃ素材もないし、おいおいだな。でも、いつか作るときになったら、俺も多少なら教えてやれると思う」

「アルさん、中級ポーションの知識があるんですか?」

「昔の仲間がアルケミストだったんだ」

 そいつが終盤で離脱を余儀なくされたため、その後は俺が見よう見まねで製作していた。だから、俺もそれなりの知識を持ち合わせているのだ。


「そういうことなら、その……依頼の話と、指導の話、お願いしても……良いですか?」

「ああ。俺はしばらくこの街にいるつもりだから、そのあいだなら構わないよ」

 ――と、そんな感じで話は纏まった。



 その後、俺達はブラウンガルムを買い取ってもらうために冒険者ギルドへと向かった。大きな建物で、入り口付近のフロアには多くの冒険者達がたむろしている。

 俺はキョロキョロと周囲を見回し、クエストボードを探す。

 ……というか、なんか注目されてるな。


「おい、見ろよ。むちゃくちゃ可愛いプレイヤーが二人もいるぞ」

「あぁ……たしかに可愛いけど……アバターだぞ?」

「いや、WorldOverOnlineはスキャンした容姿をベースに、一定値までしか弄れない仕様だ。だから、あの二人はリアルも相当に美少女だと思う」

「マジか! 俺、声を掛けてみようかな?」

「よせよせ、見ろよ、男連れだぜ」

 周囲の声を聞いた感じ、目当てはアリスとユイらしい。エルフのアリスは言わずもがなで、ユイの方もかなりの美人だからな。注目されて当然か。


 それはともかく、俺はクエストボードを見つけて歩み寄った。張り出されているクエストは、討伐がほとんどで、採取の依頼が少々だ。

 終末の災禍(ドラゴン)の討伐みたいな依頼があることを心配したけど、ひとまずクエストボードに不穏な依頼は貼られていなかった。一安心だ。


「アルくん、アルくん。クエストボードになにかあるの?」

「いや、なにもないよ。それより、ブラウンガルムを換金してもらおう」

 俺はアリスとユイを伴って、受付カウンターへと移動した。



「いらっしゃいませ。本日はどのようなご用件でしょう?」

 受付では俺より少し年上――いや、いまの俺は十七歳だったな。ユイより少し年上くらい。二十代前半くらいのお姉さんが出迎えてくれた。


「素材の買い取りを頼む」

「かしこまりました。肝心の素材が見当たりませんけど、あなたもストレージ? にしまっているのですか?」

 受付嬢の口からストレージという単語が出てきてちょっと驚いた。


「ストレージの存在を、俺は今日初めて知ったんだけど、あんたは知ってるのか?」

「私も今日初めて知りました。けど、もう何人もストレージを持つ方がいらしたので」

「え、今日だけでか?」

「今日がオープン日だからね」

 ユイにはその理由が分かるようで、横からさも当然だと言いたげに答えた。

 なんだか、ユイやアリスのように常識のずれたプレイヤー一族が、この街に流れ込んできたみたいな言い様だけど……たぶん気のせいだろう。気のせいだといいな。


「それで、討伐した魔物を出していただけますか? 解体、してないんですよね?」

「あぁ……もしかして、混んでるのか?」

 冒険者は荷物をかさばるのを嫌うので、現地で解体することが多い。ゆえに、冒険者ギルドの職員で魔物を解体できる者はそれほど多くない。

 だけど、みんなストレージを使ったのだとしたら、解体を担当する職員は大忙しだろう。


「いえ、持ち込まれたのが一角ウサギくらいで、数も多くないので大丈夫です」

「……一角ウサギ? まあ、混んでないのなら安心だ。アリス、ユイ、頼む」

 俺が頼むとアリスとユイが、ブラウンガルムの死体をカウンターの上に置く。


「え、ブラウンガルム……ですか? それも、二体も?」

「まだあるわよ」

「私の方も」

 ユイとアリスが、ブラウンガルムの死体を積み上げていく。


「ちょ、ちょっと待ってください。それ以上はカウンターの上に置かないでください。っていうか、ブラウンガルムをこんなに狩るなんて何者なんですか!?」

「何者って……駆け出しの冒険者だけど?」

「冗談はやめてください! ブラウンガルムは中級冒険者が対象にするようなDランク指定の魔物ですよ! それをこんなにたくさん狩る駆け出しの冒険者がどこにいるんですか!」

「……は? Dランク?」

 なにそれどういうことと俺は首を傾げる。

 ちなみに、もとの世界と同じであれば、冒険者はFランクから。Dランクの魔物であれば、たしかに中級冒険者にとって手頃な敵だろう。

 だけど……


「ブラウンガルムだぞ? それより弱い敵ってなんだよ?」

 受付嬢に向かって問い詰める。

「この辺だと一角ウサギですね」

「……は? あんなの、放っておいても襲ってこないだろ?」

「たしかにそうですけど、クエスト対象には変わりありません。駆け出しの冒険者はみな、ノンアクの敵と戦って、攻撃を当てる練習をする……常識でしょ?」

「えぇぇ……」

 攻撃を当てる練習なんて、かかし相手にでもすれば良いじゃないか……


「アルくん、一角ウサギは放っておけば良いって……言ったよね?」

「あたし達のこと、無謀だとか、無茶だとか……言ったわよね?」

 ――はっ、左右からの視線が冷たい!?


「い、いや……あれは……そう。二人のためだったんだ」

「……私達のため?」

 アリス達が揃って首を傾げる。疑いは晴れていないようだが、ここまで来たら止まれない。


「そうだ。二人は俺がいなくても無茶をしそうだからな。俺がいるときに、あえて危険を冒させることで、俺がいなくても大丈夫なように経験を積ませたんだ」

「わぁ、そうだったんだ。アルくん、そこまで考えてくれてたんだね!」

「あ、あぁ、まあ……な」

「アルくんアルくん、心配してくれてありがとうね」

「い、いや、気にしなくていい」

 純真なアリスの視線に耐えかねて、俺は思わず目をそらした。

 

 

 タイトルが、タイトルが決まりませんorz

 ダメだったリスト。

Re:ネットの彼女は意外とあざとい

World Over Online

チュートリアルのNPCが実は伝説の英雄だった、みたいな物語

世界に忘れられた俺と、プレイヤー姉妹の備忘録

リアルでは深窓の令嬢と噂されているが、ネットの彼女は意外と激しい


候補

俺がNPCってなんのこと? ~プレイヤー姉妹と共に成り上がる~

NPCの無双録 ~異世界からログインしてくる連中が無防備すぎるので面倒見ることにしました~

ネトゲのNPCに転生した英雄は、失われた技術を駆使して成り上がる

VRMMO最強のNPC、プレイヤーを引き連れて成り上がる


 なんか、良いタイトルありませんかね……w


 ちなみに、ダメだったリストは当社比戦闘力200~300(最初4時間のPV)くらいなんです。

聖女に散々と罵られたが、夜の彼女は意外と可愛い 1600

姫騎士に散々と罵られたが、立場が逆転したので色々と教えることにした 700

異世界召喚を成功させた俺、平民しか呼べずに無能だと国外追放されるも、召喚した日本とかいう国の少女達がむちゃくちゃ有能だったので隣国でどこまでも成り上がる 900

 なんですよね。

 せめて5、600あればリメイク版を投稿しちゃうんですが、難しいです。

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