『終の画廊』
夢を改変してます。黒い影が血走った赤い目で私に「幸せだった記憶を寄越せ」と胸ぐらを掴んで迫ってきたので、「幸せな記憶をあげたからって、幸せにはなれないだろ」と言ったら激昂されて、目が覚めました。もう顔も思い出せないけれど、とても見覚えがあった気がする。まあいい、とても醒めた声出ました。あれ、影しか共通点ない...。
歪に塗りつぶした黒の画廊で、たくさんの影が壁にかかった絵を見ている。その絵はどれも不鮮明で私には見えないけれど、その影はとても大切な物を見つけたかのように、動かない。どれもこれも私には苛立たしい。だから、私はナイフを突き立てる。ガリガリと、ビリビリと一つずつ横に、縦に、斜めに裂いていく。気がついたら、影は消えて、私だけが残った。広く狭い、不思議な場所で、影達は何かを探すかのように揺らめき、彷徨うのだ。そしていつしか絵の前に止まる。そして動かなくなる。懐かしむように、慈しむように、影達はそれを見る。私には何もないのに、彼らにはあるのだ。立ち尽くすほどの大切な何かが。なぜ私になくて、彼らにはあるのか。わからない。わからないから、私は今日も彼らの大切なものを壊す。消えては現れる額縁に、不鮮明な絵。いつか私にも見つかるだろうか、私の大切にしていた一ページが。この胸を満たしてくれる光景が。
残念ながら、そんな日はこない。




