アンドロイドは名前を貰う②
ようやく名前が決まりました!
何にしよう?ペットを飼った事なんて無いから名付け親になった経験なんて無いし、勿論、ペット以外で名付け親になる様なシチュエーションになったことも無いし、簡単には名前なんて決められない。
しかし(唯一の)友人には、ゲームキャラの名前がセンス無いって言われてそれ以来友人と決めた名前を使い続けている様な人間に名前を付けられる訳無いじゃないか!
それに、最近はキラキラネーム?とかいう変なのも在るみたいだが、どうすれば良いんだ?
まあ、焦ったところで良い名前が思い付く訳も無いし、どうすれば良いんだろうか?
「マスター、少し来てくださいー」
少し、書き忘れていた。実は彼女と出会ったあの日から一週間が過ぎていた。本当はその時の事を書きたいのだが、充電をすると言ってポケットからケーブルを出したのには驚いた。その後、『充電を始めます』と言って、コンセントにつないだ瞬間ブレーカーが落ちたり、いろいろあったのだ。もう、本当に沢山。本当にありがとうございます。
まあ、結局何とかし、晴れて事件終了、問題解決!となるはずが、『情報が手に入っていないので、しばらく此処に居ます』と言ってきた。
うん。おかしいよな?え?俺おかしく無いよな?え?何で居ることが確定してるの?え?何で家主に確認しないの?
そんな疑問を抱きながらもそのまま一週間過ぎてるのって、俺って甘いのかな?
閑話休題、変わったこともあった。それがアンドロイドからの俺の呼び方なのだが、「お前」から「マスター」にいつの間にか変わっていた。
……、それに気が付かなかった俺ってどんだけ鈍感なんだ?まあ、それは置いといて、相手からは「マスター」と呼ばれているのにこちらからの呼び方が決まっていないという状態に危機感を覚え、彼女の名前を考えていたのだ。
まあ、考えつかないから一週間名前未定のままなのだ。
「はあ、どうすりゃ良いんだろ?」
「何がですか?マスター」
「いや、お前の名前だよ。何が良いんだ?」
「名前?ああ、私と出会った時に話してたやつか。忘れてた」
「忘れてたって……」
彼女は心底どうでもよさそうにこう続けた
「いや、製造当時から私に名前は無く、ただのα型の二十八番機だったから『α-28』と呼ばれ続けていたのですよ?今更……」
その時、俺に何故か名案が浮かび口に出てしまった
「アル」
それを聞いたアンドロイドは何のことか分からずに、飛んだ間抜け面を晒していた。ちょっと笑える。
まあ、そんな事は何処かに投げ捨てて、説明してあげようか。
「あ、あの、お前の名前。ダメ、かな?」
「いや、何故」
「ほら!お前って『α-28』って言うんだろ?その「アルファ」から「アル」おかしいかな?」
「いえ、何故今急に決めたのかな?と思ったので」
……、そんな不思議そうに聞かれても急に思いついたから分からないんだよね。
だからこっちを「適当に決めやがって」みたいな眼で見ないで!?
「もっとかっこいい名前があったのでは?」
「例えば?」
少し悩んでから答えてきた。
「ヘルヴェティアとかですかね?」
「何?それ」
「良いじゃないですか?語感が!」
「ノーコメントで」
「なんで!?」
まあ、おふざけは置いておこう。……、だからさ、そんな眼で見ないでくれ。泣きそうにウルウルした瞳でこっちを見るな!?精神に回避不能なダメージを受けるからさ!?
「そんな事より、アル、記憶は戻ったのか?」
そう、出会った時からアルは記憶を失っていた。正確には、記憶領域に深刻なエラーが発生し、それを修復したり、アンドロイド専用ネットワークを形成していたナノマシンさえ、開発される前の時代で直す事が出来ず、記憶が無いのだ。そのため、俺の家に居候を続けているのだ。
無駄飯ぐらい、という訳では無いが、何かをする訳でも無くただ居るだけだ。まあ、アンドロイドだけあって頭は良いので勉強を教えてもらっているので、本当に何もしていないという訳では無い。が、役に立ったと認めるのは癪だ。
まあ、頭を抱えうんうん唸っている様子を見るにこの奇妙な同居人は居座り、奇妙な日常が続いていくのだろう。
「はぁ、まだ無理なのね?」
「そもそも、データを直すにはデータベースにアクセスして、アップデートされるか、マザーによって強制アップデートさせられるかしないと直らないのに、そのどちらとも連絡が取れないので、無理ですね」
知らない単語があるな、聞いてみるか。
「なあ、マザーってなんだ?」
「マザーも知らないのですか!?」
何故だかわからんが大袈裟に驚かれてしまった。そんな変なことを聞いたのだろうか?
次は「マザー」など、未来のアンドロイドについて話す予定です。
名前は、まあ、お察しですが……