アンドロイドは考える。充電するために必要な事を
「ヒトの名前ということなら違いますが、個体名ということなら会っています」
どういう事だ?疑問に思ったので、聞いてみることにした。
「じゃあ、何なの?」
「『α-28』これは、『α』という機体の28番機という意味なので、名前という意味ではありません。なので、名前ではないと、申し上げたのです。むしろ、個体名や機体名という表現の方が適切だと思われます」
「そうか……」
ふと、こんな疑問が沸き上がった
「じゃあ、名前は?」
α-28は困ったような顔をし、答えない。いや、答えられなさそうだった。
「答えたくない理由でも有るの?」
少し悩んだ後に答えてくれる。
「いえ、そういう訳では」
どういう事だろう?もしかして、記憶喪失とかで、名前が分からないとかかな?
「もしかして、記憶喪失?」
「確かに、今現在、記憶データに損傷が確認できているため、ある意味では記憶喪失かもしれません。しかし、名前という物は、元々持っていません」
「え??」
データってどういう事なんだろう?そう思っていると彼女は少し悲しそうにこう答えた
「私は『α-28』それ以外の何者でもありません」
「それは悲しくないのか?」
あまりにも悲しそうにしていたから聞いてしまった。
「悲しい?悲しい事なのでしょうか?そんな事、元々考えたこと有りませので」
だとしたら何故こんなにも悲しそうな顔をしているのだろう?
「そもそも私達には感情なんて有りません。ただ、感情の様な物をプログラムされているだけです」
え?プログラム?この目の前に立っている彼女はプログラムによって動く何かなのか?滑らかに動き、まるで人間と話しているように普通に話せる彼女がプログラムされた物なのか?そう思い訪ねる。
「君は人間じゃないのか?}
答えを彼女は何でもない事の様に言った
「はい。私は人間ではありません。アンドロイドと呼ばれる存在です」
道理で人間ではないような事を言っていたわけだ。
……、いや、おかしいよな。こんな人間の様なロボットは現代の化学じゃ作れないはずだ
「え??君、ホントに人間じゃなかったの!?」
「ですから、アンドロイドです!!」
ああ。だからか……
だからなのか………
「なるほど。『目から光が消える』という表現はこういう事なのか。貴重なデータだ」
……、なんか言ってるけど無視だ!
というか、人間とマニュアル以外話せない俺が、会話できたのはアンドロイドだったからなのか。
なるほどね。やはり俺は人と話せないのか……
「会話なんて、簡単にできますよね?」
できないんです。本当にすいませんでした!
「謝るより先に、人と話しなさい」
それが出来たら、苦労しないんですけどねorz
「なら、私が話し相手になりましょうか?エネルギー切れになりそうなんで早く充電したいので、コンセントなるものをお貸しいただきたい。それと、今日一日雨風を凌げる場所も貸していただけると、とても有り難いのだが……、仕返……、お返しは話し相手になり、ヒトと話せるようにすること。どうですか?」
いや、怪しいだろ!
「本当に出来るんですか?」
……、べ、別に、やましい事が有る訳じゃないよ!?友達いない歴イコール年齢の俺だからって、友達欲しさにこんな怪しい人を家に招くつもりは無いよ?それに、この子が、(胸は、まあ、その……、あれなのだが)顔は整っていて、可愛い系の顔立ちと言うよりかはスカートではなくズボンを穿いていて雰囲気は男装の麗人の様で、凄く、良いのだ。とか考えてませんから!考えてないったら考えてない!!本当は、その、あれだよ、、、あれ!えーっと、そう!こんな子を放置出来る筈無いじゃないか!外は危ないから守るためにだよ!
「理論武装は出来ましたか?まあ、出来てなくても関係ありません。行きましょう。家はどこですか?」
「まだ、了承してないような……」
「家はどこですか?」
押しが強いな……、まあ、どうせ許可するつもりだし良いか
「こっちです。ついてきてください。近いので歩きですが」
そう言って歩き出そうとしたらふと、手に抵抗が。あれ?おかしいな??この感じ、まるで手をつないでるような……、そう思って振り返ると、案の定、手をつないできていたアンドロイドが居た。但し、心底いやそうな顔だが……、なぜ!?
「あ、あの、どういうつもりですか?」
「はぐれたら困ります。主に充電の面で。なので不本意ながら手をつなぐことにしました。どうやら、男性は美少女に手を握られると喜ぶらしいので」
あ、分かった。此奴、変な奴だ!少なくとも、いやそうな顔だったら何の意味も無い様な気がするのだが
……、まあ、少しは嬉しかった、なんて絶対に思いたくない!!
一方、アンドロイドは「計画通り」、と黒い笑みを浮かべていたのだが、知らない方が良いだろう
……、見てないったら見てないんだ!
…………だからそろそろ元の顔に戻ってくれませんかね?
「さて、行きましょう!」
そう言って歩き出す彼女の背中には、腰まで伸びた白い髪が左右に揺れていた。
だが、一つ言いたい。
「家の方向、逆です」






