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第十一話 事故というのは予想もしていないところから来やすい。

峯崎薫が現れてから警戒をし始めた出雲と亜紗妃。

だが警戒をしている間に不慮の事故が起ってしまう。

 

「というわけでね!私と亜紗妃ちゃんでお兄を護衛しようって話になったわけなの!」


 一生懸命に力説をする出雲。

 昨日の事があってからというもの、かなりピリピリしているのが気になる。

 学校に行くときもそうだったが、トイレの外で見張られているのにはまいった

 亜紗妃ちゃんも一緒に入って来て、窓の外を警戒している時に顔を赤くしていたから恥ずかしかったのだろうが、こっちの方が断然恥ずかしかったぞ。

 他の男子からも俺へ抗議の声が上がり始めたりで、散々だったからな。


「そいつは頼もしい…なんて言うわけがないだろ!学校でつけ回すのだけはやめてくれ!特に亜紗妃ちゃんの件に関しては、頼むから勘弁してくれ」

「亜紗妃ちゃんが男子トイレに入っても問題なくない?


 そういえば性別が男だったんだ…毎回見た目のせいで忘れてしまう。

 すぐに忘れるのをなんとかしないとダメだな…出雲の事を言えなくなってきてる。

 別に亜紗妃ちゃんが男子トイレに入ってきたとしても、問題は一切ない…はずだ。

 普段から女の子の恰好をしているうから、俺以外の男共も同様に女の子って認識がある。

 故に男子トイレに入ってこられると、女子が入って来たと勘違いをしてしまう。

 特に他のクラスとかではまだ知らない者も居ると聞いた事があるから、それもあるのだろう。


「まぁ、普段は女子トイレを使ってるんだけどね」

「だと思ってたよ」

「私…どうしても、男子トイレを使うのは苦手なんです。学校の方では、特別に使わせて貰える事になってて」


 もうそこら辺に関しては別に気にならなくなってきた。


「にしてもさぁ、あのオカマは結構厄介だよね。お兄の知り合いっていうのは分ったけど、まさかお兄に惚れる人間が現れるなんて、出雲ちゃんびっくりボンバーズだよ」

「びっくりボンバーズって懐かしいな。昔よく見てたアニメだったよな?」

「あ、それ私も知ってます。三人の爆弾兄弟が主人公のアニメですよね?私も小さい頃によく見てました」


 かなり懐かしいな…びっくりボンバーズ。

 三人の爆弾兄弟を主人公にした作品だったんだよな。

 元は海外の番組に影響を受けて制作された子ども向けアニメだったらしいが、内容がブラックジョーク過ぎて放送を禁止されたんだよな。

 小学校の方では凄く流行っていたりして、授業中でもふざけて、さっき出雲が言ったようなことを発言する者が大量発生していた。

 たちまち社会現象とまではいかなかったが、PTAの方ではかなり問題視されていたらしい。

 結構なクレームが寄せられて、子ども達は打ち切りになったのを相当悲しんでいた。

 これには俺と出雲も悲しんでいたが…竜子さんと一緒に出雲が大荒れしたんだよな。


「毎回面白かったよね。悪戯がバレると最後は爆発しちゃって」

「だけどあれって結構残酷だと思う。怒られるのは分るけど、自分で怒って爆発しちゃうっていうの、結構悲しいなーって今でも思う」


 あのアニメは最後に兄弟三人揃って自爆する終わり方をする。

 特に親達から批判を受けていたのは、逆ギレして自爆してしまうところだ。

 あのアニメが切っ掛けで、親に怒られた子ども達が逆ギレを起こして、頬を膨らませて自爆しようとすることも増えた。

 今の時代だと仕方のないことなのだろう。


「ちょっと待って!なんか話の路線ずれてない?ズレてるよね!?どこでズレたの!?」

「えっとね…多分だけど、出雲ちゃんがボンバーズって言ったところからかな」


 自分でずらしておいて何故気づかない?


「まぁいいや。まずお兄をどうやって守るかって話なんだけど、本人からは何か提案とかある?無いなら、学校中にお兄が亜紗妃ちゃんを襲ったって話でもばらまけば」

「そんなことしてみろ。俺の金魚たちが生成した青水を、お前の部屋からタンスの中まで霧吹きを使って青臭くしてやる」


 ギャーギャー騒ぐ出雲を無視して、店の手伝いを始めようとすると、何故か腰に頭突きを入れてくる。

 軽いのならまだ良いが、思いっきりやって来られるとかなりダメージが来る。

 なんせ出雲は小さい頃から石頭だったから、まるで鈍器で殴られたかのような衝撃が襲ってくる。

 てか…腰をやったかもしれない。


「お、お兄さん!?大丈夫ですか!?」

「こ…腰が…まだ十代なのに、妹に腰を殺された。出雲…あれほど言っただろ…お前の頭突きは地球割るって」

「ごめん!本気で行くつもりなかったの!ほんのちょっとおふざけ程度でじゃれる感じで行くつもりだったのに!」


 流石に骨折とかまではいかないだろうが、絶対に痣が出来てるよ。

 出雲の頭突きを受けてきてるから言える…あれは本気のレベルではないが、本気数歩手前だ。

 ちょっと待って…マジでヤバい、痛くて立っているのすら辛い。

 石頭である出雲の頭突きの威力は、軽い一発でも竜子さんの蹴り三発分相当の威力に匹敵する。

 それをもろに腰に受けたとしたら…日頃の水運びで足腰が強くなっていても軽傷では済まないかもしれない。


「どうしよ…マジでヤバいやつじゃん!救急車!?私、もしかして刑務所!?」

「それだけはないから安心しろ。少しの間、リビングで湿布でも貼って休ませてくれ」

「私、お兄さんをリビングまで運んで来る。肩かしますね、辛かったら言ってください」


 亜紗妃ちゃんに肩を貸して貰いながら、リビングのソファに横になった瞬間だった。

 激しい音と同時に扉が開き、痛みが残る腰に激痛が襲い掛かってきた。


「テメェ、何可愛い妹泣かしてるんだ?あ?しばき倒すぞ、このヤクザ」


 い…痛すぎて声すら出せない。

 ピンポイントで頭突きを受けた場所に…踵落としを入れられたから、衝撃が来た瞬間に変な音まで鳴った気がする。

 これは死んだ…多分死んだよ腰。

 ただでさえ出雲からの殺人的な頭突きを受けてからの、破壊神(竜子さん)の重い一撃だから効果が倍増だ。

 そもそも出雲が泣いてるのは俺が悪いんじゃなくて、完全に自業自得だろ。


「違うんです!出雲ちゃんが泣いてるのは」

「どんな理由があろうと、妹泣かせる男はクソ野郎だ。これはその制裁だバカ」


 り…理不尽すぎる。


「竜子姉!全部私が悪いんだから、お兄を苛めないでよ!」

「いや…だってイズモ泣いてたし。お姉ちゃんはコイツが」


 コイツと言いながら、腰を叩くのはやめてください…本当に一人にしてください。

 唯一、亜紗妃ちゃんが優しく腰をさすってくれている事に安らぎを感じる。

 本当は湿布とかを貼って欲しいが、家に湿布の在庫があったっけか?


「お兄の腰に頭突きをしたのが悪かったの!だからお姉は店番してて!もうお兄に突っかかるのはやめてよ馬鹿ァ!」

「ちょ、イズモ!?待って!アタシはイズモが心配で」


 リビングから一気に竜子さんを追い出した出雲だったが、その勢いで人の腰に伏せ始めた。

 だから腰が痛いって言ってるんだが、わざとにやってるんじゃないだろうな。

 大分腰の感覚がなくなってきた気がしてきてるんだが、一体どんな状態になってるのか心配だ。

 そう考え始めた頃に、まるで俺の考えを察知したかのように、出雲が服を捲り始めた。

 腰の辺りに視線を感じているが、二人して黙り込んでいて状況が分らない。

 酷い状態なのか、またはそこまで大したことがないのか。


「私…ちょっと湿布探してくる。亜紗妃ちゃんは冷蔵庫から保冷剤とか持ってきて」

「う、うん」


 静かだ…静か過ぎるくらいに静かだ。

 腰にタオルで包んだ保冷剤をあてて冷やしているが、湿布を探しに行ったっきり、出雲が帰ってくる気配がない。

 どこまで探しに行っているんだ。


「あー、疲れた。まさか家の湿布が全滅してるなんて思わなかったよ。おかげで自転車飛ばしながら急いで買って来たんだからね」

「そいつはありがたい。んで俺の腰はどういった状態か説明をしてもらっても良いか?」

「私が説明します…えっとですね。痣が二つほどあってですね…一つが多分出雲ちゃんので、クッキー位の大きさで、ちょっと悪くなったさくらんぼの色をしてます」


 例えがとても可愛らしい。

 クッキー位の大きさで、ちょっと悪くなったさくらんぼくらいの色か…結構エグい色してるぞ。

 ちょっと悪くなったさくらんぼって、完全に腐ったさくらんぼの事だよな!?

 俺の腰に赤黒い痣が出来てるって事か!?どんだけ威力上がってんだよ出雲!?


「問題が次なんです。これはお姉さんがやったと思うんですけど…ザクロとイチジクの中間みたいな色に、なってます」

「しかも…私の頭突き後より断然大きい。ほとんど竜子姉にやられたようなもんじゃん!」

「きっかけはお前の頭突きだ。次からはもう少し考えて行動しような」


 ほんの少しだけ反省をしているのは伝わってきたが、曲芸をする猿みたいに人の頭に手を乗せるのはなんだ?

 本人は至って真面目にしているつもりなのだろうが、やられている側からしたら馬鹿にされているようにしか思えない行為だ。

 家族間ならまだ伝わるだろうが、他人や友人にやったら煽られてると勘違いされる。

 頼むから外では真面目でいてくれ。


「じゃあ今日は私と亜紗妃ちゃんで頑張るから、お兄はリビングで気楽にサボってて。あと例の変態が来たら、絶対に防衛するから任せて」

「私は大して何もできませんが、全力で頑張ります!」


 そう言い残して、二人はリビングを後にしていった。

 しばらくは安静にしているしかないか。

 出雲からの頭突きだけでも結構な痛みだったのに、更に竜子さんからの踵落としという追撃が来たから、余計に酷い事になってしまった。

 冷やしてから湿布も貼って貰っているが、下手するとかなりの重症かもしれない。

 起き上がろうとすると、痛すぎて力が入らない。


「やべぇ…明日、学校に行けるか?無理だったら連絡しないとだしな」


 どうしても痛みが引かなかったら、痛み止めでも飲んでみるか。

 ここ最近は竜子さんからの暴力が大分落ち着いたと思ってたんだが、どこで引き金になるか分ったもんじゃない。

 心配事が沢山増えていくが…気づけばスマホに知らないメッセージが大量に送られてきてる。

 送り主は分るんだが、どこから連絡先が漏れた?

 昨日の夜に、小学校が同じだった友人達にメールをしてみたが、殆ど役に立つ情報は得られなかった。

 ただ一つだけ分ったのは、学校に行っていないって噂だ。

 女の子の恰好をしていたのは、小さい頃からそういう傾向があったらしい。

 現在は連絡手段を持っているのが誰か分らないらしく、誰かが俺の連絡先を漏らしたのか分らない状態だ。


「つか、絵文字入れすぎだろこれ。内容が全然頭に入ってこない…訳分んねぇよ」


 何でこんなにハートばっかり付いてるの!?ハートで始まりハートで終わってるんだけど!?

 本当に意味が分らないというか、よく確認してみると写真まで送られてきてる。

 写真事態は水槽の物ばかりだが、色々な大きさの水槽が写されている。

 水槽内には大量のエビが泳ぎ回っているから、多分ブリーダーとして活動しているのだろう。

 あの時もソイルと高い種類のエビを購入していったからな。

 気になるのは、誰が写真を撮影しているかだ。

 水槽とエビと一緒に写り込んでいるのは分るが、撮影をいしているのはご両親のどちらかなのだろうか?


「お兄!金魚の桜錦サクラニシキって頭大きくあるんだっけ!?なるんだったら方法って何!?」

「普通に肉瘤は大きく出来るぞ!大きくするなら、蘭鋳用の栄養価が高い餌と冷凍の赤虫を与えてやれば大丈夫だ!あとあまり水量を多くせずに、高さのない水槽で飼う方が大きくしやすい!」

「お兄さん!金魚の事で聞きたいことがあるんです!お客さんにピンポンパールって金魚を飼いたいと言われたんですが、家に別金魚が居るらしいんす!他の金魚と泳がせて大丈夫ですか?」


 今日は妙に金魚に関するお客が来ているみたいだな。

 よりにもよって、俺が再起不能なタイミングで集まってくるんだ。

 琉金とかデメキンとかなら出雲でも対応は得きるだろうが、蘭鋳とか土佐錦とかになってくると対応はキツいんだろう。

 亜紗妃ちゃんが聞いて来たピンポンパールも、飼育が少し難しい種類な上で、出来るなら単独飼育が好ましい。


「ピンポンは単独飼育で、あとひっくり返ったままになる転覆病って病気に掛りやすい事を伝えてくれ。他には鱗も剥がれ安いから、網で捕獲するよりも出来るだけビニール袋とか使う事をおすすめして上げて欲しい」

「わっ、わかりました!多分大丈夫だと思います!また分らない事があったら、また聞きに来ます!」


 あの様子だと、店の方はかなり忙しいみたいだな。

 今日は平日のはずなんだが…別にセールとかをしているわけでもない。

 金魚ブームでも来てるのか?そういう話は一切聞いてないんだがな。

 たまたま金魚を飼いに来た人が重なっただけかもしれないしな。

 それにしても…さっきからスマホが馬鹿みたいに五月蠅い。

 連続でメッセージが送られてきてる。

 もういっその事、電源でも落として寝るか…少し休憩したい。



 スマホの電源えを落として、リビングのソファで眠っていたことまでは覚えているが、何故かまた修羅場が発生している。

 威嚇する出雲とそれを宥める亜紗妃ちゃん…向かいには峯崎薫が座っていた。

 しかも余裕そうにお茶を飲みながら、正座までしてる。

 俺はこの光景を見た後、気づかれない様にそっと顔を逆側に向けて寝ることにした。

 だが一度目が覚めてしまったおかげで、全然眠気が無くなってしまった。


「だから、お兄には亜紗妃ちゃんがいるから。アンタには入る余地は無いって言ってるの」


 勝手に決めてるんじゃないよ、人が寝てると思い込んで好き勝手言ってるんじゃないだろうな?

 もしそうだったら、後でお仕置きしてやるからな。


「それは寝ている本人がそう思っているから?ボクはしばらく彼を見続けてきたけど、そういう感じはなかったよ?」

「うわぁ…見続けてきたとか、もうストーカーじゃん。マジでどん引きなんですけど、てか警察に連絡していい?いいよね?マジでストーカー案件なんですけど?」

「待って出雲ちゃん。私は確かに、お兄さんとお付き合いはまだしてないです…してないですが、まだチャンスを捨てきったわけじゃありません!それにお兄さんは、私の好きな同人作家の先生のアシスタントをしてる凄い人なんです!」


 龍子姉さんは関係ないんじゃないかな?

 突然同人作家のアシスタントだって暴露されても、相手は相手で困るだけだと思うんだが。

 てか出雲も警察沙汰はあまりやめてほしい…俺が疑われる可能性の方が高い。

 いつも警察からはヤクザ扱いされるから、あまり信用ができない。


「引きこもりのお姉さんだよね?ボクは知ってるよ。小学生の時からずっと、もう何年も家から出てないんでしょ?ボクは何だって知ってる。なんたって…愛する獅子君のことだから!」


 ヤバい奴だ…ガチでヤバい奴だ。

 こんなにヤバい奴だなんて思っても居なかったが…怖くて震えてきた。

 振り向きたくない。

 もしここで振り返ったりなんかしたら、何をされるか分ったもんじゃない。

 家の事情を把握し過ぎじゃありませんか?

 もう殆どの事とかを知り尽くされてて恐怖しかない、マジで警察呼んだ方がいいのかもしれない。

 だが警察を呼んだから俺も連れて行かれて、近所からも変な噂とか流れたりするんだろうか?

 もしそうなったら…将来的に出雲や竜子さんに悪影響が出るんじゃないか?

 下手をすれば俺が犯罪者扱いされるだろうし…辛い世の中だ。

 そんな事を考えている間にも、背後では変な修羅場が巻き起こっているんだもんな、


「残念だけどね、お兄は金髪系の外国人が好きなの!だから亜紗妃ちゃんがドストライクなわけ!分った!?」

「だけど獅子君は胸が大きい人が好きなんだよね?だったら胸がない時点で負け確定だよね?」

「でも…そっちも性別は同じなので…その部分は責められないと思います」


 亜紗妃ちゃんの言ってる事は正論だけども、出雲も勝手に人の好みとかを暴露するのはやめてくれないか。

 あと峯崎も俺の好みを普通に把握されてて余計に怖いんだけど…知ってるならある意味自虐してるようにも聞こえてくるんだが。


「亜紗妃ちゃんはこれが可愛いんだから良いの!綺麗なサラサラの髪に、愛嬌があるこの笑顔が最高なんだから!そっちは何?黒髪に毛先を赤くして、V系バンドでも組むんですかー?」

「これはボクのエビ達への合いを意味してこのカラーにしてるだけ!黒ビーと赤ビーの二種類をイメージしてるのに…ボクのエビ愛を馬鹿にするんだったら、獅子君の妹でも容赦しないよ」


 もうそろそろ、寝たふりをしているよりも話に加わるべきなのだろう。


「妹に手出したら、ただじゃおかないぞ?もちろん亜紗妃ちゃんにもだ」


 突然寝ていたはずの人間から声が出て驚いたのか、まるで漫画ように三人が飛び上がるというリアクションをとられた。

 逆にそんなリアクションをとられたこっちも驚きだが、あっちも急に話掛けられたからびっくりしたんだろう。

 三人揃って驚きの顔をしているが、直ぐに少尉に戻ったのか慌て始めた。


「い、いつから話聞いてたの!?」

「近くで喧嘩なんてされてたら、誰だって起きるに決まってるだろ。おかげですっかりと目が覚めちまったよ」


 起き上がってみると、やはり腰の辺りがまだ痛む。

 痛いから…横になったままで話をしよう。


「色々と暴露してくれてるが峯崎、誰から俺の連絡先を聞き出した?」

「うーん、それは内緒かな。でも、ボクの条件をのんでくれたら、考えて上げても良いよ?」

「ボクって言ったり私って言ったり、一人称を一つにしてよ!頭がおかしくなる!」


 混乱しすぎてリビングを転げ回る出雲。

 その好きを突いて峯崎が急接近をしてきたが、背後から亜紗妃ちゃんが引っ張りながら引き離してくれた。

 だが反動で二人同時に倒れ込んだと思えば、起き上がって子ども同士が喧嘩をするように手をブンブンと振り回し始めた。

 さっきから漫画のような行動を取られたりしているが、本人達には自覚があるのだろうか?

 とりあえずは怪我をされる前に二人を止めなくてはいけない。

 痛む腰にムチを打ちながら、なんとか二人の間に入り、座り込んで止めたまでは良かった。

 ここで収まれば少しはマシになると思ったのに、先ほどから混乱しながら転がるという幼稚園児の様な行動をしていた出雲が、俺の腰に再び頭突きをしてきた。


「お、お兄さん!?また腰やっちゃったんですか!?」

「獅子君!?しっかりしてよ獅子君!ボクを置いていかないでよ!これから沢山のレッドビーという子ども達を一緒に増やそうよ!獅子君!!」


 ゆ…揺らすな…余計に悪化してる気がする。

 一日に三回も腰に攻撃を受けるなんて、全く予想をしていなかった。

 むしろ予想なんて出来るわけがない!


「だからなんでお兄の腰に私の頭がぶつかるの!?ブラックホール!?」

「逆に聞くが…お前の頭は俺の腰をロックオンでもしてるのか?ピンポイントで当てすぎだ」

「獅子君…ボクは、獅子君が半身不全になっても、ずっと面倒は見るから!」

「お兄さんを揺らさないでください!今日だけで三回目なんです!これ以上はお兄さんにとってはかなりの負担になってるんです!」


 また二人で小さな争いが始まりつつも、頭突きをした本人である出雲はついに開き直りからのギャグ切れ。

 三人に囲まれながら、俺は腰を押さえながらダウンしているしかなかった。

 これ…マジで明日学校休まないとダメかもしれない。

出雲の頭突きにより腰を痛めてしまった獅子雄。

そんな獅子雄を休ませてくれるはずも無く、次から次へと問題が発生していく。


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