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2. ご一行様、鑑定されました

ようやく3回目の投稿です。


6/16修正いたしました。

 ここレミアンヴェル王国は、大陸中央部のやや東側にある国で、世界的には中規模の国だ。

 そして、建国から百三十年程と若い国である。

 首都である王都ネクサリアは国の中央部よりも、やや西よりにある。


 王都の西側には魔獣も住む深い森があり、北側には万年雪を被った大きなフアレイア山かあるとのことだが、今のこの場からは城壁に遮られてよく見えないのが残念だ。


 魔獣の森がある為、他の国はどこもこの地を統治しようとしなかったのだが、初代国王と理想を共にした仲間がここに王都を築いた

 魔獣から取れる魔石や豊かな森林が資金なるという考えもあったが、此処に四百年程前に滅びた都市があり、その遺跡を基礎として利用出来る利点あったからだった。


 その古代都市の中心部に王城があり、召喚に使われた施設は、その遺跡から発掘された物を調べ上げ使用された。

 滅びた文明の遺産なんてよく使う気になったかと思うが、それだけ切羽詰まってのことだろう。

 それなのに、召喚されたのがこんな者でスミマセン……と、和人は心で手を合わせる。


 地下にある召喚の間から地上に出た和人たちは、太陽が西に傾きつつある青空の中を暫く歩いて王城に入り、大きな顔段を二階へと上がった。

 おそらくパーティーでも行う為のものだろう豪華な部屋に移され、そこでいつもの小さなグループに分かれた。


 欠けたクラスメイトがいないか等、現状の確認を委員長がしたりしている中、安座間たち肉体派は自分たちの【称号】を自慢しあった。


 フカフカの絨毯。天井には豪華なシャンデリアが輝いている。

 メイドに傅かれながらグラスに注がれたドリンク(アルコールではない、なにかのフルーツジュース?)を飲んでいれば、すでに英雄にでもなった気分なんだろう。


「【豪腕の勇者】の俺様がいれば、百人力だな!」

 ゲームみたいな、ステータスウインドウの様な物はない。

 だから、今のところ自分たちで判るのは、あの白い部屋で自分で選びとった【称号】だけだからそう思うのは仕方ない。


 和人は、これから暴露されるであろうことを考えて憂鬱になり、恐らくいちばん荒れるであろう安座間を見た。

 はたして、その時どんな態度にでるのだろうか? いくら考えたところで、さして付き合いも無い男の考えははからない。


「おい優等生! なに見てんだよ!」

 そんな和人の視線に気づいた安座間が声を上げる。

「別に?」と答えたが、安座間達は今の境遇の方が興味があるのか、それ以上は絡んではこなかった。


 そして数十分後。

 部屋を移動させるよりも早いと、鑑定用の直系20センチ程の水晶球をその部屋に持ち込んでの説明会となった。


 入国審査にも使われるこの鑑定球は、個人情報を無闇に晒さないようにとの配慮から、名前等の基本情報と【称号】くらいしか見ることが出来ない。

 その他、賞罰があればそれも表示されるそうだ。


 遺跡から発掘された物で、便利だから使ってはいるが、実のところシステムとしては使っている本人達にも謎らしい。


 説明は三行でまとめると、

 昔から魔人族が、人族の国にちょっかいを出してきて戦ってました。

 最近現れた魔人族の王=魔王が強く、戦姫とも呼ばれた王妃まで殺されました。

 反対意見も多かったのですが、現状の王国は戦力が乏しく、起死回生を狙って勇者召喚をしてみました。

 である。


 そしてその後、各自の鑑定が始まったのだが……。


「どういうことだよ!」

 アチコチからそんな声がする。

 フェリーシャからは『解りやすいような工夫』をしているとだけ聞いてはいたが、それは一体どういうものなのだろうか?

 周りの声から察するに、分かりやすく碌でもないもののような気がした。

 気になった和人は、女子生徒が右手をかざす自分の隣の鑑定球を覗き見た。


【坂本美弥】

【種族:人族】

【年齢:16歳】

【性別:女】

【称号:小さき聖女】


 見たことない文字だが普通に読むことが出来た。

 思い返せば全員ここまで彼らの言葉を理解していたのだと、今更気がついた。

 これが異世界補正というものか。

 しかし、問題は【称号】の隣にある文字。


【達成レベル:0】


 フェリーシャが言ってたのはコレだ。

 努力しなければ何者にもなれない。

 美弥の顔が驚きに歪む。小動物みたいなカワイイ顔が台無しだ。


 本来は【称号】にはないはずの【到達レベル】の文字に、召喚した側も驚いている。


 しかもそのレベルは、軒並み【0】だ。

 美弥を鑑定していた文官が、何度目かの溜め息をついた。


 でも、驚くのはそれだけじゃない。

 諦めの視線で和人の改鑑定球を見た文官が声をあげる。


「はあ?」

「おい、どうした!」

 監督官らしき男が寄ってきた。

「そ、それが……」と指差す先。そこに書かれた称号は、


「【称号】が、ひ、【人】だって?」


 因みに【到達レベル:50】。

 そもそも人間なのだから【人】の【到達レベル】は高い。

 和人はそこまでは想像できていた。


 だが実はそれに加え、一応この世界では女神と呼ばれるフェリーシャと言葉を交わし、その知識に触れたとのことで、人としての『格』が結構上がっていることには気づいていなかった。


 監督官の声を聞いた部屋じゅうの視線が和人に集まる。

 普段は澄ました顔ばかりの委員長の、「何で?」って感じの表情に、和人は思わず笑った。

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