力強き少女
入学式・・・それは、まったくもって無駄な時間
入学式・・・それは、とてつもなく眠くなる時間
入学式・・・それは・・・ってもういいや。
そう!何より今日は入学式なのだ、入学式はこの高校の体育館でおこなわれる。俺の隣には、もちろん総がいる。
そのおかげで、俺はかなり気まずくなってしまうのだ。
なぜかって?そんなの決まっているじゃないか。総がイケメンで俺はイケメンじゃない、ただそれだけのこと。
つまり!総がきゃぁきゃぁ騒がれている中そいつの隣を歩く俺!気まずすぎる!
「あの人かっこういいよね?」
「うん、超イケメン!」
「メルアド教えてほしいなぁ」
「だねぇ」
などとまぁざっとこんな感じだ・・・普通こんなに騒がれるやついるか?
いやいないだろう。これは総だからであって、他の人には決してまねできない芸当だ。
「総・・・よかったな?毎度のことながら騒がれてるぞ・・・」
「なぁにいってんの?妬いてる?俺は、陽太だけだから。」
まぁ総よ、やめてくれそういうことは・・・総のジョークはちょっとばかしキツイものがあるんだ・・・
「総・・・俺はお前に妬いてるんじゃなくて、お前のモテように妬いてるんだ・・・」
「結局俺に妬いてるじゃぁん?」
「そうだなそういうことにしといてやるよ。」
そんなこんなで、無駄話をしていると入学式も終わりに近づいてきた。入学式を終えるとクラス発表があるので楽しみだ。
まぁ総と一緒になれたら友達作りには苦労しないだろう。
「ええでは、これからの高校生活では、くれぐれも気を抜かずに勉学や部活などに励んでもらいたいと思います。」
「これで入学式を終わります。起立・・・・・・礼!」
終わった。ながかった入学式はとても疲れるものだ。
「では、これからクラスが書かれた紙を配布しますので。それをみて移動を開始してください。」
そうして配られた紙には、1−1 新屋 陽太 とかかれていた。俺は一組か・・・
「やったぁ!陽太クラス一緒だょ?」
「おう?まじか、じゃこれからもヨロシクな?」
「うん、さそっくクラスに移動しようよ?」
「おう。」
そういって俺たちは、自分たちのクラス一組へと向かうのだった。
体育館からクラスまでの距離はなかなか長く、いまは、わたり廊下を歩いてる最中だった。
「でさぁ、陽太はすごい焦ってたんだよね?」
「おいおい昔のこと掘り返すなよ、お前だって超焦ってたじゃん。」
「まぁあれはねぇ・・・・俺でもあせるでしょ・・・」
さっきっから焦ってるを連発しているの理由はこれだ。
俺たちが、中学のころ部活の練習試合で他校に行っているときのことだった。
この中学校はトイレの電気が勝手につくという画期的なシステムが搭載されていたので。2人で楽しみにしながらトイレに入ったのである。
入ったはいいがなかなか電気がつかず、不思議に思う中突然電気がついたのだ。俺たちは、2人して『おぉ!すげー!』
などと抜かしていたのだが、なぜか立ち便器がなかったのである。しかも中にあるトイレのドアの一つだけがしまっていた・・・
要するにそこは女子トイレでありなおかつ人が入っていたという事実。さすがにあれはびびったね。
「っあ!ヒヨちゃんあぶない!!」
なんだ?と思った瞬間に俺に衝撃が走った。
俺の前に女の子が倒れている。やべぇ大丈夫か・・・しかもなかなか立ち上がってこない。
「・・ぃ・・ぇ」
「あ、っだ大丈夫?ごめん余所見してた。立てる?」
するとその女の子は俺のほうを見る。俺はその子がかなりの美少女だということにおどろいた。
まぁ容姿を表現するならば、顔はちょっと幼く背は小さい。つぶらな瞳にかかわらず、何か秘めたものを感じる強い目
そして何よりも守ってあげたくなるような女の子だった。
おどろいた理由はもう一つある。それはまるで、最近読んだラブコメのように美少女と廊下でぶつかりそしてハッピーエンドを迎えるという展開に近かったからだ。
しかし現実はそんなにあまかない。俺はそれくらいわかっているから期待したりはしない。
しかし期待はしていないが期待を裏切られた気分になってしまうそんな状況に陥りはじめた。
「ほんとに大丈夫?」
そういいながら俺は手を差し伸べる、しかし彼女はそれを払うやいなや・・・
「お前!どこ見て歩いてんだバカ!いてぇだろうが!ぶっ飛ばすぞ。」
ぇ?いったいなにが?後ろにいる女の子もたじたじしているし。
俺もたじたじしている。総にいたっては俺の隣から消えている。何故?
「っだだからごめんって・・・」
「ごめんですむなら警察はいらねぇんだよ・・・」
なんなんだこの迫力は、こんな美少女なのになんてオーラだ・・・
「っややめょうよ、ヒヨちゃん?」
なに!?この迫力で名前がヒヨちゃん?なんてギャップなんだ。面白すぎる!
「っぶは、あははは!っひヒヨちゃん?あはは!」
「なにがおかしいんだ!」
「っだだだって、名前と性格があまりにも不一致なんだもん!」
「ってってめぇ、私のことをバカにするとは・・・ゆるさねぇぶっころす!」
「ダメだよ!ヒヨちゃん。本気だしたら、この人死んじゃう!」
は?いやいや女の子一人に殺されるようなほど俺はやわじゃないぜ?
「うるさい!龍姫族 総長の私がバカにされたままで終わるわけにはいかない!」
っえ?龍姫族って・・・おいおいウソだろ?まじでやべぇ・・・ここいらで知らないやつはいねぇレディースじゃねぇか。
基本的に悪さはしない族だがここら辺いったいを仕切っている。そして男の総長でさえ勝てないといわれている奴が龍姫族の総長。
つまりコイツか・・・
やべぇな俺まじで怒らせちゃってるっぽい・・・
「じゃあまず、一発挨拶代わりにヨロシクどうぞ!!」
すごくハヤカッタ・・・よけきれずに顔面に直撃、しかし俺は崩れることはなかった。
これは男としてのプライドだった。というわけでもなく、いくら龍姫族の総長とはいえ、女の子のパンチ一発で倒れるわけにはいかなかった。というわけでもない。
なぜなら総が影からニヤニヤこちらをにらみつけているからだ。ゆるせん!俺の怒りのボルテージは最高潮に達した。
「ほぅ私のぱ「おい、そこどけ!」は?」
「だからそこをどけってっていってるんだ!!」
「っな!殴られてやり返そうとは思わないのか?!」
いやむしろそんな気力がない。今おれに残っているのは総を追いかける力だけだ。もし仮にケンカをしたとして俺の勝ち目はゼロである。
なぜならすでに膝がふるえているからである。
そして俺は俺に課された使命を果たさなければならない。だから俺は穏便に穏便に・・・
「まぁ君見たいな可愛い子には手がだせないよ。キレイな素肌に傷をつけるなんてもってのほかだ。そうだろ?」
極力やさしい声をだす。普段の俺なら絶対にこんな歯の浮くようなセリフは吐かないが、今はもっと大事なことがある。
「ほら、こんなにキレイな手なのに、俺のこと殴らせちゃってごめんな?」
そうしてやさしく彼女の手を包み込む。
「っぁ・・・ぁの、っや!やめろよ・・・っそその・・・」
そういうと彼女は顔を真っ赤にさせながら顔をふせた。そうしたところで俺はようやく動きだす。総を追うために。
「じゃあね?」
俺はそういい残しこの場所をさった。曲がり角を曲がると俺の意識はとだえるのであった。やっぱり俺ってよわいのかなぁ・・・・
「ヒヨちゃん顔まっかだね?」
「ぅん」
「ヒヨちゃん惚れちゃった?」
「ぅん」
「ヒヨちゃんもしかして壊れちゃった?」
「ぅん」
「ありゃ・・・ほんとにこわれちゃった・・・」
「美奈?」
「へ?」
「私あんな人初めて・・・」
「うん、私も初めてみたよ?」
「私、惚れちゃったかも・・・」
「うん、ヒヨちゃんよかったね?」
「ぅん」
そうして入学式はおわったのである。次回くらす!