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#1

 大通りの喧騒とした空気が落ち着き,むしろ寂れた感のある路地にあるジャンクショップの前に立つ。外からは,中にナニがあるのか分からないぐらい,窓がない。

 もう少しきれいにすれば,アンティークショップと呼べたかもしれない。

 ドアノブに手を掛け引き寄せて,一歩足を入れると,いつもの台詞を口にする。

「邪魔するでー」

「邪魔するんなら帰ってんかー」

「ああ,そうする」

 店主かららしき返事を受け踏み入れた足を引き戻し,ドアを閉めてぶらぶらと別のジャンクショップへ足を運ぶ。

 ジャンクショップが密集したエリア入口にある寂れた一件への冷やかしは,自分にとってひとつの儀礼となっている。

 気分新にジャンク探検を始めた。特に何かを求めてでないが,日課のようにここへは訪れている。



 もう一ヶ月(ひとつき)近くなるなあ。ジャンボフランクを買って,ぶらぶらと件のショップに近寄るとちっこい何かと目があった。30センチぐらいで耳上あたりまで刈り上げたおかっぱ頭の甲冑に身を包む[ナニか]だった。頭部はサークレットのみで兜部はない。

 足を止めると自分に気がついて驚いているのと,オレの持ち物に涎をあふれさせているのはキモい。

 すぐ視線を外して過ぎ去ろうとすると前に回り込み両手を広げて通せんぼうをする。

「あっ」悪いと思うが,重心を変えかけてすぐにもとにはもどせないよね。

 十分体重を掛けてしまってから,やっと脚を上げると,よれよれになりながら立ち上がった。

「甲胄すげー」と言ってやると,にまっと白い歯を見せサムズアップ。視線はちらりと,食いかけのマスタードたっぷりなジャンボフランクを行ったり来たりしている。

「欲しいのか。一口だけならいいぞ。はき出すなよ」

 高さを合わせてやると,躊躇なくがぶっと食いついてきた。釣でいうところの入れ食いだ。

 大きくかぶりついたはイイが,ほどなく涙目になり,ふるふると震えだし,顔が赤くなったり青くなったりしている。朦朧とする意識を自分で頬を両側から叩き,目がきりっとなった勢いで咥えているものを咬み千切ると両手で口を押さえ回れ右をして駆け出し件のドアにスッと姿を消した。

 ドアの開閉は無かったはずだが……幽霊のだぐいかな。

 ドアに近づき,かすれて読みにくくなっている看板からそこが中古の魔道具を扱う店だと知った。ドアノブに手を掛ける。

「邪魔するでー」

「邪魔するんなら帰ってんかー」

「そうか,じゃあな」

 一瞬で興味が失せてしまった。陳列棚の一角が崩れたらしく,いまは接客でけそにない。

 ジャンクショップをブラリと見てから帰ることにした。



 次の日,小ぶりのミートボールが数個入ったカップを片手に,一個噛り終わった頃に件の店の前に来た。

 鞘に入った剣を突きよれっと外壁に身体を預けて通りを眺めるちっこいのがいた。

 やべ,視線が合っちまった。だが昨日の今日だからか,向こうから視線をそらせた。無視?

 なんか,腹が立つぞ。

 ゆっくりと近づき,揚げだちの油臭いが感じられるように,鼻先に差し出す。

「一個どうだい。腹が減ってないなら,無理にとは言わないが」

 ハムスターのように鼻をひくひくさせて,視線はオレとミートボールを彷徨わせている。

 前兆もなく腰の剣を抜き器用に8等分にして,小さくなった塊を口に放り込むと,目を大きく開き瞬く間に1個分を食べ終わり,5個目を分割した。

「こらっ,一個って言っただろう。全部とは言ってねーぞー」

 がしっと鷲掴みして,壁に叩きつけてやった。しかし衝撃は起きずに,すっとすり抜けていった。

「?」

 中が急に騒がしくなったようだ。細切れにされたミートボールの残骸を口に頬張り,租借しながら店内が気になるので入口にまわり,ドアノブに手を掛ける。

「邪魔するでー」

「邪魔するんなら帰ってんかー」

「そりゃ,すまねーな」

 店の中は商品が散乱しているようで,接客どころではないみたいだ。特に用もないので帰宅することにした。



 さらに次の日のこと,アメリカンドッグにケチャップとマスタードをフニフニフニと波立たせて塗り,一口噛った頃,いつもの店先に来ていた。

 ちっこいのがオレを見つけて,鞘に入った剣の柄を握りしめ,抜刀する気満々で駆け寄ってくる。

 気迫がすごい。まるで猛牛だな。そうか,その手があったな。試してみよう。

 接近までの間にアメリカンドッグをオレとの間に位置を調整する。

 真愛に入る寸前,鞘と柄に掛ける手の力が,次のアクションに切り替わる気配で,一度アメリカンドッグを下げて,そのまま一メートル程度宙に放り上げる。くるくると回転して,マスタードとケチャップが飛沫となって,ちっこいのを襲う。

 ちっこいのは気づいて,切りつけるよりも自分の視線を飛沫から庇おうと抜いた剣を構える。横方向に避ける気はないようだ。

 進行方向を避けるように,串をそのままに身体を斜め前へと移動させた。

 斬りかかる間合いではなく,ちっこいのは通り過ぎていった。

 ずさーっと砂煙を巻き上げて,今度こそと構え直して方向転換をして迫ってくる。

 オレはパンと手を打ち,宙に浮くアメリカンドッグの串を掴むとちっこいのの口サイズに合う程度を千切り,「そら,おたべ」と少しだけ高く頭上めがけて弾いてやった。

 ぱくっ。音が聞こえるような大口を開けて,飛び上がって口でキャッチした。

 満面の笑顔とドヤ顔をしているところ,誠に申し訳ないが,キックさせてもらった。ちっこいのはまっすぐ件の店の壁に消えていった。なんかド派手な音が中からした気がした。ドアノブに手を掛ける。

「邪魔するでー」

「邪魔するんなら帰ってんかー」

「そうだね」

本編との接続がまださだまらなくて,途中_| ̄|○ありです。

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