08 勧誘理由
「えっと… これはどういうことなんだ…」
何が何だか分からない俺は動揺してしまい
また思っていることが口から出てしまっていた。
「言葉通りの意味、君がこの神話調査研究部に入部するのを祝ってるんだ」
「あ、また声に… っていやいや何でそうなってるんですか…!」
彩月様にも言われどうやら冗談ではないことが分かった。
「珍しいね 二大女神と一緒の部活に入るなんて
普通の男子なら泣いて願っても無理なことなのに」
月宮が微笑しながら俺に言ってきた。
確かに滅多というかこれから絶対ない機会だとは思う
だが意図が読めないぶん、そう易々と入るわけにはいかない…
もしかして彼女らは俺のような童貞を騙してトラウマを植え付け
楽しもうとしているのかもしれない…
「俺、帰ります… 他にもっといい部員探せばいますよ それでは」
「そう…」
悠乃様が残念そうに言うのを気にしないようにして部室を出るよう歩き出した。
「言ったでしょ… すぐ終わるかは君次第だって…!」
そう聞こえたときには月宮が俺の前に立ちふさがっていた。
「なんだよ、もういいだろ… まさか入部が強制だとでも言うのか?」
「そうよ もし入らないって言うならそれ相応の態度を示させてもらうわ…!」
後ろを振り向くと悠乃様が睨むようにこちらを見ていた。
「入部してほしいなら、なぜ僕なのか理由を教えてください」
「分かったわ、とりあえず座って話をしましょう」
そう言われ俺はとりあえず話を聞くことにした。
部室は普通の教室の2倍位の大きさで音楽室や理科室のような
特別教室と同じくらいの広さになっており、それに加え
図書室かと思うほど本棚がいくつも配置されていた。
キッチンもありエアコンも完備されていておまけにパソコンも置いてある
普通に生活できそうな空間だなと思っていたら
クローゼットがあるのも確認できた。
「なかなか家具が充実してるでしょ」
「そう…ですね」
「私的にはもう少し増やしたいなと…」
「悠乃、早く話を始めよう」
「もう!分かったわ…」
悠乃様が家具についての話を広げようとするのを彩月様が止めることによって
本題に話が移った。
「率直に言うと私や彩月、椋は神なの」
「え… 女神ってことですか…?」
「違うわよ!!」
俺は何を言っているのか分からず思考が止まってしまった。
「率直すぎる…もっと分かりやすく説明してやれ…」
「そうですよ部長 さすがに意味が分からないですよ」
彩月様は額に手を付きながら呆れており、月宮は微笑していた。
「分かってるわよ!率直に言っただけよ、こっから説明するから
ええと、まずあなた契約とかなんとかって誰かに言われなかった?」
「契約… そんなのないに決まって…ええと…言われました…たぶんですけど」
「あるのね?それでなんて言われたか覚えてる?」
「確か…契約すれば願いを叶えるとかなんとか…寝ぼけていたので詳しくは…」
「そう… その声の主は神よ」
「え… そんなことがありえるわけ…」
「現に声が聞こえたんでしょ?それは私たちも聞いた声よ
4人にも共通の声が聞こえて、ありえないで済ませれるの?」
俺は黙ってしまった、確かに馬鹿馬鹿しくありえないことだが
4人にも共通のことが起きていてそんなことはありえない、
聞き間違えだ、では済まされないのも事実だったからだ。
「でもその声の主が神だって証拠はあるんですか?」
「あるわ というより先にこれを見せればよかったわね 出てきて」
そう言うと悠乃様の肩に発光した球体が出現した。
「えっと…それはなんですか?」
『それとは無礼な… ん、この者も宿主か…』
「シャァベッタァァァァァァァ!!!」
「まぁ驚くわよね、この子は天照 聞いたことくらいはあるんじゃない?」
「えっと…確か日本の神様ですよね?」
あまり神話を知らない俺だが天照大神くらいは知っている
それくらい有名な神様だ。
「それじゃあ…彩月様や月宮も…」
「ああ」「うん、出せるよ」
二人はそう言うと肩に悠乃様と同じような発行体を出現させた。
「彩月は月読、椋は素戔嗚を宿してるの」
言われることは現実的にありえないと頭で分かっているのだが
目の前で起こってることの説明がどうやってもできないこの状態に
俺の思考は再び停止しそうになっていた が一つの疑問によって停止を免れた。
「えっと…悠乃様達が神を宿しているのは分かりました…
もしかしてなんですがそうなると契約をした俺も…?」
「そう!それがあなたを入部させる理由にもなってるの!」
「でも俺…何を宿してるかなんて知りませんよ…」
「普通は神自身から名乗るはずなんだけど… そのぶんじゃ出現も無理そうね…」
「そう…みたいです…
あ、それよりも何でこれと俺が入部することが関係しているんですか?」
「私たちみたいな神々などを宿す者を宿主って言って
宿主には神を宿す者、悪魔を宿す者、冥府の神を宿す者に分けられるの
それであなたは神を宿す者、同じ神皇派として管轄内に入ってほしいの
これがあなたをこの部に入部させたい理由よ」
改めて勧誘理由を聞かされた俺は、
話されたことの非現実性を現実だと理解するのに少し時間がかかった。