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話に来た理由

 遅れました……昨日は書こうと思ったらいつの間にか眠ってました……五時には垂れてるとか、夕飯食べそこなったんですが……

 日が暮れて間もない赤い空に、何かが粉砕するような轟音と誰かが叫んでいる怒号が響き渡る。


 劉術道場の師範とちょっと戦ってくると告げてカシャの突入した屋敷の中から、大小さまざまなそんな音が発生し、屋敷の廊下や天井、壁に穴を空けながら幾人かの男が吹っ飛んでくるのを雪人は冷静に眺め、すぐにイータに頼んで捕獲してもらっていた。


 イータの新しい能力”形状変化”を使用して、周囲一キロには達する正方形の敷地の周囲を蜘蛛の巣を張るようにネット状にイータの根っこを広げて覆い、できる限り近隣住民に被害の及ばない様にした後は室内から飛ばされてきた竜人の男たちを干からびない程度にイータに供給していた。


 意識を昏倒された状態で十メートルは確実に超えているだろうと思われる高さで飛んでくる竜人たちは、雪人が何もしなくともイータのネットに引っかかる。偶に、そんなに飛ばない竜人もいたりするが、そちらは普通に雪人が引きずってイータのネットを維持する魔力として利用させてもらった。


 それなりに早い動作で倒れている竜人たちの足を掴んで引きずって投げているのだが、竜人が飛んでくる速度が異常に早い。ともすれば、ネットに引っかからなかった一部の竜人だけで狭い庭が埋まりそうである。中に突入したカシャのけた違いな殲滅速度を目の当たりにし、自分まで来る必要は絶対なかったよなあと遠い空を見て儚んだ。


「あ、おい! お前、我々の同門に何を―――――!」

「ん?」


 雪人がまた一人誰かをイータの下に運ぼうとしていると、こちらに向かって竜人が拳を握って向かってくる。どう見ても話が通じる様子は無いし、そもそも攻め込んでいる時点で話し合おうなんて言う傲慢な提案をする気もない。こちらを敵と認識した竜人は、魔力の強化を最大限に、五メートルは離れていた間合いを瞬く間に詰めた後、右の拳で雪人の顔面を狙ってきた。


 だがその動きは竜人が初動を始める前から雪人の時見に見切られている。動きは竜人よりも遅かったが、動き出しは雪人の方がはるかに速い。拳の通る軌道よりもほんの少しだけ左に体を逸らし、相手の右拳を紙一重で躱す。頬をチリッと音を立てて掠る右拳を無視して、すれ違いざまに顎と眉間に一発ずつ手加減した裏拳と正拳をいれる。


 どんなに堅い体表を持った生き物でも、正確に打撃を加え、脳を揺らしてしまえば体は簡単に揺らぐ。その理屈に従って、一瞬で力の抜けた竜人に対して足払いをかけ、勢いを利用してイータの方に投げといた。さっきまで元気のよかった竜人は、干からびないにしても疲労困憊で立てなくなる程度に魔力を吸われて気絶した。


 あっという間の早業であるが、雪人としてはさほどに苦労したわけでもない。動きも直線的であったし、何より雪人でも簡単に反応できる速度だった。力を極める劉術であったが、まさに当たらなければどうということもないということだ。もしも今の竜人がもう少し冷静だったら話は変わっただろうが。


 雪人は透視クレヤボイヤンスを屋敷の壁に向ける。その視界には、温度の変化を色の違いで認識するようなサーモグラフィーに近い機能があり、魔力の濃度の強弱を色として認識することもできる。故に、特に魔力も流れていなければ、魔力を外に漏らさないような在室でもない普通の壁の向こうで起こっているカシャと竜人たちの戦いの様子を外から観察することだって可能である。


 壁の向こうでは、カシャが細かいフェイントを動きの端々に入れることで相手の大ぶりな攻撃と打点を外した攻撃を誘発し、それを勢いと衝撃に変えて壁を壊す勢いでブン投げている。


 細かい動きは見えないが、視線や挙動という動きのフェイントに魔力を体内で局所的に偏らせたりして発生させた威圧感で、攻撃の虚実を覆い隠している。今も勢いよく突き出された相手の拳を掌で受け止め、相手の怯んだところに、攻撃に乗っていた魔力を体内で増幅して瞬間的に自信の驚異的な膂力へと変換し、相手を背負って壁をつき壊す感じで叩き付けている。


 次いで後ろから来た拳を振り返りもせずに掴み取り、相手の腹に足をつっかえ棒のように当てて、体を前転させながら前方にいた集団に投擲する。ちなみに、拳を掴みとるのと足を腹に当てるのはまったく同時で、動きをつないだ前転はその次の瞬間だ。力の流れを読み、威力を手足に限らず自らの体内ですら増幅して、相手の攻撃をそのまま自分の武器へと変換する。攻撃を流すことを重視する流術は、力の強さと一撃の威力を追及するという劉術に対し相当に相性がいいらしい。集団に突っ込んで、完全に無傷であるカシャの様子を見て雪人はそんなことを考察する。


 まあ見るからに、カシャの実力の方が他の竜人よりも高いことは簡単に理解できるし、この結果はある意味当然といえるだろうが。


 というよりも人数が多い。不人気な流術はいても二十人に満たないほどに少ないのに、人気な劉術は夜中でも人数確保ができているということか。それにしても数が多いがする。


「う~ん。というわけでなんでこんな人数がここに集まっているのか教えてくれないか? そこに隠れてる多分師範の人」


 頭を捻っても分からないことは本人に聞いた方が早い。そう判断した雪人は、こちらの様子を陰から見ている視線の主に声を掛けた。傍目にはいきなりどことも知れないところに話しかけた危ない人に見えなくもないが、今回に限ってはその言葉に反応して陰から一人、壮年の男が出てきた。

 

 身には道着を纏い、足元は下駄を履いて全体的に和風の雰囲気を漂わせた格好に後ろには龍の試練を乗り越えて竜化できる竜人の証である尻尾がとぐろを巻いている。三白眼のきつめな瞳とところどころ交じっている白髪の所為で、余計に厳格そうな人物に見えるその男は、見た目に似合った張りのある声で雪人の方に話しかけてきた。


「何だ。気づいていたのか。だが、多分は余計だ」

「そうか」


 特に何というわけでもないが、どことなく弾んだような声音でこちらに話しかけてくる男に対し、雪人は対称的にさっさと聞いたことに返事をしろよ、とでも言わんばかりに不機嫌な視線と声音を隠さない。

 それに気づいていたのか、男も無駄に溜めを作ることもしなかった。


「何がというわけでということか分からんが、まあ理由を説明してもよいだろうな、とその前にそこにいる内の若い奴らは無事なのかね」

「ああ、周囲に被害がいかないために設置した防御幕を維持するために多少魔力を拝借しているだけだ。問題は無いだろう」


 その確認を最後に、今の今まで男の放っていたどこか張りつめていたような空気の緊張が消え去った。警戒を解いたわけでは無いが、敵愾心を徒に持つことを止めたという感じか。


「お前さんの聞きたかがっていることへの回答はいくつかあるんだが、全部話すのも面倒だ。端的に言うと、お前さんが恐ろしかったからだな」

「は?」


 雪人の透視クレヤボイヤンスには今何十人かを相手に一方的に戦っているカシャの姿が映っている。だが、今目の前にいる男は、そんなカシャの放つ色彩よりもなお強く雪人の透視に色濃く表れている人物だ。どう考えてもここまで強い人物が自分のことを恐れるとは思えなかった雪人は、今の言葉も冗談だろうと男に再びきつい視線をお見舞いする。


 しかし、その後も一向に理由とやらを話す様子が無いので、まさか本気で今の言ったんじゃないだろうな、と思い始めた。


「本気か? 俺に魔力が無いこと位見れば分かるだろう?」


 雪人が心底意外に思って問いかけると、男の方はその厳格な見た目に似合わない苦悩したため息を吐き出した。


「魔力が無い。なのにあの森の中で生き残れたという時点で十分に警戒に値する。その上あのゼクス神の教信者団体の研究所から逃げ出してきたという事実を考えればこの人数でも足りないくらいだ。とは言え、ここ最近のお前の活動を見せてもらっていたから結構な割合で危険は無いだろうという判断だったが」

「もしかして、俺の様子を観察することが俺に話を持ってくるまでに時間がかかった理由か」

「そうだな」


 今の今までなんかおかしいなと思っていた原因が明らかになり、何となく納得した雪人。だが、今の男の話にはまだ疑問となる単語が含まれていた。


「「ゼクス神」って何だ? というか、俺がそいつの研究所から逃げてきたってことがどうしてわかったんだ?」


 自分の知らない何らかの存在を示唆する発言に対し、興味の色を隠せない雪人。しかし、無情にも男と話せる時間というのはすぐそこまで終わりが近づこうとしていた。


「答えてもいいが……時間が無い。もうそこまで奴が来ている。後日また日を改めてここに来てくれないか。こちらも聞いておきたいことがある」

「……別にいいけどさ。じゃあなんであんな馬鹿な竜人二人をこっちに寄越したんだよ。あんたほどの実力者がそれを考えないわけがなかっただろう?」

「考えてはいたさ。ただ、家の馬鹿をどうにかして矯正してもらおうと思ったのと、久しぶりに腐れ縁の幼馴染と戦いたくなったのもある。ついでに、この状況下で君がどう動くかということにも興味があった」

「一番目と三番目は良しとして、二番目の理由は個人的すぎるだろう!」


 丁度雪人がツッコミを入れると同時に、男の側面にあった壁が粉砕して中からまた一人、ここの弟子らしき人物が飛んで出てきた。

 そしてそれに続いて、土煙の立ち込める中からカシャがゆっくりと歩いてくる。


「やぁぁぁぁぁぁぁぁぁっと見つけたよロウロウ君。これだけの人数を前もって準備してるなんてどうにも、君はまた何かよからぬことを考えていたようじゃないか」

「カシャ……そういうお前は問題が起こった時に力で解決する癖は治らんな」

「いやいや、弟子の不始末は師匠の不始末。今回君のところの馬鹿弟子二人に傷つけられた家の天使のような可愛い弟子の責任を師弟共々取ってもらおうと思ってね」

「……ふっ。出来るものならやるといい。だが、今までの戦いで俺とお前の勝率は百七十三対百七十二で俺の勝ち越しだぞ」

「今日の私は二回りは違うんだよ。久しぶりに暴れまくって調子も出てきたし、ここで決着をつけてやるさ」


 先ほどまで冷静に見えた男も暴れまくっていたカシャもどっちも似た者同士ということか。というか竜人ってこんな奴ばっかりなのだろうか。そろそろ戦いに巻き込まれそうだし、こっそりと隠れるようにして雪人は後ろに後退した。

 ついでに足元に倒れていた首元に鱗のある竜人の腕を引っ張り、安全圏に連れて行っておいた。


「はあぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁあ!!!」

「うおぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉお!!!」


 そして、二人の達人が宵の初めに衝突した。

















「言い訳はある? 二人とも」

「待ってくれ、俺は情状酌量の余地があるだろう」

「おい待て雪人。君だけが逃げようなんてずるいぞ」

「だまらっしゃい」


 ぺチンぺチンとハリセンが落ちてくる。正座していた雪人とカシャはそれを首をすくめて頭で受けた。

 カシャと雪人にシャルクを加えた三人が今いるところは、力の強さを極めるべくして擁立された流派である劉術の分派の屋敷であった場所だ。竜人族の間で最も人気の高い劉術の二番角支部として立派に建っていた道場は、今朝には跡形もなく瓦礫の山と化していた。


 勿論やったのはカシャとロウロウという竜人二人だ。


 あの後の戦いは、まさに筆舌尽くしがたいといったのはよくもいったもので、一撃で大地を砕くようなロウロウの攻撃をカシャが大部分の受け流し、その威力を転じて攻撃に利用、ロウロウもそれを上手く弾きながら相手に打撃を加えるといった熾烈な格闘戦が繰り広げられた。


 二人とも周りへの被害とかを全く考えてくれる様子は無く、倒れていた竜人達をそれなりに安全な場所に移していたのは雪人である。そのせいで戦いの被害を抑える方向に援護を向けることはできず、時折、どちらかの攻撃でどっちかが吹っ飛んで建物を壊すような事態が発生したが雪人はそれを止められなかった。

 というかあんな人外同士の戦いにはまだ参加できる気がしない。死者ゼロ人、関係者以外負傷者無しという功績だけで表彰されてもいい気がする。


 そして二人の戦いは、結局勝敗がつかなかった。

 いや、勝敗がつかなかったというよりはむしろ、明け方になって事態に気付いたシャルクがカシャを止めることで戦いも何となく収束してしまったところである。

 ちなみに、この惨劇のもう一人の犯人はあちらの方で瓦礫の撤去作業を地道に行っている。


「二人して大暴れするってどういうこと? 特に師匠。前に私と約束した、もう街中では暴れないって話。あれ嘘だったの?」

「い、いやシャルク聞いてくれ、これには深い深いわけが」

「問答無用! 一週間食事係に任命ね!」

「あああ!! そんなあ」


 一週間もシャルクの料理を食べられないなんて、と妙な嘆き方をしているカシャを一瞥し、次はシャルクは雪人の方を睨んだ。


「次、雪人ね」

「いやちょっと待て、だから俺がやったのはカシャの付き添いみたいなもんで、それだって強制だったんだ。情状酌量の余地はあるだろう」

「随分と沢山の人たちが魔力を吸われたことで力が入らなくて体が未だに動かないとかいう話を聞いたんだけど」

「それは必要な措置で仕方なくやったんだ。やっぱり周りに被害が出たら不味いだろう?」


 それっぽい理由をつけて取り敢えず誤魔化しておく。事実、雪人がイータに頼んでネットを張っておかなければカシャに投げられた竜人たちは隣の民家まで吹っ飛ばされていただろうことを説明し、そのためには魔力が必要だったんだと自分の行動の正当性を主張した。実は、イータが久しぶりに沢山食べたくなったとかいう真実は勿論言わない。

 

 一応建前だけの主張だったが、それもまた事実だと認めてくれたのかシャルクは長い時間唸った後に無罪の判決を下してくれた。雪人は望外の判定に小さく拳をガッツポーズ。


 それをじろっとシャルクに見られ、慌てて拳を隠したが。


「……まあ、雪人の方は別にいいことにするわ。でも、今後師匠が暴走したらちゃんと止めること」

「……いいけど」


 そんな何回も暴走していたのか、と思ったが口には出さない。既にこの時点で横の方から向けられるすがるような視線がウザったかったのもある。


「じゃあ、俺はあっちのおっさんの方を手伝ってくるから。後はお二人でごゆっくり」


「え?」「そんな!」とあっけにとられたシャルクと悲鳴を上げたカシャを無視して、雪人は瓦礫撤去を行っているロウロウという竜人の方に近づいていく。師弟水入らず、二人でじっくりと話し合ってほしいという雪人の気遣いである。決して逃げたわけでは無い。


 いかにカシャがやりすぎだったかというシャルクの説教を背景に、左右の腕に一本づつ、尻尾に一本柱を抱え適当に地面に突き立てていく男の方に近づいた。


「俺が手伝うついでにゼクス神とやらの話とあんたたちが聞きたがっていた話とやらを説明してくれ」

「ん?……分かった」


 雪人がヒョイッと倒れていた柱に指をめり込ませて持ち上げ、二ついっぺんに運び始めたのを見て、何か言いたげだったロウロウとやらは何も言わずに了承した。


「まず、ゼクス神について話そうと思うのだが……これは実はよく分からん。かつてゼクスという神を僭称する人間が龍の眷属を堕天させ、世界を支配しようとしたというどこまで本当か分からない眉唾な伝承が存在するのだが、ゼクス自体は実在していたらしくその時にその彼の「人族こそが至上である」という狂った思想を取り入れて作られたゼクス教というものがあってな。その中に確か、現在まで続くさらなる人類の飛躍の為と銘打った「人種改良研究」という世にもおぞましい部署があったらしいんだが、状況証拠を考えて恐らくお前が捕まっていたのはそこだろうと判断した」


 何かいきなりきな臭い話になったと思ったが、そんな水を差す気は無かった。だが代わりに疑問に思ったことを聞いてみた。


「解剖とか誘拐とかする組織くらい他にも結構ありそうだと思うんだが」

「お前に行っていた森の中の研究所というところを俺も確認しに行ったんだ。転移魔法陣が使われている組織なんぞ早々無い。あったとしても飛び抜けて優秀な狂った個人の研究者レベルだ。あそこまで規模が大きい以上、結構な時間をかけて作られた組織であることは一目瞭然だ。ならば、既存の組織で考えるとゼクス教の連中だろうということになるわけだ」

「何でそんな危険な連中をすぐに排除しなかった?」


 明らかに第一級の危険組織だろうと思われる犯罪集団相手に、竜人はまだ何もしていないのかと思ったが、ロウロウは首を横に振る。 


「まったく尻尾が掴めない。どんなに間諜を放っても、どんな実力者が向かっても一向に彼らの行方が分からんのだ。恐らくは奴らの行ったことだろうという目安をつけた事件に向かっても突入すること頃には姿も形も残ってない。しかも……奴らは戦力の面でも一級品だ。大凡の概算だが、ゼクス教の幹部一人で竜人の街が十は軽く落とせるとなっては手出しも難しい。しかも、分かっているだけで幹部数は十三席存在するということだ」

「……なんだその人外実力集団」


 ただの人族が、遥かに戦闘力で勝る竜人たちをあっさりと壊滅させるレベルの強さなどほとんど眉唾である。そんな強い連中がいるんだったら、一方的に魔族に負けたという話も結構おかしい気がするのだが。


「と、まあこんな超危険組織が存在し、竜人たちの中でもこれを排除することを目的とした組織が存在していてな。お前さんが来たのはそんな危険組織のところからだったから、ぜひとも情報が欲しい気持ちともしかしたら奴らの新しい先兵かもしれないという恐れがこの人員過剰の状況を生んだわけだ。だがまさか、カシャを爆発させる阿呆がいたのは計算外だったが」

「その割には生き生きして戦っていたよな」


 そんなに警戒する事態があったっていうのにここまで雑な対応をしてる時点で実は余裕だったろこのおっさん、と雪人がジト目をするとロウロウと名乗る男は豪快に笑い飛ばした。


「何、最近は奴も内弟子とかを取ったせいで、前みたいにすぐに喧嘩に乗ることが無くなってしまってな。最近は張り合いのあるやつもいなかったんだ。肝心の警戒対象も子供におもちゃを自作するほどのお人よしであり、図書館に籠っている人畜無害な奴だと分かればほっときもするさ。組織の中にはさっさと情報を取っとけよといった意見もあったんだが、どうせこの町で組織の奴は俺だけだったしな。人数集めておけっていうのは上からのお達しだったが、別にそいつらを必ず使わないといけない理由もあるまい。俺のやり方で進めることにしたのさ」


 やっぱり拳で語らないとな、と堂々と言い放っている竜人のおっさんのあまりに適当な意見と考えにもうどうでもいい気分でいっぱいだった。しかも拳で語ったのはカシャであり、雪人ではない。そこらへんがルーズすぎるこんなおっさんをよくもそんな犯罪対策組織に入れようと思ったな、と組織の上役とやらを質問攻めにしてみたくなった。


「それは別にいいが……阿呆二人共々シャルクにはちゃんと謝ってもらうからな」


 一応、言っておくべきことは言っておく。結局ここまで屋敷もボロボロになった様子を見る限り、カシャは実力で黙らせる気満々だったようだが、雪人がここに来た理由はシャルクへの謝罪をもぎ取るために来たのである。どうしても謝らないというのだったら、どこぞのご隠居よろしくイータさんやってしまいなさいの掛け声の準備は万端だった。


「ん? ああ。そういえば謝っとかないといけなかったな。あいつらも悪い奴じゃあないんだけどなあ。多分最近は構っててもらえなくなったから暴走してたんだと思う。流石に今回のことで反省はしたと思うんだがなあ。俺も最近は戦ってくれないカシャに不満を持ってたから止める気もあんましなかったし、そこんとこも合わせて今度謝罪に行くさ。一応罰も一緒に考えてはある」


 幸いにして、非常に大人げない告白と一緒に男に謝罪の意思が見えたので雪人はこの場は収めることにした。なんかカシャがモテまくっていることとか、シャルクが嫉妬されまくっていることとかツッコミどころはたくさんあったが、それだけ二人が周りの視線を集めるということだろう。


 というかことここに至っては、一体何故あそこまで暴走するカシャの面倒を見ているシャルクが森の中に突っ込むなんていう暴走をしたのかが非常に気になってきた。カシャからは、事情があったと聞いたのだが、だからといって普通そこまで暴走することがあるだろうか。落ち着いている日頃は確かに、人の話を素直に聞き入れすぎるきらいはあるのだが。


 久しぶりの暴食で、食欲が一気に噴出したらしいイータさんを適当にあやし、なんか話が締まらないなあと思いながら地面に持っていた木材を突き立てた。


「そういえば、結局俺に聞きたかったことって何だったんだ?」


 最初に俺に話を聞きに来た意図というのはこれで判明したが、何を聞きたかったのかということは未だに聞いていなかった。誘拐されたというのは事実であったので、他の研究所の位置を教えろとかいう要請には応えることは出来ないのだが。


 だがロウロウが言ったのは、雪人の予想したあらゆる質問を超えていた。


「いや……森の魔力がおかしい。最近、というかお前が森から出てきた辺りから、あの森の魔力が急速に落ち始めたんだ。まるで大津波の前に波が完全に引くようにな。何か原因を知らないかと思ってな」


 真剣な表情で聞いてくるロウロウの様子を見て、素直に知らないというだけじゃ納得してもらえないような気がする雪人であった。

 次の話まで投稿して、しばらく不定期になります。理由は活動報告に上げときました。多分休日中には上げられるかと。

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