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怒る竜人

「よっ、はっ、やっ、ほいっと」

「「「「「「うわ~。シャルク姉ちゃんスゲ~(すご~い)」」」」」」


 道場の普段は訓練に使われる庭に、子供六人が、けん玉をしているシャルクを中心に集まっている。倒れた竜人のなんか偉そうだったおっさん二人を担いでタオルを敷いた畳の上に寝かせようとしていた雪人はそれを見て、理不尽なものを感じざるを得なかった。


 このおっさんども竜人の平均よりも体格もでかい上に筋肉質なせいで妙に重い。さっさと下ろして昼寝したかった彼の目には、楽しそうに遊んでいる子供とさっきから一度もけん玉を失敗しないシャルクは羨ましいまでに眩しく見えた。

 ふと愚痴が口をついて出る。


「……なんで俺がおっさんどもを運ばないといけないんだよ」

「あ、雪人。勝手に動きを止めない」

「へいへい」


 ちょっと意識を子供たちの方に逸らしてから動きが止まってただけで、こちらにシャルクのお叱りが飛んできた。反抗すればシャルクを好きな子供六人の攻撃を喰らうことが目に見えていたので素直に従う。


 頬に鱗ができている方を右のタオルの上にゴロっと転がし、ついで右腕に鱗ができていた方を左のタオルにドサリと落とす。扱いを丁寧に、とシャルクには言われていたが彼にとって年下の少女に二人がかりで難癖をつける中年のおっさんなど適当な扱いで十分である。


 シャルクから聞いた話では二人ともまだ二十代前半ということだったが、あんな会話の仕方は嫌なおっさんだと思ったのでおっさんとしか認識していない。そもそも竜人族の男は老け顔が多いので年齢も見た目じゃよく分からない。などと適当に自分に言い訳しながら先ほど二人のおっさんに当たったけん玉を回収しに行く。


 玄関を入って直進した廊下の先は、台所につながる扉になる。最初に来た時はしまっていたが、今は戸が開きっぱなしなところをくぐって、テーブルの下にあったけん玉を拾い上げる。


 なんでも、いきなり飛んできたけん玉の玉の部分が頬に鱗のある男の額に直撃し、それにくっついて飛んできた持ち手の部分がもう一人の男の眉間にぶつかったというのが、見ていたシャルクの話である。雪人としては、適当にけん玉を放り込んで子供たちと一緒に中に入れば、あの男二人も自分たちの行動を省みて退くだろうと思ったのだが、まさかここまで完璧に戦闘不能に追い込んでくれるとは思わなかった。キモイ行動をとった男への天罰とは怖いものだと思いながら、けん玉にへこみが無いかを確認していく。


 カシャと組手をして分かったのだが、竜人は見た目人間とほとんど変わんない癖に体は信じられないほどに堅い。それこそ鍛えていた雪人の貫手を腹に喰らっても、貫手の方が突き指するんじゃないかと思うほどに堅かった。


 なんでも貫手から与えられる瞬間的な衝撃のみを受け流したから、ほとんどの勢いを殺して逆に指にダメージを与えることができたということだったが、竜人の頑丈さと流術の意味不明さへの疑問が増しただけの一幕だっただろう。 


 なのでさぞかし大きくへこんでいるかと思ったけん玉に、傷一つついてない事実に首をかしげる雪人。もういっそファンタジーだからというご都合な不思議パワーでも働いたのだろうか。


 そうして居間の方に戻ると、そこでは今度は子供たちがお互いに距離を取ってけん玉の練習をしているのをシャルクが室内と屋外を隔てる大窓を開け放ったところに座って眺めていた。


 そういえばリンゴを買ってきていた。ついでだし向いてもらおうと思った雪人はそのまま足だけを外に出して廊下に座っていたシャルクの隣に胡坐をかいて座り込む。


「リンゴ、土産だ」

「ああ、ありがとう」


 着物の懐のところにある収納スペースからリンゴを取り出して、一つシャルクの方に渡した。自分も食べる分を一つ出して、皮がついたままのリンゴに思いっ切り口を開けて齧りつく。


 シャクリといういい音が鳴って、口の中に甘さと酸味の混じった程よいリンゴの旨みが広がる。歯ごたえも良く、新鮮そのものの赤い実の果汁はすきっ腹には染み入るように美味しかった。シュール・ロームではほとんどの果物が実に毒を持っていて、解毒作用のある皮と一緒に食べなくてはまともに食べれるようなものは無かったこともあり、ここ最近の雪人の常識では果物は丸かじりである。


 リンゴをまるまる一つ食べ終わったころ、シャルクがリンゴも食べないで丸かじりする様子を見て何か言いたげにしていることにようやく気付いた。 


「食べないのか? 別に懐に入れてたからってちゃんと収納用のポケットみたいなものがあったから素肌にくっついてたわけじゃないし、よかったら刃物も貸すぞ?」


 ほれ、とカマキリナイフを加工してできた新しい鉈型武器”蟷螂とうろう”をシャルクに見せる。ミルの手入れしてもらったときに名付け親になってもらったのだが、蟷螂の斧という意味を知っているものには止めてほしいネーミングだ。ただ、どうせ似たようなもんだなと妙に自分でも納得してしまいそのまま名前が定着したという曰くつきの武器である。


 シャルクはしばらく無表情に蟷螂をじっと見ていたが、何の反応も返さないままにしゃくりと雪人の時よりも小さな音を立ててリンゴをかじり始めたので、別にいいかとほっとくことにした。


 後二つ残っていたリンゴを取り出し、スルスルと皮を剥いていく。最後には六等分に切り分け、剥いた皮を皿代わりに並べて置いた。こうしておけばその内遊び飽きた子供たちが食べるだろう。


 さて、寝るか。


「さっきのアレ、わざとでしょう」

「ん? いきなりどうした?」


 今の今まで呼びかけに答える様子もなく、子供がけん玉に悪戦苦闘する様を見ながらシャクシャクリンゴを食べていたシャルクが唐突に話しかけてきた。いつもと違い、声に感情の色が薄い。


「何がわざとだっていうんだ?」

「けん玉が都合よく私の困っているところに飛んできたこと。ここ最近私とあなたで模擬戦した時のことを考えると、けん玉をすっ飛ばすなんてありえないもの」

「偶にはあるだろ、油断したんだよ。まさかとんだ先に人がいるなんて思わないじゃないか」


 自分の動きを把握しきれなかったことが至極不機嫌という表情を作って、笑いも何も含まない聞き返しが逆に確信を強めることになったらしい。無表情に睨んでくるのが追加された。


「私は別にいいんだけどね。あの竜人族の恥といってもいいくらいのアホ兄弟二人が不幸な事故で倒れるのは。ただそれが、これから質問を受ける立場の人間のやったことで起こったっていうのが問題だわ。最悪この後の立場に影響する可能性だってあるのよ」

「さあ? 事故なんだし、誇り高い竜人族なら故意でないと分かれば許してくれるんじゃないのか? 特に子供の前では」

「あ、あんたまさかそこまで計算してたの……」

「はて、何のことやら」


 シャルクは先ほどまでの仏頂面が嘘のように、戦慄と驚愕の視線を向ける雪人に向ける。基本的に何も考えない、感じるままに行動する猪みたいな雪人がこんな風に腹黒く計算しているところなんて考えもしなかったようだ。まあ、雪人に謝る気なんて微塵も存在しないのだが。


 彼女との最初の遭遇の後、自分でも結構な無茶をした自覚はあったのでそう思われていても仕方ないかとため息を吐く。


「ま、それで気が済んだんなら俺は寝るから、後で話す時間になったら起こしてくれ」


 もう一つ残っていたリンゴもあっという間に解体し、胡坐を解いて、自室として割り当てられた部屋の方に向かおうとする。そして二歩ほど進んだところで左側から何かが頭に向かって飛んできたのでそちらの方を碌に見もせずにキャッチする。 


 けん玉だった。


「おい。いきなり何してくるんだ子供一号」

「あれ~? 失敗したよ?」

「駄目じゃない! あれはちゃんと当てないと成功しないんだよ?」

「そうなの?」


 一人の子供が首をかしげている周りで、他の子供が口々に今の技の悪いところを教えていく。色々と道を外れ始めていたので行動を修正しておく。


「おいこら!! 何勝手にけん玉を暴力の道具に使ってやがる! これは安全に遊ぶものであって人にぶつけるもんじゃねえぞ」

「だって雪人はさっき当ててたじゃん。あれってそういう技じゃなかったの?」

「違うわ! 失敗したっつたろうが! 第一、後ろにいる奴にあそこまで綺麗にけん玉を飛ばすとか普通に出来ないからな!」

「でも……」

「でももへちまもねえよ! ああもう、一回あの技の成功例を見せてやる。貸せ!」


 そう言って裸足のまま庭に出ていく雪人。さっと子供からけん玉を奪い、ぐるぐると回した後に玉を針にスッと刺した。


 もう一回だの教えろだの面倒だの騒いでいる雪人達の様子を見たシャルクは不満そうに唇を尖らせた後。


「天邪鬼」


 と白くて細い尻尾を嬉しそうに揺らしながら一言だけ呟いた。




















 応接間に用意された魔物の皮を利用したソファの座り心地はいいものだった。

 座ってみればふっかふかに体の沈み込む感触に、だが沈み込み過ぎないレベルでの低反発。表面は毛皮なのか撫で心地のいい毛並みの生えた革製品となっている


 こんな高級そうで座り心地のいいソファに座る時は、確実にお昼寝時かリラックスしたいときに限るのである。だから目の前で何か憮然とした表情をして座っている男二人など無視してしまえというのが雪人の常識だ。


 その常識に従ってソファに深々と腰かけ、背もたれに体を預けて眼をつぶり顔を天井に上げている姿を見れば「コイツふざけてんのか」と思われること間違いなしなのだが、生憎と雪人も男二人の評価を下げまくっていて、気持ち的には路傍の石以下の扱いなので、そんな輩からどんな悪評価を受けようとどうでもいい気分でいっぱいだった。


 そもそもここに座っているのだって確認作業があるといったカシャの頼みを聞いたからで、それが無ければさっさと眠りたい気分でいっぱいである。結局雪人は子供につかまったまま昼寝を行うことはできなかったのだから。


 雪人が透視クレヤボイヤンスで周囲を把握するついでに、二人の男が起きたタイミングとほぼ同時に帰宅してすぐにこの場を整えたカシャはどうして喋らないのかを確認する。魔力波長の揺らぎからするとこれは動揺と見栄。ギスギスした雰囲気をどうにかしようと頭を悩ませ、しかしうまい言葉も出てこないといった様で口を閉ざしたままといった感じだ。だというのに傍目には普通に貫禄とか余裕とか見えるように取り繕っているのが腹立たしい。


 いくら援護も撃ってくれない、役に立たない、戦闘脳のアホだとは言え一応家主である。困らせるようなことをするのも後々不味いと思い、目を開けて竜人たちの方に顔を向けることにした。


 雪人が目を開けたことを確認し、先ほどから鋭い目でこちらを睨んでいた二人はさらに強く睨んできた。さて、どうするか。


「あ――っと、何か聞きたいことがあって俺のところに質問に来たということだったが何も聞く気が無いんだったら俺戻って寝ていいか?」


 どうもしなかった。普通に会話も対話も放棄しようと思った。一応、敵意一杯こちらを威圧し、何が何でも先にこちらを謝罪させてから恩に着せよう的な空気があったので、そもそもそれに付き合う義理もないことを宣言するついでに相手側から話させようという意図もあって発言したが、どうでもよいというかなんというか。馬鹿のアホなプライドになんぞ付き合ってられない。


 ご多聞に漏れず、男二人はすぐに挑発に乗って騒ぎ出した。


「貴様、我々に危害を加えた謝罪も無しに何を言っている」

「我々が来た目的が分かっているというのならさっさと説明するのが貴様の義務だ」


 口々に好き勝手いいたい放題に騒ぎ始めた二人を見て「本当に帰れないかなあ」とどこに帰るっていうのかといったツッコミどころ満載な考えを浮かべたが、無論、顔には出さない。


 本当に、本当に久しぶりで全く覚えていないが、自分の緊張の糸を端の方から少しづつより合わせ、こういったきな臭い面倒な話をする用の意識を作り上げていく。


「義務? 謝罪? それはどちらも家主の内弟子のことを「猫系の獣人は信用ならない」とか罵倒してきたり、時間よりも早く来て難癖をつけてくるような非礼な輩に対して行うことではないな。一体貴様らは何を言っている。脳に蛆でも湧いているのか?」


 最初の気の抜けた様子とは明らかに変化した口の端を持ち上げるだけの笑顔に冷たい声、底の見透かせない漆黒の双眼。そのどれもが目の前の愚かな二人を敵として認識し、侮蔑していることをはっきりと教えている。


 愚かではあっても敵意に鈍くは無い二人の竜人はすぐさま攻勢に出ようとしたが、その瞬間、彼らの右の方から雪人の嘲笑に含まれた敵意に倍する怒気と殺気の入り混じった強烈な闘気がぶつけられた。


 実際に殺気と一緒に吹き出ている魔力の影響で、家の方もみしりみしりと不吉な音を立て始めている。三人が向いた方向には、鬼神のごとき気配を放つカシャがいた。


「おい……」「「ヒィィィッッッ!!」」


 いつもの低音なハスキーボイスが、今は地を這うようにドスの効いた脅迫に変わっている。身をもって格の違いを悟った馬鹿二人は悲鳴を上げ、雪人も雪人でカシャの怒気を喰らって居心地が結構悪い。


「雪人……今の話は本当か……?」

「あ、ああ。確かにこいつらは俺が帰った時にそう言っていた。一緒にいた子供たちも何か聞こえていたかもしれん。確認したければ聞いてこれくればいい」


 だからその殺気をこちらに向けるのを止めてほしい。心底そう思ったが口に出さない雪人。彼も自分の命が惜しい。

 カシャはそれを聞いてぶつぶつと何事かを呟いた後、怒髪天を衝いて噴出した魔力により逆立っていた朱色に染まっていた髪の毛は黄色に戻り、いつものように後ろに流した髪型に戻る。


 遠目から見ればいつものカシャだ。違和感を感じるところは何もない。目が笑っていないことを除いて。


「おい、そこの屑二つ。貴様らは何の許可があって内の養い子を罵倒した。正当な理由のある根拠を述べてみろ」


 聞いているだけでも刺さりそうに尖った声が震えて動けない二人の動きを縛る。いや、正常な思考すらも縛られているのか彼らが動ける様子が無い。


「まさか無いのか? これで何回目だ? お前らが調子に乗ってこちらに攻撃してきたことは。今までに私が何回忠告したと思っている? 前回私が「次は無いぞ」といったことを忘れたわけじゃあるまい」


 一歩歩くごとに、空間の魔力の流れが急激に変化し、その影響で床がみしみしと立ててはいけない音を立て始める。

 そしてカシャはとうとう二人の憐れな生贄の前に到達した。

 二人の生贄の顔を掴み、そのまま腕を上に上げていく。


「私は寛容であろうとしているが、別に優しくあろうとしているわけでは無い。龍という上位存在に加護を与えてもらえた竜人であることに誇りは持っているが、加護を得たことで強者となったことを過度に前面に押し出して傲慢なまでに行動する竜人のことは認める気にならない。というか汚点としか思わない。そうでなくても内の弟子を傷つける言葉を吐いた貴様たちは万死に値する」


 さっきから床や壁がなっている以上の音を立てて、カシャの掴んだ竜人二人の頭から音が聞こえてくる。何が、とは怖くて確認していないが、壊れたら不味そうなところが変形していく音が聞こえる。 


「というわけで消えろ」


 ごきゅ、という何かが砕けたような音の後、ズガンと大きな破砕音を立てて応接間の床が抜けた。
















「次はどこに向かってるんだ?」

「ゴミの大本だ」


 ズルズルと両手に握った何かを引きずって道を歩くカシャの後を雪人はおとなしくついて行った。

 大通りを通るのは問題になるからといって、道の悪い狭い場所をわざわざ選んでカシャは歩いているようなのだが、引きずられる二つの何かは一向に動く気配がない。雪人は自分は何も見てないことにした。

 そのまま道を進み、角を曲がって次の角へと直進して行く二人。


「というかあそこまで怒るなんて予想外だったんだが、そんなに嫌な奴らだったのか?」


 ふと、いつも万事飄々としていたカシャがいきなり豹変したことに対して、疑問を感じていた雪人はカシャに質問を飛ばす。

 カシャとしても別に隠すことじゃないと思っていたのか、スラスラと話してくれた。


「もちろん嫌な奴だったさ。こいつらは会うたび会うたび私がシャルクの修行メニューを考えるのに忙しくて徹夜しているところに話しに来たり、シャルクの次の食事は何だろうと仕事を終えて楽しみにしている私を引き留めどっかの有名どころに食事に行こうなんて邪魔して来たり、挙句の果てには猫系の獣人はその色香によって男を惑わす売女だとかシャルクの悪口まで言っていたんだぞ! シャルクに止められていたから我慢していたが、一度ならず二度までもシャルクを罵倒するとはもう我慢ならない。久しぶりに暴れてみようと思ったわけだ。それに―――――」

「あ、うん。もういい。大体事情が分かった」


 雪人はカシャの話を聞いていて大体の事情を把握した。要はかまってもらえなかった男たちが、シャルクを潰して自分たちに意識を向けようとしていたということだろう。あの時感じたナンパ男的な雰囲気は、そういったねちっこい作戦の表れだったということか。しかし同情はしない。なぜなら振り向いてもらえないからといってその庇護下にある少女を排除しようという思考回路に至った時点で情状酌量の余地は無いと思っているからだ。


 そんな風に考えている目の前で、止めたというのに声も聞こえていないといった様子でその後もたまりにたまった不満を話し続けるカシャの様子を見て、シャルクが暴走気味だった原因がどこにあったのかを悟った気がする。


 というか最近は、むしろカシャの方が暴走気味である。最初に見た時は常識人に見えたというのに。なんだかシャルクが憐れになってきた。


「というか雪人も一体何故手加減なんかしたんだ!! あの子を罵倒する奴らなんざとっとと簀巻きにして川流しにできただろう!」 

「別に手加減しなくてもいいんだったら最初からやってたんだけど」

「わざとだと認めるんだな」


 それじゃあ殺人だろうと渋々ツッコミを入れた雪人の返答に、それまでの勢いが嘘のように静かになって人の悪い飄々とした笑みを浮かべるカシャ。そういえば、シャルクには偶然で押し通していたことをすっかり忘れていた。


「そう照れなくてもいいじゃないか。シャルクは可愛いし、困る様子を見たら誰だって助けようとするさ」

「黙れこの弟子好きの変態め。第一、俺はそういった期待とか共感とかはもう面倒なんだよ」

「……ん? あれ、雪人。君まさか気付いていないのか?」

「何に?」


 素で返した雪人の様子を一体どう判断したのか。カシャはう~んと唸った後に、


「まあ、いつか分かる日が来るよ。取り敢えず今はこのゴミを返してから用事を済ませることにしよう」


 そう告げて、引きずっていた憐れな生贄だったモノを屋敷っぽい建物の中に思いっ切り投げ込んだ。

 柵とか壁とかそういったものを一切合財無視して、建物を瓦礫と変えていくカシャ。その様子に躊躇いは見られない。


「さて、雪人も手伝ってね」


 そう言って笑顔で突っ込んでいったカシャを見て、雪人はカシャが最後にまともに話してきたせいで、本当に怒っていたのか、はたまた飄々としたいつものカシャの演技だったのか判断が付かなくなった。


 ただここで自分が手伝わなければ、後から理不尽な仕返しが来ることは容易に予想がついたので自分もカシャに従うことにした。

 カシャさんは本気で怒っていたのか、雪人の本音を引き出すために怒った振りをしていたのか……さっぱり分かりませんね! ええ、わからないんです。さっぱりね(汗)


 ちなみに彼女は基本的に直情型です。

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