冒険者ギルド・竜人国編
冒険者ギルドというのはおよそ三百年も昔に、空の王と呼ばれる巨大な大鳥を従えた大賢者と名乗る女性が「平和の鳥ギルド」という名前で設立したものだといわれている。
何故ここで「いわれている」という曖昧な言い方になるのかというと、ギルドが発足してから三百年の間に、何度かギルドの仕組み自体が崩壊して大きな変更が起こった際、いくつかの貴重な資料が失われてしまったからだ。
大賢者あるいは大魔法使いによって初期に作られた平和の鳥ギルドというのは、長きにわたる国同士の争いや暴政に終止符を穿つために政治の監視と暴政の抑止力を基本目的として設立された。
戦争の被害によって増える難民や戦災孤児を守るため。自身も戦争の被害を受けて人生を狂わされた一人だったからこそ、所属する者は、国家、人種、民族、社会、組織、出身、経歴。いかなる理由も問わずして、互いに行動と言動の自由と保証しあう最高の仲間となり、平和を求める。そんな理想を掲げたギルドを作り上げた。
そんなものはあり得ない。理想論に過ぎる。賢者のことを知らなければそんな言葉と共に存在そのものを一蹴することもできただろう。実際に雪人の元いた強大な個人の存在の無い世界では、そんな理想論が通じるはずもないというのは、彼自身痛いほど理解していた。
だがしかし、幸か不幸かここは魔力という摩訶不思議な力が存在し、魔法という意味不明な技術の存在する、強大な個人の存在を容認する世界であった。それこそ、たったの一個人が軽く腕を一薙ぎするだけで大陸を天災という地獄絵図に変えることができるほどの。
一説によると彼女が十節からなる超広域極大殲滅魔法を一つ唱えれば、世界創造の際に神によって行われたという大陸を全て沈ませるほどの大津波を引き起こすことができたといわれている。
その伝説に語られる威力では、人族、魔族、竜人族、獣人族のあらゆる生物の住む陸地を全て破壊するという計測結果が出たそうだが、かつて概算した被害の大きさの予測などどうでもいい。話の根本は、賢者に与えられていた力というのが桁違いに大きかったということだ
それこそそれがいくら絵にかいた餅として中身のない理想と多くの人々に考えられていたことでも、現実にするだけの理不尽を行使できるほどに。
そうした超強力な実力者が建設者となって創った初期のギルドというのは、まさに健全な機関として作られていたという話だ。なんでも一時期は年間死者数が最高時の十分の一以下に激減したというのだからその影響力は押してしかるべきだろう。
しかしながら、いかなる組織にも、また、あらゆる生き物にも栄枯盛衰という言葉は当てはまる。
凡そ百五十年にわたって初代ギルドマスターとして働いた大賢者の没後、ギルドは強力な指導力をもったリーダーと彼女自身と彼女に従った空の王という強大な戦力を一気に失い、ギルドが抑えていた国ごとの不満が一気に表面化する。各国各町にあったギルドに所属していた人物の中には、ギルドを捨てて新天地を求め、国に仕官し戦争に参加する者もあって、一か月と経たずしてギルドは存亡の危機に陥った。
それを変えたのは、三人の賢者の直弟子。
絶対的な戦争抑止力を誇る平和の鳥ギルドは最早維持することは出来ないと判断し、ギルドを世界のパワーバランスの均衡を保つ一つの勢力とした組織に変えることでギルドの存続、ひいては平和を実現するという目的を果たそうとした。
幸いにもというべきか、ギルド自体が町々や地域の雑用から護衛任務、増えすぎた魔獣の討伐や盗賊などの暴力組織を解体するといった具合に、人々の暮らしや国ごとの治安などに密接した依頼を率先して請けていたため、ギルド自体を潰すことを嫌った勢力やギルドが崩壊すれば国としての統治が成り立たない国家の後押しを受けて、平和の鳥ギルドは新たに冒険者ギルドと改名。いくつかの基幹理念を引き換えに、ギルドは存続を許された。
その後何度かの改革と解体を経て、ギルドは今のように日常の雑用から高レベルの魔物の素材回収までなんでもござれといった組織へと変貌していった。
そしてそれは、ここ竜人国でも例外ではなかった。
まだまだギルドに起こった出来事には特筆すべきものがあったのだが、ここでは多くを語らない。
大事なのは、ギルドという誰でもすぐに働ける場所が二番角の町にしっかりと存在したことである。
大通りにある大きな円柱型の建物の入り口にある両開きの扉を開けて、雪人は中に入る。
「こんにちわ~。なんか雑用ある~?」
「あ、雪人だ~」
「「「「わ~!!!!」」」」
「げ、鬱陶しい! 来るなガキ共!!」
入ってきた第一声の猫かぶりはどこへやら。雪人が挨拶して中に入った途端にギルドの中で遊んでいた竜人の子供たちに見つかって群がられた。竜人とは言っても子供である。しかも龍の試練を超えていないので、真の竜人の証とやらである尻尾がまだ生えていない。なので見かけ上は普通の人族の子供と何ら変わらないため、雪人も強引にポイ捨てするのを躊躇してしまう。
無論試練を受けていないので竜化することもできないが、身体能力には人間の子供なんかとは比べ物にならないほどの強さである。それが何人も一気に来られたら雪人とてただじゃすまない。普通に囲まれて動けなくなった。
「ねえねえ、雪人。今度はお姫様の話をしてよ~」
「なんだよ! 次は裏切りの騎士様の話をするんだよ!」
「違うよ! 今日は森で育った双子の熊の話だよ!」
「俺はやらんぞ! というかいつの間に今日も話すことを決定してやがる。今日は普通に働きに来たんだって」
「「「「「え~」」」」」
「「え~」じゃねえよ」
雪人と子供たちがじゃれ合いという馴れあいを行っていると、あちこちからクスクスという笑い声が聞こえてきた。
そっちの方はここ数日で知り合った冒険者仲間だ。彼らは、一度子守の依頼を請けてその後からギルドに押し掛けるまでに懐かれた雪人が、毎回毎回子供をあしらうのに四苦八苦している様子をほほえましいとでも言わんばかりに笑っているのだ。
大体十代後半から三十代前半までの年齢層で、この世界では十六歳からしっかりと成人している。つまり彼らは大人と分類されるので、雪人は一切の加減なく殺気をそちらにぶっ放した。
身も凍るような寒気が子供を除いたあたりの冒険者の間に降り注ぐ。人、これを八つ当たりと呼ぶ。
「あれ? 何かいきなり静かになったよ?」
「気のせいだ。いや、もしかしたらお前らがしゃべりすぎてたせいかもな。ちゃんとうるさくしてごめんなさいと謝っておけ」
「「「「「ごめんなさい」」」」」
子供を口八丁で適当に丸めこみ、雪人は彼らが冒険者たちの方に頭を下げた瞬間を狙って受付の方に歩いて行く。子供たちが気づいたときにはすでに、気弱そうな顔をしたノッポの森人の受付の前だ。
「久しぶりだなクルメ君。というわけで今日もお勧めで五時までには終わる雑用を紹介してくれ」
「なんで毎回毎回ここに来るんだよ! お前のせいで俺がお前担当みたいな空気になってんだよ。美人な受付がほかにもいるんだし、そっちに並んでくれ!」
「……お前にとっては非常に残念なお知らせだが、俺が美女に近づくと凄い圧力がかかるんだ。主に俺の横から」
雪人がそう言って、自分の左肩を反対側にあった指で示す。そこには可愛らしく首をかしげているイータの姿が。
だがしかし、クルメと呼ばれた青年も既にイータの洗礼を受けていた。間違って雪人に下ネタ関係の話を振って、それを嫌がった雪人のリアクションを見たイータの触手攻撃により轟沈させられたのだ。その後は、イータという強力なお目付け役がいる中で、もともと色事に興味の薄い雪人に対してそういった話をしても割に合わないとクルメも自重しているが、既に悪夢は魂にまで刻まれていた。
ついでに、雪人が受付の美女の近くに近づくとイータは雪人に攻撃するようになった。理由は知らない。なんか理由もなく不機嫌になるかららしいということくらいしか分からなかった。
そんなわけでギルド内では一人しかいない男の受付であるクルメ君のところに来るのは雪人にとっては必然であり、クルメにとっては悪夢でしかない。ただ、雪人に男の身を過度に案じるような容赦は無かったのでいつものように超短期労働がないかどうかを確認しに来た。
「で、無いかやっぱり」
「ああ、残念ながらな」
そんなわけでクルメ君に聞いてみたのだが、やっぱり短期の依頼は無いらしい。
「そうだよなー。流石に昼の前から来て仕事もあるわけないか」
「というか、お前がここ最近こなした仕事量のせいで、どこも人を雇う必要がなくなるくらいに仕事が減ったんだよ」
クルメの言葉を聞いて、雪人も少々驚いた顔をする。彼が冒険者ギルドに銀貨一枚をカシャから借りて登録した後は、農作業の手伝い、ぼうぼうに生えた家の草刈り、荷物の運搬に、一週間に二回ある新聞配達の手伝いなど、凡そ未知なる事象を求めて危険な場所へと探検するという冒険者に似つかわしくない代わりに需要の多い仕事だったが、とうとうその数少ない依頼も無くなってしまったようだ。
「そんなに仕事をこなしてたか?」
「違う。が、もともとこの町で冒険者っていうのは、初心者であれば近隣の川や山に素材を取りに行って魔物の動向を調査する、中級者から上級者になるとシュール・ロームの浅いところで希少価値の高い素材を仕入れてこの町の特産品を供給するっていった労働中心なんだ。お前のように日々の雑用を好き好んで選ぶような奴は少なかったから、元から依頼数自体が少なかったのもある。一回の仕事量も異常だっていう理由もあるけどな」
雪人の疑問に、クルメはいつもの気弱な様子を一変させ、有能な受付の一面を見せながら詳しく説明する。実際、クルメのいうように仕事数が極端に少なく、しかも雪人が数人分の仕事をまとめてできるということもあって冒険者ギルドに持ち込まれた雑用はほとんど壊滅状態なのだ。
「いっそのこと、何か冒険とか採取とか調査の依頼を請けてみたらどうだ? お前だってそれなりに腕は立つんだろう?」
クルメはそう言って雪人の体を注意深く観察しなおす。雪人の装備は森の中にいた時の素材の質に性能を任せた半端防具とは異なって、この二番角随一の裁縫狂いといわれる裁縫屋アイシャの手によって大きく進化していた。
森の中から出てきた時に雪人着ていた自作の着物風のだぼだぼな服は、魔甲獣デッドリースパイダーの生み出す強靭な蜘蛛糸の巣を思いっ切り壊して材料にし、濃密すぎる魔力濃度のせいで周りの生き物を無差別に捕食する魔物化した植物、怨凍睡蓮の群生した葉から作り出した繊維質を、これまた群れで襲ってきた蜂型の魔物クラッシュ・ビーの毒針を使って編み上げた後、呪いに属する魔法を使い侮れない突進力を発揮して攻撃してきた馬型の魔物ナイトメアをサクッと首を跳ねて、その血で生地を染めることで耐熱耐火、防水加工を行い、腐食、酸性の共通特性を持つスライムの中でも、鋼色に黒光りしてあらゆる攻撃を通さない、一、二を争う危険生物スティールスライムの核を利用して作ったコーティング液で生地自体の衝撃に対する強度を上昇させ、魔法に対する防御力も上昇させて作った、滅茶苦茶ハイレベルな装備だった。
主に最初から作っていた防具を魔王に壊された後、今度こそ魔王にふっとばされても簡単に破けない服を作ろうとして、雪人が一年間森の中で研究した魔物の生態やらで得た知識を完全に使いこなした結果である。勿論、その時点で性能に関してはこれ以上に強靭な服は無いといえるほどに上昇していた。
ただし、デザインやらバランスやらは裁縫に関しては素人の雪人が作ったのだからいいはずもなく、偶々町を歩いているときに裁縫を本職とした人間に見つかって強制連行を受けた。意味も分からず連れていかれ、抵抗する間もなく採寸を受けたり、胴回りを確認された後、こんなにいい素材がこんな扱われ方じゃ勿体ないと服のあちこちを修正してもらった。
これは自分たちの趣味だからお金をもらわなくてもいいということだったが、修正してもらった後は明らかに性能が上昇し、しかも服の抵抗を全く感じないほどに、生地がトロトロになっていた。なお、これを確認した雪人は、必ずやこの仕事に見合った報酬を払ってみせるとここ最近は毎日働いていたのは余談である。
というわけで現在。雪人の装備は防具の面から見ても上等な品であり、その腰に帯びるイータは魔樹の頃から衰えたといえ尋常じゃない魔力を内包している魔剣でもある。体格百九十センチと十分だし、かといって動きがトロいということもない。身に着けている肉体の攻撃と刀による斬撃、暗器やら小刀を併用した戦闘スタイルまでは見ている人にも伝わることは無かったが、常に重心が一定に保たれ、体の軸も頭の位置も上下していない動きを見れば、素人目にも只者じゃないことくらいは通じる。
ついでに言えば、今まで働いてきた農作業を数人分まとめて行ったとか、数日やって終わらせる量の庭の草刈りを一日でやったとかいう異常な労働量の噂も雪人のことを目立たせていた。
現に、雪人のことを期待の新人として注目している冒険者も多い。
「まあ確かにそれなりに腕は立つはずだと思うんだが……流石に今日何の準備もしないで受けるっていうのもちょっとな。後で用事もあるし」
「それはそうか。なら今日の内に、調査のパーティーで一緒に組んでくれそうな奴を探しておくのはどうだ」
「冗談だろ? 俺の場合パーティー組むよりも普通にソロで隠密行動した方が生還率高い。第一、まともに会話できる自信がない」
「ダメな自信だな」
言葉通りにギルドに所属するこの町にいるパーティーのことが書かれた用紙を出そうとしてきたクルメを押しとどめて、ソロでやることを伝えておく。人のしがらみやら秘匿情報の扱いやらがとてつもなく面倒なのでどうせソロ以外でやる気もない。
第一、自分の特性は他の人物と比べても、とてもじゃないが集団行動向きではなかった。
試してみたいイータの大技も結構あるんだし――――と頭の中でぐるぐるとソロの理由を思い浮かべながら、クルメ君に「依頼確認ありがとう」と別れを告げ、ギルドの外に出る。突然、暇になってしまった今日の午後。まあ大体は予想がついていたが一体どうしようかと頭を捻る。
「どうしようか……暇になっちまった。久しぶりに昼寝でもするかな」
「ねえねえ、雪人暇になったの?」
「遊んで遊んで」
「あ? やだよ面倒。というかなんでついてきてんだ?」
道を歩いていると、後ろに先ほどの六人の子供がついてきていた。ピーチクパーチク五月蠅い。
「え、だって暇なんでしょう?」
「なら僕たちと遊んでくれるかと思って」
「駄目?」
「駄目に決まってるだろ。もともと期限付きでお前らの子守を引き受けたのはあれが仕事中に暇があれば面倒を見てほしい依頼だったからだ。世の中全てギブアンドテイク。お前らももうそろそろ七歳か八歳かそんな年齢になるんだろ。社会の仕組みがどうなってるかも覚えておけ」
「え~違うよ~。物事全て助け合いの精神だよ」
「俺が育った社会は基本的にやられたくないことを相手にするな、ギブアンドテイク、筋を通せが最大宗派だったんだ。ほれ、諦めろ」
「でも雪人この間「郷に入っては郷に従え」って言ってたよ」
「それはそれ、これはこれだ」
代わる代わる飛んでくる子供の質問を適当に流して、先ほど出かけてくるといった道場の方に戻っていく。早々に帰るのも何か仕事を探してない様に見えて何となく嫌な気分になるが、今から図書館に行っても子供に群がられて司書に怒られるのが目に見えている。ここにいる半分は流術の道場に来ている子供なので、子供の面倒見のいいシャルクにすべて任せることにした。
かといっていきなり頼むというのも問題がある。面倒を任せる手土産にリンゴみたいな見た目の果物を四個ほど買っておく。
あとは暇つぶしに作ったけん玉を両手で同時に行いながら、人通りの少ない道を選んで歩いていく。後ろには、けん玉を使う雪人の姿をいいなあと見ながら歩く子供たちがついてきているが気にしない。
しばらく歩いて、黄色く変色した竹でできた道場を囲む柵が見えてきた。出来れば子供たちが帰ってないかな~とか後ろを見ると、なんかこちらを効果音がつきそうなくらいにキラキラした瞳で見てきている。気持ち悪い。
「そんな目をしてどうした?」
「「「「「それやってみたい!!!」」」」
何となく解答は予想がついていたので作った六つのけん玉をポイッと投げといた。これでさっさと帰ってくんないかなと思ったが、やっぱりついてくる。
シャルクになんて言って頼もうかというかなんで俺が頼まないといけなくなってるんだろうと、そもそもの疑問に立ち返りながら、道場入口に入り踏み石の置いてある玄関の前に立つ。
「ただいま。仕事なかったんで戻ってきた」
玄関の引き戸を開け中を覗くと、廊下の向こうの方にごつい男が二人、白の道着に白いエプロンを着けて真っ白で格好を統一したシャルクを囲んで口々に何かを言っている。
「ですから、森からの来訪者はまた後で帰ってくると……」
「本当か? 匿っているんじゃないだろうな? 猫系の獣人族は信用ならんからな」
「そもそも内弟子に過ぎない小娘が、儂らを道場の師範のところにすら案内せんとは些か礼を失する行動ではないか」
云々かんぬんシャルクを罵倒している二人。いきなり適当なことで難癖をつけてから、そのまま女性をお持ち帰りして手籠めにするナンパかつ下衆な男と同じ気配を感じる。
そこで雪人は振り返って、一番近くにいた少年に声を掛ける。
「おい。コムだったか? ちょっとけん玉返せ。すごい技を見せてやる」
「え? よく分かんないけど……いいよ、はい」
けん玉を受け取った雪人は、その場で玉と持ち手の木と木がぶつかり合う音を立てながら横や下にある窪みに球を連続で入れていく技を披露する。
さっきから雪人のけん玉を真似しようとしてできていなかった子供の目から見れば、それは既に十分にすごい技だった。
「おお~」
「すげ~」
口々に雪人の手元を見ている子供たちの声に、後ろの廊下の先で竜人の男が二人こちらの様子を見に顔を出したことを漏れ出ている魔力で感知した。
ニヤリ、と人の悪い笑みを浮かべ、そのまま雪人は糸でつながれたけん玉の先の玉をぐるぐると高速で回し始める。
近くにいた子供たちは、雪人の持つけん玉の風切音に怯え、少しづつ距離をとる。
「さて、こっからが本当にすごい技の……ああ―――っと手が滑った」
そしてけん玉についている玉が丁度こちらに向かってくるタイミングで雪人は手を離した。微妙に声が棒読みになっていたのはご愛嬌。余談だが、雪人がけん玉を作るにあたり使った材料は、新陳代謝のように生え変わったイータの根っこの中でも特に太くて重い枝を削ったものである。
重さにして三キロは軽く存在するけん玉は雪人の後ろ、一直線に続く廊下の中空を飛んでいった。
そしてしばらくの間の後、カンッコカンッという音が響いて、ドサリと何かが倒れ込むような音がした。
「あ、わりい。技に失敗したわ。本当は今のように回転させてからけん玉の針に球を差すっていう技だったんだけどな。どうせだし、けん玉取りに行くついでに中に上がろうぜ」
「「「「「「……うん……」」」」」」
子供達の何か言いたげな微妙な返事を気にしないで、雪人は玄関で靴を脱ぐ。
そうして雪人と子供六人は、突然のけん玉襲来によって昏倒した二人の男を介抱するシャルクの待つ道場内へと入っていった。
ギルドの設定は正直言ってかなり適当に作ってます。後から矛盾したところは訂正の可能性もありますが、本編にそこまで関係ないので大丈夫かと。
一応、解体されなかった理由としては、当時すでに影響力が大きすぎたからですね。まあ、そこらへんが本当に大丈夫なのかということに関しては、経済とか政治とか素人なので、よく分かりませんが。
今は、「実力ある人達がたくさんいる超でっかいなんでも屋」的な場所になってます。




