表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
27/44

森の外には

一回書いた話が飛んで、また他の話として書き直しました。昨日の内に出す予定が遅れてすみません。あと、明日も無理そうです。

*少女の名前、変えました


「まあ、事情は大体わかった。俺が大破壊があった後の荒れた森の中にいるという事は魔力嵐に耐えられるだけのそれなりに強力な魔力持ちなはずなのに、俺から魔力を一切感じなかったから何らかの手札により魔樹を破壊した危険人物である可能性が高いと判断し、初任務というか初の森の中の探索という事もあって視野狭窄を引き起こしたまま襲い掛かってきた、そういう事だな?」

「ひょ、ひょうれす……」


 雪人はため息をつく。

 彼がつい先ほど捕まえた少女からイータさんの触手くすぐりという最凶拷問によって聞き出した情報を統合すると、まさに魔王のとばっちり酷過ぎるというところである。


 自分は魔王の魔法を受けた被害者なだけだというのに、それのせいで自分の実力を過大評価されて警戒までされるとは思ってもみなかった雪人である。

 いくら何でもここまで受難が続けば自分で自分を嘆いても誰も非難はすまいと落ち込んだが、ある意味では最初に自分よりも弱いこの少女が来てくれたことでそのことに気付いたのでそれでよかったのかもしれないと自分を慰めることにした。


 人生ポジティブシンキングが重要である。


 そう気持ちを切り替えると、頭を水気を飛ばす様にブルブルと振り、さっきからビクッ、ビクッと痙攣して蕩けたような表情をしている少女の方にしゃがみこむ。


「お~い。チビ娘。今から俺とこいつは森の外に行こうと思うけど、お前どうする?」

「はへぇ……?」


 焦点の合わない視線をこちらに向けてくる少女を見て、これ会話が通じないじゃないかとイータの方を睨む。睨まれた方は木人形の顔を明後日の方向に向けてみないふりである。

 手加減とか忘れてたなコイツ、と確信して、イータをジト目で見た後に、雪人は自分の手持ちにあったこの森特有の植物のツタを使って少女をおぶれるように背中に巻き付ける紐を作っていく。

 これは少女を森の外まで背負って運ぶためである。


 何故、態々(わざわざ)雪人がいきなり襲い掛かってきた少女を助けようと思ったのかというと、この少女が今んとこ最も利用できそうだったからだ。


 自分の存在を知られた以上、こっそりと旅人のフリをして竜人国の町に行くという手段をとっても、後から探しに来た人達が、この単独で黙ってここにきたおバカな少女を見つけ出して雪人のことを知る確率をゼロにすることは出来そうもなかったし、なら止めを刺しとくかと思っても、あのテンパりまくった様子を思い出すとどうしてもやる気がそがれた。何よりこの森の中に自分よりも幼い少女を魔力を吸いとってヘニャヘニャの状態のままにほっとくのは少々寝覚めが悪い。


 そういった思考にプラスして、どうせなら事情説明ついでに、今の勘違いで襲い掛かってきたことに罪悪感を感じさせて、後から保護者とかに助けてやったとかの恩も着せてこの国の一般常識とかも教えてもらおうと思った雪人である。


 元はといえば、雪人がイータを止めなかったせいで少女は動けないとかいう都合の悪いことは忘れて、ナチュラルに下衆な思考回路を作っていく。彼にとっては、襲ってきたのに命があるだけでも儲け物だと思ってほしいと考えているだけに、少女の扱いは地を這うように低い。


 適当におぶさり紐を作った雪人は、それで少女を背中に巻き付けていく。

 十代前半のまだ発展途上の肉体は見かけ同様恐ろしく軽く、百九十センチの身長と鍛え上げた雪人からすれば、あと一人担いでもいつもの動きを余裕で維持できるレベルである。

 そんな少女の軽さに何らかの感慨を抱くといった少年らしい葛藤もなく、雪人は今しがたまで少女を押さえ付けていた自分の友人の方に近づいていく。

 彼の意識は既に少女のことではなく、この後の出発に関しての事柄に向いていた。


「イータ。俺は森の外に行くけどお前も来るか?」


 この十日間の間に色々とイータと話しておいて、すでに了承を得ていたが念の為最後の確認をしたところ、イータは触手を伸ばして雪人の腰のあたりに差していたイータの鞘に刀身を納めていった。

 それを了承ととり、雪人は自分の荷物をまとめていたところに近づいていく。


 そして十分後、雪人とイータと少女一名は魔樹跡地のクレーターから出発した。

















「ふぎゃああああ!! 一体どういうことなのコレは!?!」

「あ? 正気に戻ったか」


 雪人は後ろから聞こえてきた声を聞いて、一瞬俺は何かを背負っていたっけという疑問を持ったが、そういやさっき襲ってきた猫耳獣人ひっ捕まえてたなあと思考の端に乗せながら、逃げようとした蟹の魔物の後ろ姿にイータを思いっ切りブン投げて触手を掴んで引き戻した。

 ついでに蟹以外の植物型でこっちの様子を窺っていた寄生樹もイータを振り回すことで叩き切っておく。

 その動きはかつて苦戦した相手へのぎこちなさは無く、非常に洗練された滑らかな動作だった。

 

「というか起きて早々、さっきの悲鳴は女子としてどうなんだ? 猫としてはありだと思うんだが」

「え? え? え?」


 後ろから聞こえてくる声は事態を全く理解できていないものである。だからといって丁寧に説明する気は雪人に無い。森の外ではなかなか強い魔物にも会えないだろうという予測の元、イータに美味しい魔物ごはんを提供するので忙しいのだ。


 外の世界には美味しい魔物ごはんがそんなに無いという事を伝えると「食い溜めしときたい」という意思表示が伝わり、それに応えた雪人が先ほどからハイペースで魔力ごはんを供給するといった流れだ。いつも食べたことの無い量に胸焼けを起こすとかもなく終始ご機嫌である。イータ木人形が雪人の肩で小躍りしているのでそれが分かる。


 そんなわけで雪人は後ろで少女が正気に戻った後も、気にかけることなく全力で森の中を疾走し、辻斬りのごとくすれ違った魔物も、見つけた魔物も、目についた魔物も片っ端からイータで切っていく。森の中に慣れた雪人の全力疾走は少女の全力の動きよりも早く、目まぐるしく変わる景色に少女は事態を把握できないまま恐怖に「ひゃあ!」と悲鳴をあげる。


「さっきから悲鳴あげてばかりで五月蠅いぞ。もっと静かにしろよ。こっちは色々と今忙しいんだから」

「あ、ごめんなさ……っていうかあんた何してんのよ!?」

「だからうるさい」


 ゴン、と頭を後ろにそらして頭突きされ、痛みに言葉を発せなくなった少女。雪人の鍛えた体はこんなところにまで影響を及ぼしているらしい。

 よし、静かになったと思い、取り敢えず名前を聞いていなかったので名前を聞く。


「お前名前は?」

「ううぅ……え? 今なんて言ったの?」

「だから名前」

「シャルクよ……ってだから! いったい何で私は……」

「よしシャルク。事情は後で説明するから今は黙ってろ。舌噛むぞ」


 雪人はシャルクにそう告げると、スライムに突き刺さって魔力を吸っていたイータを引っこ抜き、そのまま前進を開始した。


 上に下に右に左に。時に目の前の木の枝に跳び移り、時に魔物ごと血路を切り開く。遠くに見かけた魔物にはイータを投擲し、触手を掴んで引き寄せる一連の動作で魔物を狩っていく。そんな激しい雪人の三次元移動に、後ろに縛り付けられているシャルクは酔わない様にするだけで必死である。


 そして余裕が出てきた後に、前を行く雪人の霞む速度で振るわれる黒い魔剣が時折目の端に入り、雪人が森の中をすごい速度で進んでいくのと同時に魔物を切り捨てまくっていることに、魔物の残骸がそこいらにポイポイ落ちているのを見て気付いてしまった。


 雪人が一体何をして忙しいのかを理解した瞬間、シャルクの顔からさあっと血の気が引く。

 道中自分では勝てないと判断し森の中で極力戦闘を避けた魔物に向かって一直線に肉薄、次から次に敵を切り捨てしているのだ。とてもじゃないが平静ではいられない。


「ちょ、ちょっと止まれえぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!!」


 後ろ向きにすごい速さで動いている恐怖と片っ端から魔物を切りまくるという命のいくつあっても足りない蛮行に、シャルクは目に涙を浮かべながら叫ばずにはいられなかった。


 通常ならば、こんな時は後ろの少女の不安を解消するために何らかの声かけをするのが紳士たるものの務めである。

 だがしかし、そんな優しさに縁がないのがこの雪人。


「やだよ。時間かかるじゃん」


 それでも必要最小限、言葉を返したのはシャルクに対する気遣いか。

 結果としてシャルクと名乗る少女は雪人の背中というスピード狂も真っ青な特等席に、雪人が森を出るまで強制的に縛り付けられた。


















「くそっ迂闊だった……あの子がここまで追い詰められていたのに気付かなかったとは……できれば無事でいてくれよ……」


 魔の森、シュール・ローム入口付近となる草薮沿いに、カシャという名の一人の妙齢の女性が苦い表情をして立ち尽くしていた。

 

 伸ばした黄色のまっすぐな長髪に血を連想するかのような赤い瞳、強気に吊り上がる大きな瞳と小さな鼻、朱色の唇を顔の小さなパーツをそれぞれ細かい配慮と熟慮の末に顔の上に配置したような極上の美人といっても差支えない長身の女性。


 そんな彼女は今、魔物除けの香草を燻してその煙を全身に染み込ませている最中だ。この作業をしなくては道中魔物に囲まれる危険が大きく、暴走した弟子を助けにいけないと分かっている。


 だが、そんな理屈が焦る心の内をどうにかしてくれるわけでは無く、今も焦燥に身を焦がれた女性の腕は無駄に武装を確認し、龍の試練を乗り越えた竜人族の証拠である彼女の長くて細い尻尾は左右にひっきりなしに揺れている。


 自分が町の村長から、複数の冒険者や流派の実力者とともに最近魔力の荒れている森の異変の調査に任じられた時にはまさかこんなことになるとは思ってもいなかった。


 自分が古い友人であり、戦友である、今は獣人族の貴族であるシャルリムという女性から一定期間面倒を見てほしいといわれて預けられた弟子が、そのまま暴走して森の中に入っていったことに気付いたのが今日の朝。


 昨日の午前に受け取った町の上役の依頼の手紙を机の上に置きっぱなしにして買い物に出かけたのが悪かったのかもしれない。その手紙を置いといたら何を勘違いしたのか「新しい修行ですね!! 行ってきます!!」と書いた手紙一つを机に残して自分の預かっていた獣人の内弟子は単身森の奥に入り込んでいったらしい。

 

 宛名違うだろうとか内容に「他の冒険者と一緒に」って書いてあるとか色々突っ込みたいところがあったが、基本的に思い込んだら即行動のあの猪突猛進娘にはそんなことは目に入らず、とある事情で急いで結果を出すことにこだわっていた内弟子の目には「森の中を調査しろ」という一文のみが目に入ったのだろう。いつも強気で時々妙に抜けている態度をとる自分の弟子ならばやりかねない。


 しかも運悪く、自分がそれに気づいたのは町の腹黒長老連中との会談があった後に疲れ切って眠り込んだ翌日の朝だった。恐らくは前日の昼前にはもういなくなっていたことを考えると、もうすでに森の中に入っているだろう。


 誰かに援軍を頼もうかと思ったが、そもそもが危険性の調査のために自分は呼び出しを喰らっていたのである事を考えると、わざわざそんな危険な状態の森に救助という危険任務を遂行できる人物に心当たりがない。というか、自分の知り合いの実力者は今のとこ同じ町にいないか、対立している流派のライバルのみである。そもそも自分がマイナーな流派だったせいで皆自分に非協力的で、援軍を頼める余地も無かった。


 人望が少ないことに気付いた時は少々落ち込みたかったが、そんな暇があるわけもない。さっさと暴走した内弟子を助けに行くために森の中に突入する準備をして町を飛び出した。


 幸いにして、彼女の弟子は戦いに関してのみは抜群のセンスを持っている。そんな弟子であったならば魔物との実力差を測り、魔物に気付かれない様に行動するくらいはお茶の子さいさいだろう。


 後は弟子の体力が尽きる前に自分が助けに行けるかどうかだ。


 そして今、自分は森の中にようやく侵入する準備もできたので突入しようかと思ったのだが……

 

「何かこっちに近づいてくるな……小さいのは多分内の弟子だが大きい方は一体なんだ……? こんな魔力滅多に感じたことないぞ?」


 二つの魔力体がこちらに近づいてくるのを感知。一つは魔力が普通よりも少ないので獣人の弟子だろうと予測がつくが、もう一つの馬鹿げた魔力は一体何者なのか判別がつかない。彼女のそれなりに豊富な戦闘経験でもここまでの魔力を持った者はそうそういなかった。一緒にこちらに向かっているので、警戒心から自分の武器である水晶棍「センショウ」を両手に構える。

 

 もしかしたら、弟子が何か大きな魔物と戦闘になり、勝てないと思った弟子がそのまま相手の背中に何とか取り付きここまで逃げてきたのかもしれない。取り敢えずそう考えればこの妙な状況も説明できる。


 とは言え彼女はもともと脳筋なので、そんな難しいことは考えず、向かってくるなら警戒しておくというだけの考えだったが。


 警戒心を引き上げていると、森の奥の方から何か叫び声のような声が聞こえてくる。

 いや、叫び声というよりも言い争いのような声というべきか。


「あんた正気なの!? 全力で走りながら魔物相手に連戦続きなんて、どこの無謀でもやらないわよ!」

「生きてるんだし別にいいじゃないか。第一、この程度誰でもできるだろ」

「冗談言わないでよ! こんな馬鹿げた無謀を誰でもできるんだったら、こっそり隠れて森の中を動いた私の苦労は一体何だったのよ! 返してよ! 私の努力!」

「知るか! というかさっきからお前俺に背負われているくせに態度でかすぎだろ!?」

「いきなり背負われて、森の中を説明もなしに失踪されたら、誰だって態度なんか気にしちゃいられないわよ…ってあれ何!? なんか後ろから来てる!!」

「いや普通、そこは萎縮して話せなくなるところだと思うんだが……やっぱり子供ってわかんないな。あ、後ろから来てるのはただの蜘蛛だ、気にするな」

「いやただのっていう大きさと数じゃないんだけど!!」


 妙に切迫した声はいつも訓練の時に追い詰められた弟子が出す慌てた声によく似ている。というか本人だ。

 そして聞こえてくるもう一つの声には聞き覚えがないが、会話の様子を窺うに別に敵というわけでは無いらしい。

 そのことに少々安堵して少しだけ警戒心を緩めると、二つの魔力が来ている方面からいくつかの生き物が蠢きながらこちらに向かってきているのが分かり、慌てて警戒しなおす。


 魔物とか引き連れてきているとかどういうつもりだ、と心の中で悪態をついていると、森の中から背中に自分の弟子を巻き付けた男が飛び出してきた。

 

 服装は大陸中を回った自分にしても見たことがない代物であり、服飾に詳しくないカシャの目にすらあれは奇抜すぎると怪しく映る。森の中という障害物が多い中で袖のあるゆったりした服を着ていることから余程頭が緩いのかと思ったが、動きを見るとそこいらの木に服を引っ掛ける様子もない。歩き方も重心が一定の範囲に定まっており相当な実力であることは間違いない。だが、自分でさえ魔力を感じることができないという事実に疑念を感じてカシャは眉を顰める。


 それに右手に持っている黒い剣―――あれは確か刀という一部の獣人国で発祥した武器だったはずだが―――からは先ほどカシャの感じた相当量の魔力が漂ってきている。間違いなくあれは魔剣の一種だろう。


 これだけの魔剣を持ちながら本人からは魔力を一滴も感じることのできない目の前の男は何者なのか。後ろに自分の弟子を背負っていることについても色々と尋ねたいことがいっぱいで、何から聞けばいいのかカシャが困惑するうちに、その男の方から話しかけてきた。


「人の気配があったからとりあえずこっちにきたんだが……その視線を見る限り、あんたはこいつの関係者で間違いないらしいな。今から後ろの奴を仕留めるからちょっと預かっててくれ」


 突然の言葉共に、男は背中に括り付けていた弟子と自分を結ぶ紐を右手の刀で断ち、弟子が地に落ちる前にシュンッと霞む勢いで閃かせた左手で首根っこを引っ掴みこっちに投げて寄越した。反射的に受け取った弟子の体は予想以上に軽く、その重さに体勢が揺れることも無かったが、その瞬間に男に抱いていた疑問の方はきれいさっぱり忘れてしまう。


 カシャが声をかけようと思いなおしたときは既に、森の飛び出てきた方にスタスタ歩いて行ってしまっていた。


「おい、そっちには……」


 魔物が来てる。そうつづけようとした言葉はそのまま形をとることは無かった。

 

 突然森の中から飛び出してくる影。その正体は「針差しモグラ」という魔物で、小さな体をばねのように縮めて瞬発力を極め切った視認すら難しい速度で頭についた角を向けた突進をしてくることでこの森の中に住んでいる魔獣種の中でも一、二を争う厄介さを誇る魔獣。まず真正面から突進を受ければ回避もできずに突き刺されて、そのまま探索不可能なダメージを受けた人物の数も一人や二人ではない。


 それが同時に三匹突進してくる。しかもタイミングに誤差をつけて、こちらが避けられない様に用意周到に。カシャは不意の一撃に動きを止める。


 しかし男はまるで襲撃のタイミングが分かっていたかのように、ゆっくりにも見える速度で刀を突進の軌道上に置く。その動きに無用な力は籠められておらず、あまりに洗練され無駄を排した型であったために動きがゆっくりに見えることに気付いたときには男は三匹の針刺しモグラを真っ二つにしていた後だ。


 そのままスタスタとした歩みを止めずに森の方に近づいていく。そして再び森の暗がりから何か白い糸が飛んできたのを片手で刀を縦に構え自分の左右に両断し、向かってくる糸が途切れた途端に一切の躊躇いなく持っていた魔刀を前方にブン投げた。


 ザシュッというあっけない音とともに、何か水気を含んだものに武器が突き刺さった音がする。そのまま男が腕を後ろにグイッと引くと、恐らくは巨大な蜘蛛型の魔物に刺さったであろう刀が男の手に手品のようにスルリと戻ってくる。


 自分が今しがた「一点で向かってくる敵を切る」という達人技を披露したにもかかわらず、全くそのことを鼻にもかけない様子で戻ってくる歩調はゆっくりとしたものだ。だが、今しがた竜人族の中でも試練を超えたカシャにすら魔力で強化した様子も悟らせない技量を見る限りでは相当な実力者だろう。


「君は一体……?」


 これだけの実力で、これだけ奇抜な服装をしていた実力者の情報をカシャは知らない。未知の実力者相手に呆然とした様子で尋ねるカシャに対し、男はポリポリと困惑したように頭をかいて答えを濁すのだった。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ