プロローグ
多分不定期になっちゃいます。最初に謝罪を。
一度やってみたかった大型投稿。しかし、反省はしていない。
知りたいと思いすぎるのは時に罪だ。綾辻雪人は人生の幼児期にそんな人生の心理の一つを学んでいた。
幼児期の自分は今から見ても、相当に不気味な子供だったと思う。
見た目、ではない。
中身が、である。
普通、人との付き合いの中でどうしても相手に踏み込まれたくない一線というのがどんな個人にも存在する。
そこらへんを、生来の好奇心という感情が強かったが故か、はたまた相手の一線に気付かなかったが故か、どちらの理由もあって当時の俺は、他者の知られたく無い内面に深く入り過ぎようと、相手のことを知ろうとし過ぎた。
つまり、自分に遠慮という加減が効かなかった。
相手はそれを嫌がり、自然俺は周囲から孤立する。
しばらくすれば、身の回りから人の姿は無くなっていった。
それも必然。人は自分の嫌なものに近づこうとはしないから。
そんなわけで周囲の人間から孤立した俺は、小学校に上がったころには虐めを受けた。
まあ、子供の時代に集団から孤立していた人物がいればそれを虐めようという輩はどこにでもいるもので、そんな集団の中に属していた自分の運がなかったという事でもある。
とは言え、悪いことばかりだったわけでもない。
集団の中で排斥を受けたことで、自分の本質、なんでも知りたい好奇心や、かつての自分が相手の内面に深く入りすぎて失敗したという事が分かったのだから。
虐めを受ける中でそんな風に自分を自覚し、自業自得なこととはいえ、人についての好奇心から排斥を受けた経験から人について知ろうとすることにトラウマが芽生えた俺は、自然と興味を人間以外のものに向けた。
何故、水は高いところから低いところに落ちるのか。
世界ではどんな歴史の流れがあるのか。
この世にはどんな美しい景色があるのか。
幸いにして世の中には無限の不思議があり、集団から排斥を受けた俺は一目散にそう言った不思議に飛びついた。
そうしていつかは世界を自分の目で見てみたいと思うようになった。
しかし当時、暴走した過剰な好奇心から、本などのメディアからそれなりに知識を蓄えていた俺は、たとえそんなことを考えても今の周囲から排斥を受ける状況では実現することは難しいという事が十分に理解できた。
なにせ親ですら、自分に干渉してこなかったのだ。
だからと言って解決しようにも、今の虐めは自分が半分くらい招いたような状況に近いし、そもそも先生も俺のことを忌避していた。
取り敢えず虐めをどうにかして耐え切るために、身体を鍛えて武器にするという概念の古武術を習って、周囲にばれないように加えられる攻撃に反撃。そんなこんなでいろいろありながらも撃退した後は、将来、自分の好奇心を満たす旅ができるように実力と知識の両方を継続的に蓄えていった。
そんなこんなで小学校も卒業し中学に上がった俺は、成長して多少の話術や我慢の術を覚えていたとはいえ、またかつての失敗をやらかさない自信もなかったので周囲の人間から距離をとることを選択。そもそも同じ小学高の人間が俺のことを忌避していたこともあって、新しい人間関係の中でも自分に関わってくるような人物はいなかった。
そんな風に人間不信なのか対人恐怖なのか分からない恐怖を覚えながらも、義務教育後に自己学習と労働を決めておいたり、親とそれを認めさせる交渉をしたりして、未来のビジョンは多少なりとも作っておいた。
そして、俺がその計画に沿って着実に努力し、中学三年生に学年が上がった最初の四月。新しいクラスも決まり、とうとう最後の一年か、と周りの無関心の中、自分の席に腰を落ち着け、新しく借りた本を片手に過ごしていると、突然周りの景色が白く強く発光する。
誰もかれもが意味の通らない叫び声を上げ、場は一気に混乱する。
悠久の時の流れにも感じられるような光の一瞬が過ぎ去った時、自分の周りに、いや自分がおよそ三十人ほどの生徒の集団の中に入ってどこか知らない、見たこともない石造りの場所に立っていた。
生徒の周りに立っているのはどこか不思議な中世のような服装をしている人々。
「お待ちしておりました勇者様方! ぜひとも我らをお救いください!」
これはこれで面倒なことになりそうだ。見慣れない風景の中に立っている自分を認めて雪人は冷静にそう分析した。