8:仲直り、する。
《リョウヤ視点》
「う、うぅぅぅ………」
激しい頭痛に呻き、俺は目覚めた。
目の前には温厚になった表情の彼女が居た。
今度こそは騙されねぇからな……!
サイダーで釣られた俺がバカだった!
だってしょうがないじゃん!
喉渇いてたんだから!
人間の欲求には耐えられないんだよ!
俺はしばし、天井を見つめ呆然としていた。
眼前から彼女が覗き込んでくる。
「なっ、なんだよ。
俺が気絶する前だったら、殴りかかってきたくせによ!」
「っごめん、ごめんってば!
許してピョン吉!」
「……………チッ」
否応無く俺はブチ切れていた。
こんなふざけたキャラになるんならまだ、殴りかかって来たほうが気持ちが良い。
「さっきの私は少しおかしかったんだってば!」
「んなの知らねぇよ」
「知ってよ!」
「嫌だよ」
「んもう!殴るよ!」
と彼女はネコパンチポーズをした。
「か、可愛い……」
「で、でしょ!?」
今再確認をすると俺は可愛い物が好きだ。
可愛いっていうのは萌え系だ。
ネコは好きだが、ネコミミは3倍好きだ。
そんな感じ。
通常?に戻った彼女と俺はしばし、普通のトークをした。
殴った事はチャラで。
それで話は終了した。
ただ、パンツの話をすると彼女の顔が紅潮したのは気のせいだと信じたい。
「それでさ、なんかいきなりバグが起こってさ!
78レベルのとこに墜落したんだよ!」
「そんなわけないじゃない!
あははっ、ありえない!
あ、でもそこで私に出会ったんだもんね?」
「凄い出会いだったなあれは!」
「下着見られたのに恥ずかしかったけど………」
何か小声で言ったらしい。
「ん?なんか言ったか?」
「んっ、ううん!なんでもない!」
可愛い……
これがヤンデレというものか。
ヤンは病みじゃなくヤンキーのヤンだったような気もするが、
デレは至極の極みだった。
なんでもない!の首のブンブンの振り方が凄い萌えた。
さすが俺は二次元オタク。
ゲームに恋してしまったようだ。
不意に、
「その……」
「ん?」
その瞬間―――。
『コンコンッ』
ドアがノックされる音が会話の中に乱入してきた。
多分さっきの惨事の事を聞きに来た宿主だろう。
どうせ怖い顔してぶっ壊れた床の修理代を請求してくるんだろう。
そんなの俺が稼いで払ってやるよ。
「お、俺が出るよ」
「―――――待って!」
「え?」
「私が出るよ!
新しい人がリスポーンしてることまだ伝えてないから!」
「お、おう。頼む。」
そして、俺のハーレム?MMO生活は今開いたのだった。
宿の扉と共に……。




