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80:打倒ダークエルフ

逃げる五人と追うダークエルフ。

攻防は決定していて、完全に鬼ごっこ状態だった。

後方から声が聞こえる。心臓にまで届きそうな、そんな声だった。

「コノママ逃ゲ回ッテイテモ無駄だ、カンネンシロ!」

どうやら降伏して自滅してもらいたいらしい。

MMOで戦わずして勝つ敵なんているのか……

そう思いながらも走る速度はゆるめなかった。魔王に取り付かれたであろうあのエルフは先ほどまで俺達に敵意なんかなかったのに。

今あるのは背中に向けられた殺意のみだった。攻略法は未だ、無い。

何をやってもスタイリッシュ回避をされてしまう。頼りだったカナのダガーも効きそうにない。

「…みんなまとめて攻撃してみたらどうなる?」

「……成功する見込みはありませんよ…!?」

「やってみるしか…ないわね」

珍しくアヤと気があった。

なんか言い難い一体感を感じた。


「――いいか…? 3、2、1、振り向けっ!」

振り向きざまにカナがダガーを投げる。すっかり油断していたダークエルフであったが、

身体を45度傾いただけでかわしてしまった。なんと拍子抜けな事か。

向こうへ飛んでゆく短剣をみやるとダークエルフはいやらしくニヤリと笑った。

もう止まってはいけない。ハクは初速上昇魔法を唱えた。アヤが飛び出す。アリアが長剣をフェンシングのように突き、そして横になぎ払う。

ダークエルフの意識は完全に突撃組に向かっていた。

リョウヤがあの宝剣のスキルを唱える。詠唱時間は4秒だ。

――どうか、どうか耐え切ってくれ……!

アヤは後方にいるリョウヤに近づけまいと大剣を横なぎ払い、縦振り下ろし、振り回しを繰り返す。

大剣だけでもエルフにとっては簡単にすり抜けられてしまう、それを防ぐ為にアリアが奮闘してくれている。

多段ヒットを狙えるスキルを多用し、ハクのMP回復魔法を利用する。

「――詠唱が終わった! みんな! 避けてくれ!」

二人が横に跳ぶ。

超大型の魔方陣を目の当たりにし、ダークエルフの目が見開かれる。

その瞬間、魔方陣から無数のダガーが撃ちだされた。と同時にリョウヤのMPが減少し始める。背後にはハクがいるため、あまり躊躇せずにダガーを撃ちまくる。

数えれば、一秒間に25本は撃っていた。

ダークエルフも負けず左右へ飛びじさりながら、一回、二回、高いバック転をしてみせた。

敵だというのにまさに美しかった。

リョウヤのダガーは必死に彼女の姿を追うが、一本も当たらずかわされてしまう。

そして三回目のバック転の瞬間、彼女の身体が大きく縦に飛んだ。

視線を追い、魔方陣がエルフのところを向いた途端、MPが切れた。

もうハクのMP回復魔法も使った後で、再使用禁止時間に入ってしまったようだ。

高く飛んだ彼女を攻撃するものはもはや誰もいない。

彼女は背に一本だけあった先が真っ赤に輝く矢を取り出し、弓にかけた。

ギギギギギと音を出し、大きく引き絞る。そして、五人のところへ撃ちだした。

抵抗することは出来なかった。

速過ぎて。

五人には直接当てる事はせず、傍の地面を狙ったようだ。

どうにかして、進み続ける矢を阻止しようとしたが無駄だった。

そして地面に着弾する。

その瞬間。

矢が大爆発を起こした。

火薬は致死量で足を吹き飛ばすほどの威力を持つ地雷のように。

ドーム型の爆風を描きながら五人を宙へ吹き飛ばした。そしてダークエルフは一人をターゲットにして、空中で身動きが取れないカナに飛び蹴りを喰らわせた。

六階の情報を糧にしたのか、一番敵にすると厄介なのはカナだと判断したらしい。

もちろん身動きが取れない他の四人は助ける事すら出来なかった。

今まで空中で漂っていたカナは一瞬で地面へ叩きつけられた。

「カ、カナ!!?」

カナのHPは残り20%を切っていた。

ダークエルフはカナになおも近づいていく。

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