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76:六階、セーフルーム

ゴン!

音が鳴り、天井に現れたゲートから落下したリョウヤ(顔面から)。

他のメンバーはもう集まっていた。円を描くように座り会議をしていた四人は同時に肩を震わせ驚いた。

なぜなら顔をあげたリョウヤの表情は大事なものでも引っこ抜かれたかのような青ざめた表情だったからだ。目の周りにはホロリと涙が浮かんでいる。

「どっ、どうしたんですか……、チャイニーズマフィアに間違えて殺されそうになった一般人みたいな顔してますよ………」

さすがにその表現は苦しいだろ、とアヤは突っ込みたくなったが黙っておいた。

リョウヤの目が泳いでいる。まるで救世主を探しているようだ。

すると彼の視線は定まり、カナに注がれた。

急に注視された彼女は同様する。我を失ったかのようにカナを舐めまわし見る姿は異様だった。

突然。

産卵期の鮭が川を上るかのようにリョウヤは身体を投げ出してカナに抱きついた。

「ひゃあ!?」

当然カナはびっくりしてリョウヤを引き剥がそうとする。だが、掴む力が強すぎてなかなか離れない。

三人がかりでやっと引き離す事に成功した。途端、リョウヤの目に正気が蘇る。

「………ハッ! 俺は何を……」

頬を赤らめモジモジしているカナを見た途端、彼は。




「――いえいえ、別にいいんですよ、気にしていませんし」

カナはリョウヤを助けるように両手をぶんぶん振った。

急に土下座のようなそうでない懺悔を始めた彼を一同が鎮めるのに五分かかった。

「ほんっとうにごめん! 俺どうかしてた……なんか今日おかしいよな…」

「全然大丈夫です! それよりワープ先の報告してくれたほうが嬉しいですし!」

急に抱きつかれて嬉しかったなんて口が裂けても言えない、とカナは思った。

その言葉を聞いたリョウヤは表情を消し、死んだような顔つきに再度なった。

「いや………思い出したくないんだ……なるべく聞かないでくれよ……」

「はっ、はい」

急激に冷えた空気に明かりが差し込んだ。

「それより今は六階だ! ようやく中ボスのところまで辿り着く事が出来たんだ! さあ祝おう! 酒を飲もう!」

セーフルームに居る限り安全なため、休息は十分に取れる。その情報を知っていたアヤは威勢よくそう叫んだ!

「アヤ……お酒なんてもってきてないよ……」

「おっと! そうだったな! ははは!」

頑張って場を明るくしようとするアヤにリョウヤは少し見直した。

「そ、そうだな! 気合もっかいいれて、中ボスも撃破できるようにしないとな!」

「それでそのボスはどこに…?」

「セーフルームにある扉が入り口のようです」

無意味に頑丈な鉄の扉は冷徹かつ黒光りしていた。急に不安が立ち上る。

パーティメンバーの様子をみやると、全員体力は満タンだったので問題なさそうだ。

休む暇を入れてしまうと、かえって気が滅入ってしまうので間髪入れずにすぐ行こう。

これがアヤの考えだった。

彼女を先頭に歩きだす一同。傷心気味のリョウヤは余計気持ちを上げていかなくてはならない。

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