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72:ハク&カナ マグマ探索

「うーん……探索ですか…」

マグマと時折噴き出す熱風から避けながら歩く二人。

目が覚めて少し歩いたところに瓦版のような形の看板を見つけ、

それを覗き見たところ、『探索し、扉開放キーを三つ見つけろ』

がミッションとなってしまった。

「正直行動的じゃない私達としては嬉しいですよねっ、ハクさん」

「……まあそうだな……」

ハクはカナの目線とは反対に向こうを見つめている。

「あそこに一つキーがあるんだが……」

「えっ!? じゃあ迷わず取りに行きましょう!」

「あんたの頭は空っぽか。

キーはマグマに囲まれて離島状態だ、多分周囲のモンスター達を排除するか他のキーを取って何かしらのイベントが起こった時に回収するかだな」

「じゃあ私は前者にかけます、まずはモンスター達を排除しましょう」

都合よくモンスターの数は少ないですし。

とカナは嬉しそうに言った。

「正直僕は攻撃には向いていないし…ダガーで簡単に排除出来るのなら君に丸任せするが大丈夫か?」

「援護くらいはお願いしますよっ」

「それは任せてくれ」

目標はずんぐりしたダンゴ虫のような龍。

攻撃方法は丸まって超高速移動かつ突進を繰り返す。

近距離戦には大活躍だそうで、このモンスターのおかげで簡単なボスも討伐できなかったという筋肉プレーヤーもいる。

遠距離専門のカナは問題無しで討伐出来そうだ。


「ふーっ、なかなか手ごわかったですね……」

「君はただモンスターの範囲外からパターン入れしてダガーを投げ続けただけだろう。

しかもコスト0のダガーを」

「え、へへ……節約したいんですよなるべく……」

二人が談笑しているとマグマの底から鉄の橋が現れた。

マグマはゆったりと水のように湖に落下していく。

「一個めゲットだぜ!」

「……どうした」

「なんか雰囲気付けましょうよ! 盛り上がってピクニック感覚で! ほら! ほらほら!」

カナがハクをからかおうとしていたらハクは遠くへ歩いていってしまった。

彼の背中が遠ざかる。

「待って下さいよ~!」


なかなか追いつかない。

ずっと背中を追い続けていたせいかたまにマグマだまりに落下しそうで冷や冷やした。

もう少し走り続けた後、彼の長身が一度止まった。

「どうしたんです……か…!?」

ハクは真下を見つめていた。

険しい表情で。

気づくと二人は切り立った崖に立っていた。

これ以上人の重量が重なると崩れてもおかしくない状況になっている。

「ハクさん……? 何を見てるんですか…?」

ハクがうつ伏せになり落ちない程度に真下を見下ろしている。

カナもハクの隣に同じ格好をした。

するとだ。

「あっ、あそこ……」

「キー二つ目だな」

「周囲に敵影はいなさそうですね…」

「そうだが……どこの山にも無い傾斜だな…」

崖下の傾斜は激しく、

最短で降りるには落下ダメージで体力を半分削るくらい覚悟しなくてはならない程だ。

「ひぇぇ………」

「ここは僕が行く、君は指を咥えてみていろ」

「うぎぎー! いつもと変わらない突っかかるような態度ですねっ!? ですけどっ、私だって今日こそは黙ってられません、指を咥えるのでなく、飴を咥えて待っていたいと思います」

「…………じゃあ飴で」

「はい!」

なんだこの引き止めるかと思ったら意外と自己中心的だったっていう展開は。

ハクはこの答えに少々驚いたが、最初話したとおりこのキーを制覇する事を決めた。

キーへのルートは一通りでトラップなどを回避しながら出口に辿り着くような作りだ。

前方にはパズルボードのような物が見受けられて少し楽しみなハクであった。

「ハクさーん! 必ず越えなければならない難所は四つです! 方法はこちらからでは分からないので、そちらで攻略お願いします!」

ちゃんとプリンはショートカットに設定しておいて下さいよ!?

とカナが一言追加した。

「分かってる……」

ハクは小声でそう呟いた。

数歩歩くと一つの関門に辿り着く。

左右はマグマの川が煮えたぎりながら流れてゆく。

もし足を踏み外したりしたら怪我では済まない。

そうならないためにもハクは保険として必要な装備達は倉庫に預けてきた。

失くしても項垂れる事は無い。

恐れる物は(多分)無くなった。

この階を制覇し、他のメンバーと合流することだけを考えるんだ。

ハクはそう自分に言い聞かせた。

一つの関門は炎を吐き出すパイプ三本。

どれも規則的に動いている。

一本のパイプに噴き出す用の穴は3つ付けられていて、

暗記するにはハクでも5分はかかる。

そこまで時間をロスするわけにもいかない。

迷いを消し、勇気を奮い立たせ、ハクは目の前のパイプに全精力をつぎ込んだ。

まずパイプの攻撃方法は三回周期になっていて、

一回目が、1右・1左、3右

二回目が、1真ん中・2真ん中・2左

三回目が、3左・3真ん中・3右

である。

難しいのが、パイプの炎の周期が早く、しかも発射口同士の幅が広い。

つまり一度に右に方向転換して1パイプ分移動するという事は不可能なのだ。

単調に見えて、中々作られたパズルである。

これをしかも一週間で作ってしまうのだからもっと尊敬だ。

ハクは密かに天才的な運営を褒めた。

「分かった…!」

もう少し難しいのかと思いきや、意外とスムーズに制覇できた。

1真ん中にまず移動し、2右に待機しながら三回目を待つ。

そのまま真ん中に移動し、二回目で最後のパイプを抜ける。

「意外と簡単だったな」

ハクは勝利と運営に一回り勝ったような気がして、ほくそ笑んだ。


遠くから見える二つ目の関門はパズル要素は見当たらない。

足場とある程度登れるような置石がある。

「ロッククライミング…」

ハクは一人呟いて幻滅した。

彼は全くの文化系であった。

昔長期休日期間に一度たりとも外に出歩いた事が無く、自室で勉強をしていたら一週間経っていたという武勇伝? を持つ男だ。

スキルを使ってズルをしようともハクはそもそもアクティブスキルを組み込んでいないし、

そんな裏技は許されていない。

――ここは純粋に力技でやるしかない…か

ハクは迷わず目の前の石に足をかけた。

下の方は慣れさせるために石の間隔が狭く楽だが……

彼の額から汗が一滴、二滴。

マグマのせいか身体が火照って仕方がない。

手を伸ばし、石を掴み、足場を固定する。

その単調作業をただ繰り返していたら丁度真ん中に辿り着いていた。

何かの意図なのかハクの進行方向にぽっかりと石が無くなっている。

横に移動しなければ、とハクは右を見るが。

右、左とも、石が異常に少なかった。

飛び移るのはリスクが高すぎる――。

高い所は別段苦手ではないがさすがの彼も焦り始めていた。

その時だった。

――ザクッ、ザクッ、

何かがハクの頭上に刺さり続けている。

まさか、と思い上を見ると。

数本のダガーがハクに道を示していた。

カナのほうを見やると、

――ぐっ

とガッツポーズだけをしていた。

「ありがとう。カナ」

ハクは心をときめかせながら新たな足場となったダガーを使って登り続ける。

――だから一人ではなく二人でワープされたのか

合点した。


カナの最高のサポートのおかげで二つ目のキーを手に入れた。

ちなみに最後まで元々の足場の石はとんでもなく少なかった。

絶対登りきれないように作られていたようだ。

三つ目の道からは少し道幅が大きくなってきたのでハクは手を振りこちらへ来いとだけジェスチャーした。

合流すると、カナは、

「どうです? 私のサポートは世界一ですよね!?」

自信満々にそう言った。

「………ああ」

ハクは変わらずぶっきらぼうに答えたのだが。

道を止まらず進んでいくと。

あの『扉』が二人を出迎えていた。

「……あれ? まだキーは二つ目なんですが……」

「どこかで取り忘れたか…? くそっ」

一応念のために調べてみます、とカナが近づくと。

扉がバンッと開いた。

何かをしたというわけでもなく。

「「!?」」

扉の中には2メートルほど空間があり、ゲートの前に、

ポツンと置かれた『キーが一つ』。

「「………」」

あまりの適当さに拍子抜けした。

「ま、まあ実質キーは二つだったって事ですよね!?」

「さすがTKHだ……作り込み具合が素晴らしい……(皮肉)」

「まあ一件落着です! 三人と合流しましょう!」

カナが明るく言い、

二人はゲートに手を触れたのだった。

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