59:やっと再開プリン作り
「――つい暖かくって寝ちゃいました~」
キッチンからズレてロビーに着席する四人。
ほわわんとする少女。
「何しろ布団に包まっていたからな…当然だろうな……」
――しかもよくゲームの中で熟睡できるな…俺はそっちに感心した……
まだ眠いように目を擦ると彼女は机に突っ伏した。
「おい寝るな!」
「今からプリンを作りたいんだが……」
と俺はカナをチラッと見る。
その瞬間、カナはがばっと顔をあげ、
「プリン!」
と叫んだ。
どうも女子はプリンを好むらしい。
――いや決して餌付けなんてやましい事は考えてないぞ……
嬉しそうにピョンピョンはねるカナ。
「……やったぞ……、いいやダメだ…このままじゃパンツが…げふんげふん」
「リョウヤさん!ちゃんと『お金』回収して来てくれたんですね!ありがとうございます!」
と抱きつこうとしてくる。
リョウヤも両手を伸ばし、ついでに鼻の下も伸ばしながら抱きしめるポーズを作る。
だが。
「この男は鶏なんか倒してないわよ、倒したのは、あ・た・し!」
「おやこの方は…」
カナが顎に手をやって首を傾げている姿は実に『プリティ』であった。
それを見たアヤが説明する。
「こちらはアリアだ。鶏の討伐を完遂してくれ、カラメルソース作りを手伝ってくれている!」
説明している間、アヤはとても嬉しそうな表情をしていた。
「そうでしたか!よろしくお願いします!」
「う、うん、よろしく………」
「…………」
黙りこくっているリョウヤにカナの睨みが飛ぶ。
「…………」
――何か言ってくれ…罵声を浴びた方がまだ良い……。
カナはぷいっと視線をリョウヤからそらし、女性陣にはしゃいだ声で言った。
「では、皆さんでカラメル作りをしましょう!
『カラメル作って絡める環境にしよう!』ですねっ!」
――駄洒落を言うカナも可愛い…
とリョウヤは締まりの無い表情を見せた。
そんな状態に気持ち悪がりながらアリアが、
「じゃあ、リョウヤはプリン本体を頼むね」
と適任を任された。
一応怠慢する訳にはいかないので(そもそも金すらも一人で調達出来ていない)
リョウヤは袖をまくった。
「――じゃ、始めちゃいましょう!」
また新しく作りましょうね!とカナは同じ材料を取り出した。
「…面目ない……」
「いえっ、失敗は誰にでもあるものです!しかも今回は三人で作るんですからミスはほとんどないと思いますよっ!」
大事なのは諦めない事です! とカナはガッツポーズを決めた。
そして俺の方は……。
「一応試作品として三個分作る、それでいいよな!」
「はい!ちゃんとミスなく作って下さいね~」
――三個分だと……
「牛乳250ミリリットル、卵二個、牛乳大3か……」
――まあ材料には全く問題無いし料理の腕もある程度あるんだが……
プリンの味はカラメルだ! それが美味しくなきゃ『ん~まあまあ』という皮肉な感想を持たれてしまう! それだけは絶対にダメだ! なるべく速く作って手伝わないと……
どうせあの三人も 『レシピ見れば作れるでしょ』という30代OLのような危険な考えを持ち合わせている可能性は0では無い…っ!
どうにかして阻止する方法をこしらえなければ……
悩める少年とはこういう物だ。
不安でげっそりしながら、リョウヤはボウルに割った卵二個を流し込んだ。
二つの黄身が美味しそうに見えた。




