57:分からない物
「――あらあら、こんなに汚い料理の仕方しちゃって…!」
「…おいっ、やめろって…!」
背後の女子がアヤに向かって茶化し始めた。
リョウヤが急いで静止するものの、すでに後の祭り。
「なんだと…?誰だお前は…?」
「あはは、あは…こいつ俺の知り合いでさ、ちょっと今気分が悪いらしくて…!
気にすんなよ!」
一度火に油が注がれようとしていたが、リョウヤが一気に鎮火した。
その次に半ば強引に肩を掴んで二階の個室に二人共移動する。
はたから見ればお暑いカップルのようにも受け取れるが、被害を拡散しないためにもコレが一番大事な行動だと、リョウヤは思考した。
「―――何やってんのお前……!」
「べ、別になんでもいいでしょ!」
――呆れた。
「なんでもいいってなんだよ……」
「あと、そろそろ離してよ」
気がつくとまだリョウヤの両手は彼女の肩を鷲掴みにしていた。
「わ、わり…別にワザとじゃないからな」
「そんなの知ってるわよ」
――ですよねー。
ってか俺何言ってんだ、早くアヤとの関係を修復するために道徳を教えてやらないと…
「――アヤの事なんだが…」
「アヤってあの子ね、目がつり上がった怖いあの」
初対面で暴言を吐くお前の方が怖いなんて言えなかった。
「だって、なんかムカついたんだもん」
「お前は小学生か……」
呆れを通り越して何かに失望するリョウヤ。
そう思った時、彼は何かを思い出した。
「あ、そういえば名前聞いてなかったな」
「……誰の」
「お前に決まってんだろ……」
――こいつは俺に何を望んでいるのか……
「………アリアよ」
「分かった!よろしくなアリア!」
「ばっ、バカ!いきなり呼び捨てとか…!」
「ん…?ダメだったか?」
「だ、ダメじゃないし!ただちょっと……」
「はっきりと言ってくれ……」
「なんでもないからっ!」
――女性は、いつまで経っても分からない。