44:鶏との初コンタクト。
「ひいっ!?
ヤバイってアイツは!」
光線を放ち、周囲の岩を破壊する鶏を見た俺は、鶏の視線にひっからないよう、
近くにあった隠れるのに手ごろな岩に身を置いた。
もう少し近くでやつを確認してみると、かなりの事が分かった。
まず、やつは動きがずんぐりむっくりしている事。
飛ぶ瞬間のときは目を見張るほどではあったが、
地上での運動はあまり機能していないらしい。
移動するときは自分の足は直接使わず、
大きな羽をパタパタ動かしながら
数メートルをダルそうに移動するだけだ。
特別、移動には攻撃モーションは存在しないらしい。
その分、光線などが非常に脅威になるが。
「さすがにこれは…。1人じゃあ倒せないんじゃないか…?」
俺は小声で1人呟いた。
………ただ、このだだっ広い砂漠で。
助けてくれる仲間を探す事は不可能に近いだろう。
…でも、無駄に1人で特攻をして、無駄に死んで、
無駄に時間を潰すのも良い考えでは無い。
……………。
岩に隠れながら頭を垂らし、悶絶する俺。
その行動1つが命取りになるだろう。
この時までは鶏の行動範囲が『移動自由』という事を知らなかったからでもあるのかもしれない………。
俺は心を無にして、前方の砂だらけの景色を見やる。
どうやってヤツを攻略すべきか…!?
頭を2、3度掻き回し、また、前方を見やる。
その時だった。
背後にヌゥーッとした気配を感じたのだ。
後ろを見る勇気はなく、それは俺の影に重なる。
卵状の身体の先に、モヒカンヘアーのような髪型。
「コ…コケッ?」
そしてこの鳴き声。
俺を獲物か、そうじゃないかを判断しているんだろう。
ここで動かなければ、敵だと判断される。
ここで振り向いたとしても敵だと判断される。
つまり万事休す。ということだ。
―――鶏が俺に触れて判断しようとする前に…。
俺は首を180度動かした。
右手に剣を添えながら。
鶏の真っ黒な目と、俺の茶色がかった目の焦点が合う。
鶏が俺をターゲットした瞬間、
後ろに跳んだ。
一瞬で10メートルほどの距離がとられる。
それと1カンマ後にヤツの羽が先まで居た岩を叩いて吹き飛ばした。
俺は心の中でほくそ笑んだ。
「ふっ、予想通りだっつーの!」
自分の行動が見透かされた鶏は激昂し、
真上に大ジャンプをして俺を踏み潰す勢いで迫った。
それも俺は見切り、
岩の間を走りぬけ、また間合いを取った。
幸い、ヤツの動きはプリンほど速くはない。
これなら1人でもいけるか…?




