43:戦慄が囁く恐怖。
歩くのも辛くなり、俺は膝に手をあてがいながら一歩を踏みしめていた。
地図上で見ると残り100メートル。
鶏ボスの出現場所だと認識出来る前方には巨大な影が蠢いていた。
陽炎のせいでその影は真っ黒にしか見えないが、
その幻影は遠くで見ても奇妙な動きを繰り返していた。
身体は卵状でずんぐりむっくりしていて、
その楕円の両端には天使の羽と思われるあからさま過ぎる羽毛が認められる。
20秒間隔に一度くらい、その羽をはためかせ、大きく真上に跳躍しているのが見えた。
5階建ての建物などは余裕で飛び越えられてしまうくらいの跳躍力だ。
だが、持続的に飛ぶことは不可能なようで、上に上がって少し経つとまた地面に落ちていった。
ただで落ちると思ったらそれは俺の浅はかな考えと想像力の圧倒的な足りなさだった。
地面に着地した瞬間に周りの砂を吹き飛ばし、
ミステリーサークルさながらの大穴を砂漠に作ってしまった。
もしかしてもしかするとあの明らかにヤバそうなやつがキング鶏とかいうやつなのか…?
俺を脅しているのか何かの暗示なのか、
砂漠にぽつぽつあるゴツイ岩に向かって表現不明なものをそいつは吐き出した。
俺は着々とそれに近づいていて、50メートルくらい離れていたものの、
光線が放たれたようなピキーンという擬音と共に一瞬で岩が破壊される一部始終を俺は今、目の前で見てしまった。
瞬間、俺の背筋に汗が浮かび、
戦慄が脳に恐怖を囁いた気がした。




