41:砂漠にただ1人?
「しっかし広ぇなーーー……」
後頭部を掻きながら左手に握り締められている地図を見やる。
ここだけ妙にレトロなデザインでパネル式の地図じゃないところがまたTKHのセンスの良さだと俺は思う。
ただ、地図上にGPSかそんなもので俺の居場所と付近のモンスター情報などは抜けている部分など1つもなくビッシリと埋められていた。
プリンのおかげである程度レベルが上がったので、そこらの雑魚敵を相手にしても時間と労力を際限無しに飲み込むだけだ。
カナのご褒美も楽しみなわけだし、あまり余裕があるとは考えないほうがいいかもしれない。
地図から視線をずらし、足許に目を向けた。
例の最強防具『テール・ビレトル』の派手な色が目を突き刺す。
外気と上から落ちてくる光線に当たり続けている俺は自然と背中が汗ばんできた。
もっともここのフィールドに入った瞬間からそうなる事は予想出来たが。
額から一筋の汗が流れる。
それをぬぐう暇も無く、水滴は足許に吸い込まれていった。
ルートを見る限り後1キロくらいで着くらしいのだが…。
1キロはこの状況じゃあかなりキツイ距離だと思う……。
――――目の前は砂丘。
俺が重い身体を揺すって動かして今まで歩いてきたところは全て砂。
足跡は足の位置を少しずらしただけで埋もってしまった。
目を凝らしても砂。
左手に地図を移して右手で日光を遮りながらわずか50メートルを確認しても砂。
ついでに俺が今踏みしめているのも砂。
プリンを討伐した草原から1ブロック離れたここがこんなにも激しい砂漠だとは…。
こんなところに鶏なんて居るはずがないだろう……。
鶏なんて居るとしたら北海道の十勝とかそんくらいの優しい土地だ。
サソリとかミーアキャットとか出てきそうなこんな辺境な地に……。
否、TKHに常識は通じなかった。
それをつかの間の間だけど忘れてた俺が恥ずかしい。
プリンが超マッチョになるとかもう別次元のビジュアルになってたし…。
あの『黄色い悪魔』との死闘は激しかったなぁ…。
あいつを倒さなければ俺が砂漠をひた歩く事も無かったはずなのに…。
俺は静かにMOBを恨んだ。




