36:深遠からの襲撃。
空中に佇むプリンは両手を上に広げた。
まるでなにかの強力な技を出すための暗示のように。
広げられた両手の間に小さな球体が出現する。
じっくりと観察を続けているとその球体はどんどんと大きくなっているではないか。
それがだんだんと巨大になっていき、バランスボール大になった瞬間プリンはこちらに向けて投げ出した。
「うわっ!
んなの――ありかよっ!?」
球体は地面に着弾すると同時に爆風を広げた。
腕で顔を押さえ、クリティカルダメージは逃れるものの、
俺は横に投げ飛ばされた。
派手に転がり、剣で地面を突き刺し、加速を止める。
彼は攻撃の手をやめず、
未だ力を溜めている。
目算だが、溜める時間は約10秒らしい。
二発目が来る。
発射されてから着弾まで少し間があるのでその間に着弾距離から離れる。
そうすれば必ず当たることはないだろう。
だが反撃をしなければ何の意味も無い。
残念なことに俺のスキルには遠距離の攻撃が見当たら………。
あった。
いや、遠距離とはまだ確定してないが、なんとなく怪しいカンジがするやつを…。
宝剣付属のスキルである3つのスキルのうちの1つだ。
深遠からの襲撃。
超追尾ダガー。だそうだ。
そもそも追尾するダガーなんて俺の知識上存在しないはずだぞ?
俺が無知なだけかもしれないが。
スキルパネルを開いて迷走している俺を尻目にプリンはまた再攻撃の準備をしていた。
彼にはMPというものが存在しないんだろうか。
モンスターだから存在しないのかな?
と思っている間に彼はまたバランスボール型の球体が出来上がった。
…これを投げるんだな…!?
とおもっていた瞬間、バランスボールが壊れた。
否、
壊れたんじゃない。
『壊した』んだ。
バランスボールが崩れ、その破片がだんだんと野球ボール状に変化する。
―――まさか、これって……!
俺の額に冷や汗がツツーッと流れた瞬間にバッティングセンターの投げるマシン顔負けの速い球が無数といえる数で俺に襲い掛かってきた。




