35:四肢が出現したぷりん。
俺を吹き飛ばした甘い食べ物は調子づいてきた様子。
ゴリラの雄叫びのように今さっき出現した筋肉に挟まれた腕で胸を叩く。
いつのまにか、1頭身の可愛い姿が4頭身ほどに変形していた。
カナは180度変わった愛するプリンに絶望してドラマのように地面に両手をついて悶絶していた。
カナの崩れ落ちた精神を心配するようにアヤはカナの背中をさすっている。
俺はカナをいたわる暇もなく、目の前の超サ〇ヤ人に注意を向けていた。
いきなり手足が生えるくらいだから
『かめ〇め波ァァァァァァァァッ!』とか言いつつ極太光線を撃たない保障はどこにもない。
某ロボットアニメのように変形をしたとしてもプリン特有のカラメルソースとバニラ風味の甘い香りは抜ける事はなかった。
この匂いは食欲と同時に煩悩まで刺激されるようで、戦う気さえ出ない。
カラメルの匂いが俺の食欲を最大限にまで引き出す前にそれが動き出した。
俺に目掛けて突進してくる。
右腕を後ろに振りかぶっているので殴りかかってくることは初心者の俺でも安易に予想できた。
無理に剣では防御をせず、横っ飛びをする。
俺の先まで居た位置にマンホールほどの大穴が出現する。
プリンの腕からは砂埃が……。
筋肉隆々の腕を前後に動かしながらこちらに歩み寄ってくる。
某アニメのように、『カカ〇ットォ………』
と怒りゲージ満タンでずしずしと歩いてきた。
待て、待て、次の動きが全く予想出来ない…!?
急に飛び出して先ほどのような一撃を繰り出すのか。
大きい腕なぎ払うように腕を振り回すのか。
四肢が出現したプリンの次の行動で1ミリとも余所見をしたら一瞬で粉々にされそうだ。
にらみ合う両者。
プリンが地面に重心を置き始めた。
こいつ、飛ぶつもりだ。
ドドッォォォォォォォォォォォッ!
手にロケットを装着したように一瞬で真上に飛んだ。
体重のせいか、あまり高くには飛ばなかったが、プリンは俺を威圧させる事は出来たらしい。
遠距離魔法なら届きそうな距離だ。
だが…俺には見当たる遠距離技なんか……。
俺はプリンを見上げる形。
俺の角度からはそれは太陽を隠して立っていた。
まるでプリンに後光が差しているような……。




