34:プリンなのに俊敏…?
「動け!
考えるな!状況を知って動け!」
状況を知れって考えろって事だろ…。
ハチャメチャな事を言っていても戦闘姿勢のアヤはどうでもいいように目の前の敵に威嚇をしていた。
アヤとカナが事前に練習をしていたかのように同時に詠唱を始める。
簡単な物なのかそれは物の1秒ほどで終わった。
プリンは未だ動かない。
多分だが、誰も巨大ぷりんに攻撃を行っていないからだと思う。
つまり、先制攻撃が重要という事は俺も理解できた。
ターゲットが俺に向かった瞬間に女性陣2人はプリンを目の前に両手を前に突き出した。
「「施錠!」」
手から紫色に妖しく光る魔方陣からニョロリと蛇のように出現した2本の鎖は
プリンの身体を螺旋状に押さえつけた。
ハノイの塔のような形をした柔らかい身体がぐにゃりと歪む。
千切れないだけいい素材を使ったプリンなんだろうか。
身体の形が変わったと同時にプリンの顔も少しずつ歪み始める。
心なしか目が釣りあがってるような……。
「今だ!リョウヤ!一撃を打ち込め!」
「わ、分かった!」
俺は剣全身を後方に持っていき、身体を前に倒す。
勢い余って転ぶ勢いで飛び出す。
これがエリュンケラーの特有スキル『神速特攻』
である。
襲撃者であったハクに攻撃した時と同じパターンだ。
「はぁっ!」
細かく息を切り、飛び出しながら長い剣身を上から下に切り裂くため振りかぶる。
一瞬で目の前が黄色に染まる。
その瞬間俺は剣の柄を思いっきり下に下ろした。
手ごたえは無かった。
柔らかいプリンのせいなのか、当たらなかったのか。
鎖でがちがちに拘束されたはずのプリンは
『残像を残して20メートル先にまで離れていた。』
「な、なぁっ!?」
怒ったように1回ポヨンとそれは跳びはね、俺をターゲットに吹っ飛んできた。
プリンの頭なのかカラメル部分の黒い部分が突進してくるようにしか見えない。
ほのかに甘い匂いがするのは俺のお腹が空腹を訴えているからか。(現実で。)
アヤに言われるがままに練習した剣の防御法はちゃんと出来ていた。
縦になった剣身は見事のそれの突撃を抑えた。
美味しそうなプリンは俺の防御に怯む事無く、
『奥の手』を使った。
俺は横に飛ばされる。
「――かはぁっ!?」
いきなり出現した横からの衝撃に耐え切れず俺は地面に転がる。
何が起きたのかと俺は黄色い物体を見た。
―――すると…。
「そ、そんな…私のぷりんちゃんのイメージが……!」
黄色い巨大ぷりんには。
大きな山がかたどられた食欲をそそりそうなぷりんには。
見事に筋肉質な四肢が付いていた。
「こんな…のありなのかよ……!?」




