24:正義の鉄槌
薬屋探索なう。
そう名の付けられたイベントには驚きがたくさんあった。
妙な薬。
変なインテリア。
シャンデリアとか紫色だし、
変な雰囲気を醸し出しまくっている。
俺は自然な振る舞いで目の前にあるポーションを手に取った。
透明な色だ。
実際を言うと透明が一番危ない薬品が揃っているらしいんだが。
青酸カリとか。
俺が一番怖いと思う毒は「テトロドトキシン」だ。
河豚の内臓にある毒で、
青酸カリの何十倍にも匹敵する強力な毒だ。
だからフグを料理する人は厳重に。
フグをさばくには免許も必要になるくらいなんだ。
人の命を粗末にしてはいけない。
世界ではそう定められている。
それを乱す人も居る。
『殺人者』だ。
この命のサイクルを強制的に終了させ、
人口増加を決定的な力で阻止する。
もちろんそれが世界のルールとして許されるわけが無い。
世界から不条理な理由で人が1人消えたのだ。
タダで済まされるわけが無い。
世界から『正義の鉄槌』が振り下ろされる。
それも不条理な理由で。
ポーションを手に取って固まっている俺に2人は気づく。
眉間に皺を寄せる俺に2人は不思議そうに見つめる。
「どうした?」
「どうしたんですか!?」
そう言って俺の視線のラインに移りこむ彼女達。
どうしたの?
そういう目を向けてくる。
正直言って人の視線に慣れた事は無い。
いつやっても慣れないのだ。
「あはは、なんでもないよ……!」
口から出任せだったわけだが、
2人は安心したように、
「そ、そうか!
もうちょっとポーションを見ていかないか?」
「何があったか知りませんが元気だしてください!」
と、笑顔を見せてくれた。
カナの無邪気な笑顔にはこの短時間でかなり救われた気がする。
アヤの強引さにも。
すると、アヤが長髪を揺らして、
「リョウヤ!こっちに来てみろ!」
と叫んだ。
アヤがポーションを漁っているところはあの臭い壷の傍だった。
彼女は大丈夫そうだが、俺はとんでもなく苦手だったので距離をとっていた。
アヤが1つの薬品を手に取って、
俺に見せてきた。
『Danger!』
といういかにも危なさそうな広告が大々的に表示された
濃いピンク色の薬品だ。
今まで酷すぎる薬品の数々を目に焼き付けてきた俺には
どんな薬品なのか全く予想できない。
一応俺の五感が何かを察したが、
未だに確定した事ではないので頭の隅に設置しておく事にした。
カナも興味深そうに寄ってきて、
「またなんか凄い毒薬なんじゃないんですか?」
と呆れた表情で言った。
すでに彼女の手には2種の毒薬が握られていた。
どちらも即死レベルらしい。
……――――ギイイイィィィ………!
!?
ふと会計の棚の奥にある古臭い扉から開閉音が聞こえた。
いきなりの出来事にカナの小さな両肩がビクッ!
と上下する。
3人の視線が古臭い扉の方向に集められる。
怖がりな小動物が巣穴から出てくるようにゆっくりとその扉は開かれた―――!




