19:現実セカイなんて捨てた捨てた!
ビュンビュンビュン……
一角獣の上に乗って見える町が流れていく。
馬専用の道に沿って走る。
速い。
もう少し町並みを楽しんで眺めたいものだ。
さすがに女の子の腰には巻きつきたくないので
死ぬ気で馬の鞍にしがみ付く。
「ふんぬっ……」
今頃俺の顔は目の前から殴りつける強風と恥ずかしさで破壊しまくっているだろう。
テクスチャ補正でなんとかなっていたらいいが。
恐怖しか生まれないぞこの乗馬は……。
違う景色が見えるとか他の漫画で読んだ経験は一応あるが……。
速い。
もし落馬したらぶっ飛ぶだろう。
―――――――まだ、着かないのか!?
や、ヤバイ……。
酔ってきた……!
そりゃちゃんと身体を固定してないんだ、
酔うに決まってる。
未だ全身はブランブランしてるし……。
ゲームの乗馬で酔う人が居るんなら俺くらいだろう。
とんだニュースになる。
『TKH至上最強のバカ!』
なんて見出しでTKH新聞が発行されるに違いない。
早く目的地についてもらわなければ。
「か、カナ?」
「はい?なんでしょうか?」
「まだ、着かないのか?」
「リョウヤさん、セッカチは嫌われますよぉ?
あと1キロほどなんで我慢してください!」
…………。
まだ1キロもある上に、子供扱いまでされてしまった。
恥ずかしいにこの上ない。
あとでモンスターと戦って巻き返さないと、
『情けない男子』
というレッテルを貼られてしまう。
―――現実セカイでも散々なのに……。
現実セカイなんて捨てた捨てた!
非リアなんてつまんねぇよ!
やってたまるか!
そうだ俺は負け組だ!
ふざけんな!
バレンタインデーとかもTKHで過ごしてやる!
カナとかに美味しいやつ貰ってやる!
アヤとかに毒舌吐かれてもしがみ付いて貰ってやる!
と俺は妄想で乗馬の酔いを乗り切ったのである。




