10:民宿、客に悩む。
「みんなでフレンド登録したのはいいんですが…」
カナは床をチラリ、と見、
「いえいえっ、私のリペアー能力ならすぐに直せますよ!
ただ……」
彼女はそれを言うと俯き、黙ってしまった。
俺とアヤは顔を見合わせ、首を傾げた。
「最近この宿が不調で……。」
と彼女の話はそこから始まった。
「最近はある方が最高建築家とコンタクトを取って、物凄い高さの
マンションを作る計画をしているんですぅ……」
「ん?待て待て待て、
建築家って何だ、そんな職業まで用意されてるのか!?」
「そうよ?知らなかったの?
パティシエから演奏家、シェフまで居るよ?」
「ええっ!?
そんなにレパートリーに富んだ職業があるのか!?
お、驚きだ………」
「ま、私はハンターだけどね。
モンスターを倒したら2倍近くのゴールドが手に入るんだよ!
あと、宿主とか雑貨屋に素材を頼まれることもあるから
結構人気な職業だと思うよ!」
「かっ、カナは宿主ですぅ……
最近お客さんが来ないのでゴールドがあまり入ってこないです……」
そしてアヤは思い出したように
「高層マンションを建てるには莫大な資金が必要になるんじゃない?」
「それがですね……新しく宿主の職に入った方が
TKH100位以内に入るトップランカーだったということが判明しました……」
そういうことなら初心者の俺でも分かる。
PvPや、モンスター討伐のポイント取得数によってゲームランキングが決まり、
それに比例して、クエストの量や、運営からプレゼントされる物が豪華になっていく。
その憧れのランカーがなんでまた宿主なんかに………。
「その宿主さんはここ、ソーディンギアで一番の宿主を目指そうとしているんです…。
職業ランキングが一位だと、
ゲームランキング昇格ポイントが物凄い量で貰えるんですぅ…」
「ああ、だから宿主なんかを選んだのか。
それで自分の宿に客が来ないからカナは心配してると……、
そういうことでいいか?」
「はい、ですです。
それでリョウヤさんとアヤさんに頼みたいことがあるんです……。」
と、カナは急に困った表情に変わった。