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海心←雅、空羽

「例えば、話をしましょう」


肩くらいある髪を後ろで一つに纏めながら、大野はそう言った。


最近、橙色に染められた髪を女のようにくくる大野の行動をパックのカフェオレにさしたストローを弄りながら、大野を眺めて俺は答える。


「なんやねん、急に」


自由人である大野が唐突に何かを言い出したりしだしたりするのは、最近はそこそこ慣れて驚かなくなってきた。


「俺が男を好きだったとします」


だけど、この言葉は予想外だった。


その言葉に、俺はカフェオレを足元に落としてしまう。


「……うわっ! 最悪」


飛び跳ねたカフェオレが服を濡らしたせいで、思ったより大きな声が出た。


「なにやってるんすか、海心さん」


カフェオレを落とした時に出た声に大野が気づいて、呆れたような笑みを浮かべながら言う。


その笑みに腹が立ったが、我慢して問いかける。


「で、お前が男好きやとしたらなんやの?」


その言葉に、大野はあー……と自分が言った言葉を思い出したかのような声を出す。


なんやねん、こいつ。


「それで俺が男好きやとして、もし海心さんのこと好きやって言ったらどう思います?」


「え、気持ち悪い。男なんて、ありえへん」


つい、何も考えずに即答してしまう。


その言葉に、大野はですよね、と当たり前のように微笑みながら頷く。


「ありがとうございます。それを聞けたら十分です」


お菓子を食べている時と同じくらい上機嫌な声でそう言うと、大野はぺこりと頭を下げて、じゃあ失礼しますと言って扉を開けてぱたぱたと走り去って行った。


「意味わからん、ほんまになんや、あいつ」


俺の言葉は静かになった部屋に響いて消えた。


ふふ、と笑い声が聞こえる。


さっきの兄さんの答えは自分にも望みがないのが分かるっていうのに、どうしてそんなに嬉しそうなのか。


部屋から出てきた、この人は部屋の扉に背を預けながら俺に向かって言った。


「残念だったね、弟くん。男でしかも弟なあんたは絶対に恋愛対象にはなりえはせん。けどな、俺は違う。血が繋がらない限り、俺が恋人になれないことに絶対はない」


クスクスと笑う声に苛つく。


その笑みは人の神経を逆なでする大嫌いな笑みで、ちっと俺は舌打ちをした。


兄さんの言葉を聞かせるために、俺を呼び出したのはそういう意味か。



「言ってろ、兄さんがあんたみたいな奴に惚れるわけがない」


俺は大嫌いなこの人を殴らないようにぎゅっと手を握りしめながら反論する。


大野は何も言わず、にこりと笑った。

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