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言葉
愛してる
何も考えずにそう言えば、相手は嬉しそうに微笑む
あなたは残酷ね
いつものように愛を囁いていると誰かが言った
自分が傷つくことも相手を傷つけることも大好きなのね、無意識にしてしまうくらいに
誰かは悲しそうに笑いながらそう言った
その言葉にどうしてそう言うのだろうと首を傾げてしまった
自分は傷つけているつもりも傷ついているつもりもないのに
誰かは続けて言う
あなたは優しすぎるわ
その言葉に、自分は笑ってしまった
自分を優しいというのは君くらいなものだ
愛してるよ
知ってる
嫌いになるなんて面倒なだけ
相手を受け入れないのは面倒なだけ
ただ、それだけなのかもしれない
諦めたのはいつのことだったか
考えるのを止めたのはいつのことだったか
自分の言葉は空っぽで誰に響きもしないのだろう
愛してる
愛してない
どっちだって、言葉にするのは単純で
どっちだって、自分は本当の言葉にはできないのだろう