46/69
対立
2013の8/11に書いたオセロのメモが執筆中にあったからのせておく
声を発することはできなかった。
本当は叫びたかった。狂ったように喚きたかった。
でも、声帯が震えるより先に涙がぼろぼろと頬をつたって落ちていく。
「…………なん、で」
ようやく発した言葉はこの空間に異様なまでに響いたように思えた。
その言葉に彼は苦笑して、一言一言区切るようにゆっくりと、小さな子どもに教えるように分かりやすく言った。
「この町は弱肉強食。勝ったものが全て正しい町なんだよ。だから、どんなことをしても生き残らないと駄目なんだ。殺されかけているのに、その人を殺さないとね、殺されるだけなんだよ? 光助。話が通じる相手じゃないんだから」
顔を青くして、何も言えなくなった俺は見下しながら此方を見ている視線に気づく。
俺と目が合うと彼の仲間は「臆病者」と俺を罵った。
彼は否定せずに、笑いながら俺を見ている。




