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魔法使いの少女の始まり

昔、部活で書いたやつ

甘いお菓子。

綺麗な宝石。

可愛い洋服。

たくさんの花束。

誰かからの贈り物。


それは女の子がお姫様になるための魔法の材料。


だけど、お姫様になることが本当に幸せ? それとも本当は不幸せ?


魔法にかかるのは一瞬。

魔法が解けるのも一瞬。


それはきっと誰もが知っていること。


それでもきっと望むのだ。


魔法をかけて欲しいと願うのだ。誰かのお姫様になることを夢見て。




 腰までの長い黒髪。


胸元のリボンが印象的なゴスロリ。


左目には怪我をしたときにつける白の眼帯。


誰から見てもこの町には似合わない姿の少女が赤信号なのに何故か横断歩道の真ん中に立っていた。


何度か車に乗っている人がクラクションを鳴らしたが聞こえてないかのように無視している。


苛々したように怒鳴る人もいたがそれにも反応はない。


少女の目の前の信号が赤から青に変わってからようやく少女は歩き出した。


まるでそれが当たり前だとでも言うかのように信号待ちをしていた人達と一緒に歩き出したのだ。


今思えばよく車に乗っていた人や信号待ちをしていた人に怒られもせずにすんだものだ。


正直自分は誰か一人くらいはあの少女を怒り、親を呼ぶために電話番号を聞くのだと思っていた。


それとも自分が知らなかっただけであの少女は何度も同じことをしているのだろうか。


通りすがりの青年はひそかに首をかしげたのだった。


さて、視点を少女に移そう。


 彼女は横断歩道を渡りきった後、ある店に向かうために人通りの多い道を歩いていた。


通り過ぎていく人の視線などいつもの事だと気にも留めない様子である。


だが、その中にいつもの視線とは別の視線があることに彼女は気付いた。


それは周りの馬鹿にした視線ではなく、訝しげな視線でもない。


まるで羨ましがっているような視線だったからだ。


 一回、二回と彼女は周りを見渡してからその視線を向けていた人を見つける。


視線を向けていた人はまだ二十歳くらいの女性だった。


どうして自分にそんな視線を向けてきたのか聞くために彼女は女性に向かって歩き出す。


女性も彼女が自分のほうに歩いてくるのに気付き、逃げるように踵を返そうとしたが彼女のほうが先に女性に話しかけた。


「僕に何か用でもあったのかな?お姉さん」


彼女が女性ではなかったら軟派に間違われそうな台詞だ。


こんな台詞を言う人はいないだろうが。


「別に私は貴方に用はないけど?」


女性は彼女の言葉に少し顔をしかめながら答える。


「本当に?だって君、僕のこと羨ましそうに見ていたじゃないか」


だが、次いででた彼女の言葉から視線に気付かれていたことがわかると女性は顔を赤く染めて黙ってしまった。


その反応から彼女は女性が自分を見ていたことが事実なのだと安堵する。


一歩間違えれば自意識過剰な奴になりかねないからだ。


「ねえ、どうして僕を見ていたの?」


もう一度、言い方を変えて彼女が聞くと女性は諦めたように答えた。


「貴方のその姿が可愛かったから……。私にはそんな格好できないし、それに自分が他人にどう見られたって平気だって胸を張って歩いていた姿も羨ましって思って見ていたの」


答えている途中、女性が右手首を左手で摩っていたのに彼女は気付かなかった。


気付いたところで彼女に女性のそのしぐさが何の意味を持つのかなんてわからなかっただろうが。


 彼女は女性の答えに納得したように頷きながら幼い子が言うかのような台詞を言った。


「そっか、君はお姫様になりたいんだね。だけど魔法使いがいなかったから誰かに憧れるしかなかった」


女性は意味がわからないといった風に首をかしげたが彼女はそれを無視しながら続けて言う。


「大丈夫だよ。どんな女の子もお姫様になれるんだから。それを証明するために僕が君に魔法をかけてあげるよ」


 にっこりと微笑んだ彼女の笑みはどこか有無を言わせない何かがあり、女性は頷くしかなかった。


その返答に満足した彼女は今思い出したというように自分の名前を名乗る。


「…あ、そうだった。お姉さんの名前はなんて言うの?僕は宮司紺って言うんだ。よろしく」


「……江桐真弥」


女性は少し間を置いてから彼女に自分の名前だけを簡潔に述べたのだった。

 


彼女と江桐真弥がこの後も偶然に偶然を重ねて出会い、彼女が江桐真弥を巻き込んで色々な女の子にかかわっていくのはまた別の話だったりする。


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