人花
冷たくもないし、熱くもないそんなぬるい水の中。
心臓部分から芽吹き、成長を続けている植物の葉が体に張り付いて気持ち悪い。
元々、濁っていた水がその葉のせいで違う色に染まっている。
その葉が枯れようとしている様子は死ぬことを暗示しているようで。
左手のたくさんの引っ掻き傷の上からまた傷をつけた。痛い。
右手の爪に左手からでた血が付くがすぐに水の中に溶けて消える。
それを見ながら何かを言おうと口を開くが、声にはならず空気が泡となって水の中に消えただけだった。
これが死ぬ感覚だろうか。目の前が霞んでいく。
左手の真新しい傷が痛い。
その痛みにももう慣れた気がする自分に苦笑した。
水の中で腕を動かして左胸の所に持っていく。
命と共に育ち、そして寿命と共に死ぬ植物の茎を手で触る。
あれほど、引っこ抜いてしまいたいと思っていたこれも、もうすぐ完全に枯れると思うと少しだけ愛しく感じる。
自分の命で育った植物なのだから当たり前かもしれない。
ゆ き
心の中で見捨てられた人の名を呼んだ。
最期に、会って聞きたかった。
少しでも愛してくれた?
***
20××年
ある小さな研究所で一つの日記が見つかる。
それは命と共に育つ植物を作る研究の被験者になった者の日記だった。
plantlifeと名付けられた心臓に植えるための植物は人体に影響を与える事はなく、ただ共に育っていくだけの植物だった。
そうたったそれだけの植物のはずなのだ。
被験者の日記に書かれていた事は、その事について否定していたわけではない。
むしろ、最初の部分はそれを肯定する言葉が並んでいた。
研究員を誉めるように、植物の事を誉めるように書かれていた言葉がある時期から研究員を侮辱するような、恐怖するような言葉へと変わっていく。
被験者の態度がこんなにも変わったのは何故か。
その理由は一言も書かれていなかったから、誰にもわからないと思われたがその日記に書かれていた言葉を読んでいくうちに被験者が恐怖した理由のものが研究所の地下にあることがわかった。
この後、これを読んだ主人公(?)は研究室に行き、植物の種と生き続けている少女を見つけます。