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眼鏡


……本当にありえない。


直也は廊下を歩きながら、眼鏡の赤いフレームに触れて小さく溜め息をついた。


直也が苛ついた気持ちを抱くに至ったのは昨晩、母親に怒られた双子の弟である祐介が直也の部屋に乱入してきて暴れ回ったことが原因だ。


前々から不満があると物を壊す祐介の行動に直也の物は何度も被害にあっている。


祐介は今回、暴れ回った時に机に置いてあった直也のコンタクトを落下させ、踏み潰して使い物にならなくした。


しかも、ちょうど替えが無くなっていた時のことだ。


だから今日、直也は嫌々ながらも仕方なく眼鏡をかけて登校していた。


視界の端でちらつくフレームが鬱陶しいが外したら何も見えなくなるから外すわけにもいかず、直也はまた溜め息をついた。


浮かない気分で自分の教室に入って席につくと、隣の席に座っている雅が目を丸くして直也を凝視した。


「……おはよう」


どうして此方を食い入るように見ているか分からず、内心で不思議に思いながら挨拶をする。


「おはよう……直也君ってコンタクトじゃなかったかな?」


彼女は律儀に挨拶を返してから、長い黒髪を耳にかけながら聞いた。


その質問に、鞄の中から筆箱を出しながら答える。


「昨日、祐介に壊された」


その言葉に雅は納得したように頷いた。


「あー……なるほど」


頷いてから、雅がちらりと見た先には雅の友人である夏樹をからかって騒いでいる祐介がいる。


その様子を見てから、苦笑する。


雅は直也の様子を楽しそうに笑ってから、そう言えば、と話題を変えた。


「昔は眼鏡だったのに、どうしてコンタクトにしたんだっけ?」


その言葉に、暫く視線をさ迷わせてから小さく呟くように言う。


「邪魔だし、恥ずかしいから嫌なんだよ」


直也の言葉に雅は不思議そうに雅は言う。


「恥ずかしい?」


直也はますます小さな声で言った。


「似合わないから」


その言葉に雅は、笑いながら言う。


「そうかな? 別に変じゃないと思うよ? それに……」



雅が言った言葉は直也を硬直させるには十分で、何も言えず固まっていると雅は夏樹に呼ばれて直也から離れていった。


直也は雅が離れたのを確認すると机に突っ伏した。


「今のは反則だろ……」


さらり、と言われた言葉を頭の中で繰り返して恥ずかしくなる。


私は普段の直也君も眼鏡の直也君も好きだけどな、何て期待するなと言う方が無理だ。


唸りながら机に突っ伏して、どうしようもない気持ちを誤魔化す。


机に突っ伏した直也の頬が真っ赤に染まっているのを見て、祐介は密かにいたずらっ子のように笑った。

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