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ブバルディアの花言葉

ブバルディアの花言葉:夢


 誰かが泣いている。

 真っ白な部屋の中にある一つだけのパイプ椅子に座って、右手は腿の上で固く握り、左手は目元に当てながら泣き止もうとしていた。それでも二つの瞳から流れる涙は、はっきりと頬を伝って落ちていく。

 そんな誰かも知らない人の前には真っ白のベッドがあった。そのベッドの上に打ち覆いで顔を隠している人が横たわっている。

 母親だったか、父親だったか、家族のなかの誰かが私を呼んだのはこのためだったのかな、と思いながらそのベッドに近づいてみた。

 誰が死んだのかは知らない。急いでここに来たのだけは覚えているけど、聞いたのか聞いていないのかも曖昧だ。

「瑠璃……」

泣いていた人が私の名前を呟いた。返事をするのも面倒だったから私は振り向いてその人を見る。その人はそれ以上、何も言わなかった。

その人の私を呼んだときの声がかすれていると感じたのは、私がここに来る前まで声をあげて泣いていたからなのだろうか。

そんなことをぼんやりと思いながら、私は急に誰が死んだのか気になり、咎められることはないだろうと思いながら手を動かして、打ち覆いを持ち上げた。



「……で?」

 頬杖をつきながら、特に興味もなさそうに先を託す声に私は首を横に振った。

「そこで目が覚めたから、その後は知らない」

 今朝見た夢の話を、休み時間でもないこの時間帯に向かい合わせで話していると言うことに違和感を覚えながら話し終えた私に対して、授業をサボることになれているだろう実海棠 禊萩君はため息を吐いた。

 彼にその話をしたのはたまたまだった。たまたま今日、学校で一番初めに会った人にその夢の話をしようと思って、たまたま一番初めに彼に会っただけ。そのせいで、一時間目をサボることになったのだが。

「中途半端だな。嫌、夢なんだから普通はそれが当たり前なのか?」

 一人で自問自答をしている彼に首を傾げていると、彼はまたため息を吐いた。いったい何に対するため息なのかわからないが多分、一時間目をサボってまで聞かなくてもよかったとでも思っているんだろうな。そんな風に自分の中で結論が出たとき、彼は頬杖をついたまま、さっきの興味なさそうな声音で私に言った。

「紫雲英さ、そこまで話すんなら落ちまで教えてくれよ。気になるだろ」

 確かに私も自分の夢ながら気にはなっていたが、そう言われても夢はそこで終わってしまって続きのことなんて私だって知らない。ドラマみたいに続きを見れるわけでもないんだし。

「私だって死んだ人が誰だったのか知りたいよ」

「泣いている人じゃなくて?」

 彼の質問に私は首を傾げた。私が知りたいと思ったのは誰が死んでいたかと言うことだったが彼は泣いている人の方が気になったみたいだ。

私だって何も最初から死んでいる人が気になったわけではない。泣いている人だって気になったし、どうして誰もいなかったのかも気になってた。でも、一番気になったのは死んでいる人だった。

「だって、死んだ人がわかったら泣いている人だってわかるでしょ?」

 私の言葉に彼は特に何も言わず、笑った。どうして、笑ったのかわからなかったけどその笑みは何だかとても優しく感じた。

 私がその笑みを見ながら、どうしてか嬉しさを感じていると彼は右手に付けてある腕時計で時間を確認してから

「まだ、そんなに時間たってないから授業受けれるけど、どうする?」

と、言った。私に対してその問いかけをしたのは一緒にいても良いと言うことなのだろうか。彼はたまたま、そう聞いてきただけかも知れないけどこんな事、きっとないかもしれないし退屈なだけの授業を受けるのも嫌だし。だから、だから。

「もうちょっとだけ話さない?」

この時間を楽しんだって罰は当たらないと思うんだ。




 私があなたを好きになるのも時間の問題。それまで、くだらない夢の話でもしましょうか。


部活で書いたの

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