お菓子
買い物の続き
まだ誰も動き出していないだろう夕暮れの時間に首元に水をかけられ、強制的に起こされたカノンは上半身だけベッドから起こして部屋を見渡し、溜め息を吐いた。
本来部屋が違うためいるはずがない兄であるカインが隣ですやすやと眠っている姿を見て、再度溜め息を吐く。
「もう、寝る時は入ってきたら駄目だって何時も言っているのに」
のんきに眠っているカインとは正反対にぐちゃぐちゃになっていく部屋。
花瓶や蝋燭、色々な物が浮いている。
花瓶の中にあった水は床の上やベッドの上に零れ、机の上に積み上げていた色とりどりの蝋燭の山は天井や浮いている物にぶつかり崩れていたり、空中でくるくると回っていたりしているのが見えた。
「カイン兄、そろそろ起きないと叩き出すよ?」
部屋の様子を見つめた後、カインの頬を突きながらカノンは言葉を呟く。
だけど、カインは擽ったそうに身動ぎをしただけで起きる気配はない。
「カイン兄ってば!」
むに、と頬を少し強めに抓って様子を見るが、やっぱり起きないカインにカノンは三度目の溜め息を吐いた。
ぐちゃぐちゃになっている部屋の原因であるカインが起きてくれなければカノンは自分の部屋を掃除することも片付けることも出来ない。
どうしても兄を外に出すか、起きてくれないと困るのはカノンの方だった。
「……叩き出そうかな、もう」
考えることが好きではないカノンが、考えることを放棄するのに時間はかからなかった。
「うん、そうしよう。だって、入ってきたカイン兄が悪いんだもん」
くすくすっと笑いながら、カノンは頬を抓っていた手を離し、ぴょんぴょんと地面を蹴って飛び跳ねた。
飛び跳ねるたびに浮いている物に当たりそうになるが、気にせず飛び回る。
その姿は十三歳の青年には見えず、幼い子どものような無邪気さがあった。
「カイン兄が悪い。カイン兄が悪い」
くすくすっと笑って、笑って、笑って、ぴたりと動きを止める。
飛び跳ねることが疲れたからではなく、誰かがこの家に来ることに気が付いたからだ。
カノンとカインの家は人が入るのは危ない森の奥にある。
だからか、誰かが家に近づくと自然と気が付けるようになっていた。
「……誰かな、こんな時間に」
中途半端で終わり




