この気持ち、伝えたかった
「わたし・・・稜希と・・」
「・・・・?」
「わたしは言えなかった。
そのままボーっとしてしまう。
「え?」
「・・・・・・稜希」
「す、菫?」
自分自身を操作できなくなってしまった気がして
今までの気持ちとか、どんどん溢れてきて
どうしていいのか分からない。
わたしはそのまま、稜希から逃げた。
走って自分のベットにあがって、カーテンを閉めた。
異変に気づいた麻由美と日向は菫に下から声をかける。
「どうしたの・・?」
「相談、乗るよ・・菫ちゃん!!」
菫の返事はない。
麻由美がそのままにしておこう、と小さな声で言った。
その時、わたしは眠たくなって、そのまま寝てしまった。
目が覚めたのは夜の9時ごろ。
みんなはまだ、部屋にいない。
お風呂に入ったり、洗濯したりしているのだろう。
3段ベットの階段を下りると、テーブルには食堂の定食が置いてあった。
メモがその隣に・・
『菫へ、お腹すいたら、食べてください。 麻由美より』
食べるよりも先に、麻由美をわたしは、探した。
外へ出ると、ルームメイト全員が楽しそうに話している。
壮太がわたしを見つけて、指をさした。
「菫ちゃ~ん!!」
「日向ちゃん・・・」
なんだか、みんなに合わせる顔がない。
そんなことも知らずに、日向ちゃんはわたしの方に走ってきた。
「ゆっくりしててよかったのに~」
「え~?」
「菫ちゃん、いきなりいなくなったって、みんなで探したの。」
わたしを・・・探した?
「ご、ごめ~ん」
「大丈夫、そろそろお部屋へ戻ろ?」
「う、うん」
わたしはその場で立ち止まってしまった。
眠りから覚めると、空気が変わっている気がした。
いつもどおりの態度で接してくれるみんな。
嬉しかった。
そのころ、凛果は稜希を探していた。
「りょうくん!!」
「凛果・・どうした?」
凛果は稜希に抱きついた。
「・・・凛果?」
「りょうくんは・・どこにもいかないよね・・?」
「どういうこと?」
「わたしから離れるなんてこと・・ないよね・・?」
凛果は涙を見せた。
稜希は笑顔で凛果にこう言った。
「・・心配することなんて、ないよ」
「本当・・?」
「あぁ。俺の好きな人は・・凛果だから」
稜希は素直だ。
そのころ、部屋に戻っていた。
日向ちゃんはわたしにこう言った。
「わたし、稜希くんのこと・・やっぱり好きになれない」
「えぇ・・?」
その場に聞こえない声の大きさで日向ちゃんは言った。
「やっぱさ、彼女がいるのに、好きなんて・・バカだよね」
今の言葉・・自分のことを言われた気がした。
そうなんだ・・彼女がいるのに・・好きなんて・・バカだ。
中庭のベンチにわたしは一人、座っていた。
「菫・・!」
振り返ると、缶のジュースが飛んできた。
「橋本・・」
クラスの橋本だった。
最近、元気ないことに心配してくれていた橋本。
「お前さ、翔と付き合うのか?」
「え・・?」
「耳に入った噂なんだけど・・どうなのかなって思ってよ」
「・・わたしにも分からない」
わたしは、誰かを好きになったり、誰かと付き合ったりすることをまだ知らない。
どんな風にデートしたり、どんな風に二人で過ごしたりするのかなんて全然分からないのだ。
告白されたのも初めてだし、信じられない。
「ジュース、ありがとね」
「おう!」
橋本と別れてから、わたしは部屋へ戻った。
「3班の鈴森千夏って子、知ってる?」
麻由美はわたしにそう言った。
確か、鈴森千夏って子・・1年C組だったはず。
元気な子で、何でも「はい!はい!」って言って
毎日、誰よりも働いている。
無理やりやらされているわけじゃなくて、あくまで自分の意思。
おっちょこちょいだから、いろんな人に迷惑もかけているけど、恩返しのように
お世話になった人には平等に尽くす!って考えの持ち主。
最近、あまり学校で見かけないけど、どうしたのだろう、とわたしは思った。
「千夏の好きな人・・翔らしいよ!!」
「え~?」
翔は地味にモテる。
告白も稜希がいなかったらダントツって感じだし、
壮太といい勝負をしている。
「でもさー翔ってバカじゃん?」
「まぁ・・そうだね。」
「告白したら、すぐ付き合いそうなのに~」
そんな話をしていると
噂の翔がやって来た。
「なんだぁ?富崎、なんか言ったか?」
「別に、何も」
「あっそ。」
すると、珍しく宿題を取り出し、自ら進んで勉強している。
雨でも降るのかと疑いたくなるほどのスピードでやっていく。
部屋に、稜希も入ってきた。
電話をしながら。
「あー凛果?明日の花火大会?あぁ、学校の門で待ち合わせ、OK。」
明日は、今年で最後の花火大会だ。
前に見た花火大会とは方向が違うだけじゃなく、お祭りも盛大だ。
打ち上げ開始は7時45分から。
午後3時からは、港でいろいろな屋台が出るのだ。
友達とでも、家族とでも、彼氏、彼女とでも楽しめる大きなイベント。
電話の話が終わると、稜希はいつもどおり、壮太と部屋を出て行った。
わたしはボーっとしている。
麻由美がわたしの肩をトントンと優しくたたいた。
「何?麻由美」
「明日の花火大会、一緒に行かない?」
「・・・・」
「あ、誰かと約束してたなら・・いいんだけど」
「ううん!全然いいよ!一緒に行こう!」
そして次の日の午後2時を過ぎたころ・・
この小説がドラマ化したとしたら・・・
わたしは、いつでも頭の中でドラマ化して楽しんでます。
キスの多いドラマになっちゃうのかな?って思うのですが
少女漫画を実写版にしたような感じで
若い世代の方に楽しんでいただけたらいいなって思うんです。
ドラマ化なんて夢、大きすぎるけど、今は
携帯で、パソコンで見て、楽しんでいただけるのが夢です。
ぜひ、1話から見てくださいね!!
空井より