第三章:禍の予兆、真実の行方
「この度は大変ご迷惑をおかけしました……」
尭宗の宿の一室。碧紗は戦った四人に失態を詫びていた。
「もういいって。碧紗に術をかけた奴は相当な使い手だったみたいだし」
蓮は斗暉に薬を塗ってもらい、緋炎に術で治癒力を速めてもらっている。
「姉さん。何があったんですか?」
「姉なんだから敬語なんて使わなくていいわよ。そうね、記憶と意識がはっきりしなくなったのは、使者の人と話してからなのよね。しかも離の」
「そんな、まさか!」
蓮は台を叩いて立ち上がる。その場にいた全員、滅多に動揺しない緋炎までぎょっとした。
「離なら、予め朱夏から『近々遊びに行く』と私に連絡が来るはずだ!」
「記憶が残るのに操られる人にわざわざ本当の国を明かすなんて足跡を残すような危険なこと、普通しませんよね」
「そう! って、星来か。能力使えるようになったからか、察しが良くなったんじゃ?」
星来はうっすらと笑みを浮かべる。さっきの戦いだってそうだ。黒い球を見抜いただけで、あれが元凶だということを悟った。これも四天士の能力の一つなのだろうか。
「四天士と言えば、さっきの姉さんが操られていた時にちょっと気になることがあったんですけど」
蓮の腕から薬を塗る斗暉の手が離れた。
「正気を取り戻そうと『蒼尊の星来だ』って言ったら、『四天士は殺す』って返されたんです」
記憶を辿り、言葉につむぐと次は意見の言葉を継ぐ。
「もし普通に皆を殺すだけが目的なら、わざわざ『蒼尊』を『四天士』に変換しなくてもいい気がしますし、『蒼尊も殺す』と言うはずだと思うんです。ですから、もしかしたら術者の目的は四天士を殺すことなんかじゃないかなって……」
星来の意見に付け加える者はおらず、部屋の外の声だけが静寂の中で響きわたる。気まずさに星来は慌てて立ち上がって頭を下げた。
「すみません! 出すぎたことを言ってしまって……」
「あ、そうじゃなくて。うん。確かに一理ある」
星来は蓮に促されて座る。自分の鼓動の音が聞こえる程、鼓動が速くなっていた。
「それなら魔物召喚の術を星来達より私の方にまわしていた理由ができる。それに尭宗。町に魔物は出た?」
尭宗が首を横に振ると、決定だな、と蓮は伸びをしながら呟いた。
「理由はまだわからないけど、目的は四天士を殺すことだろうな」
「これは面倒事になりそうだな。かつてないほど」
凌雅は溜め息をついた。
面倒事になるという理由以外に、こういう事は前例がない。
――いや、緋尊を殺そうとした例はあるが。
「蓮。僕から兄上に手紙出しとくよ。巽に来てもらうように。その方が都合がいいでしょう」
「そうだね。慶果、斗暉の手紙を出しに行ってくれるかな」
「わかりましたぁ! 蓮様!」
斗暉は部屋にあった紙に文字を書き出した。星来は文面を覗きながら訊く。
「斗暉の兄さんって何をやっていらっしゃるんですか?」
筆を走らせながら斗暉は答える。
「言ってなかったっけ? 僕の兄、久遠は四天士の一人、白尊だよ」
「四天士だったんですか!?」
星来が仰天すると、ははっ、と斗暉は笑った。
「兄上は銀髪紫眼で、僕はそれは病気だからと思って。父親が医者だから昔から家の医学書を読み漁って。白尊って知った時は少し兄上を恨んだね」
書き終わった手紙を慶果に渡すと、慶果は笑顔のままで一礼して部屋を静かに出ていった。
「でも、誰なのかしらね。四天士を殺すなんて」
碧紗は星来の肩に手を乗せた。星来も碧紗の方を向く。姉の顔は四天士の妹の心配、そのものだった。
「全く見当もつかない。疑えばきりがないし。どのみち悪意を持った相当な使い手。見つけ次第、処分しなければ」
蓮は緋尊の総将軍としての風格を露にして言う。
「そう言えば、随分日が落ちたわね。皆は中つ国に戻らなくていいの? 私も操られていたとは言え、官に詫びなきゃ」
「そうだね。明日は学校あるし。そろそろ帰らないと」
全員立ち上がり、部屋を後にして行く。星来も出ようとした時、碧紗が引き留める。
「ねぇ、星来。仕事を片付けて休みが出来たら、一緒に母さんに会いに行きましょ?」
少し考えて、星来は答える。母親の方はまだ認めたわけではないので。でも、この誘いを断ることはできなかった。
「うん。きっと姉さんを待ってるよ」
「じゃあ、蓮伝いに連絡するからね」
「うん!」
今度は笑顔で答えた。星来には姉が出来たことで、本当に嬉しかったのだ。
中つ国に戻った一同は、寮一階のリビングでくつろぐ。特に戦いに出向いた航以外の四人は、椅子の背もたれに背を完全に預けて伸びをしていた。
「今日は一段と疲れたぁーっ」
七緒はソファーに勢いよく寝っ転がった。高天原では傷だらけだった七緒の体は中つ国では無関係らしく、傷一つない。
「これで明日は学校があるもんね。信じられない」
「いつものことだろう」
凌雅は上級将軍の腕章を外し、コップに冷蔵庫から麦茶を取り出して一気に飲む。
「そうか、学校か。聖良。良かったらずっと寮にいない?」
七緒は上半身を反動で起こして聖良に尋ねた。聖良はとんでもない、と拒否の意で掌を振る。
「そんなっ! その、申し訳ないです! それに家の方が……」
「家の管理ね。西園寺。頼める?」
「はい、オーケー」
仁史は携帯電話を取り出し、電話をかける。何やら取引のような会話を軽くすると、満足気に聖良に微笑みながら、ブイサインをする。何のことだかわからず、聖良は首を傾げる。
「警備会社と契約オッケー。留守中も安心して」
「えぇぇっ!?」
かえって余計に訳が分からなくなって、おどおどしている聖良に引き換え、七緒は手を叩いて仁史を称えていた。
「何だよ。自分は何もせずに仁史に全部……」
「あ。ポルターガイスト」
「いでっ!」
七緒がさりげなく投げたクーラーのリモコンが航の脳天に直撃する。跳ねたリモコンを敏希が、またしてもさりげなくキャッチし、冷房を入れた。ある意味、見事なコンビネーション。
「でも、制服とか……」
「取りに行けばいいだけの話じゃない」
「だったら僕が一緒に行くよ」
仁史が名乗り出る。
「駄目だよ。言っとくけど合宿の予算案の書類、今日までだからね。会計さん」
にこにこしながら蓮が言うと、仁史の顔は一瞬にして青ざめた。
「はぁ!? ちょっと、何で早く言ってくれなかったの!? どうしよう。徹夜確実だ…」
仁史はとぼとぼ自室に戻っていった。後ろ姿もちょっと悲し気だった。
「あーあ。かわいそーに。どうせワザと言……」
「七緒。寒かったら温度上げるか切っていいぞ」
「あ、サンキュ」
「いっで!」
敏希がリモコンを投げ、航の後頭部に直撃し、跳ねたところを七緒がキャッチする。つまり、さっきと逆のパターン。
「じゃあ、さっさと行っちゃおうか」
「えっ、あ、はい!」
寮に長期滞在するのも悪くないし、もうここまで来たら引き下がれないと観念して、聖良は七緒の後について外に出た。
「新堂道場って、確か東泰町の一丁目あたりだよね?」
「はい。何で知ってるんですか?」
「沖縄の道場は全て把握してるから。父さんの影響でね。さぁ、ひとっ走り行ってきましょー」
「あっ! 待ってください!」
聖良は折れた靴の踵を直すと、疲れているはずなのにその色を見せず、さっさと走っていく七緒を追いかけて行った。
多分、あの様子なら住所だけでなく、場所も把握していることだろう。
「ここでいいんだよね?」
「はぁ、はぁ……はい……」
「大丈夫? ちょっととばしすぎたかな」
無理もない。七緒はマラソン大会で陸上部の長距離のエースを差し置いて、ぶっちぎりの一位を獲得している程の体力を持つ。しかも参加したのは男子の部。これでついてこれたら聖良の方がおかしい。
「じゃあ、取って来ますね。待っててください」
聖良は外と敷地を遮る門を開けて中に入る。持ってきた鍵をドアの鍵口に差し込み、回したが、いつものような鍵が開く音が鳴らない。考えられることはドアが元から開いている。
(おかしいな? 原瀬先輩と来た時はちゃんと確認したのに)
もしものことを考えて、聖良は恐る恐るドアを開ける。すると、玄関に人影が立っていた。泥棒、ではない。見覚えがあったから。即ち、聖良の父親。外泊を許さない父親は、憤怒の形相をしていた。
先程の仁史と同じように、血の気が引いていく。
「聖良! 誰が留守中に外泊を許した!」
聖良の全身から冷や汗が吹き出て、父親の言葉一文字一文字に押さえ付けられるような感じがした。
「ごめんなさい!」
「この前いなくなった時に叱らなかったからと言って、気が緩んだか!?」
父親は手を上げる。打たれる恐怖に震えながら聖良は手で顔を守る。
力んで、打撃に覚悟したがそれがこない。目を開けようとも怖くてそれができない。
「私は理由を聞いてから処罰を考慮しますが」
(七緒先輩の、声?)
聖良はそっと手をどけて、目を開ける。そこには二人の間に割り込み、聖良に向けられた父親の手を掴む七緒がいた。
「聖良を家から寮に連れ出したのは私です。それは謝ります」
横切った気配は全くしなかった。今あるのは、さっきの明るい七緒は消え失せ、高天原での総将軍の風格を表した、最早蓮であった。
「誰だ?」
父親は七緒の手を振り払い、まるで不審者として扱うように尋ねた。一方七緒は何があったのか、戦いの時に見せる笑みで笑う。
「誰だ、ですか。ご存知のはずです。今更訊かないでくださいよ。それとも『八年前のこと』ですから、お忘れですか?」
「ま、まさか! お前っ!」
父親は目を見開いてわなわなと震える。聖良には剣道道場の家同士、過去面識があったのだろうと、軽く考えていた。しかし、大いに違った。
「お久しぶりです。新堂雅治さん。いえ」
七緒は打ってかわってにこやかに、且つどこか皮肉をこめて笑う。
「先代巽国総将軍、巌 剛矯殿」
――え?
――父さんが、何だって?
「そうか。その顔は李雪――緋尊、蓮か」
「中つ国では巽七緒と言う名前ですけどね」
聖良は七緒の言った意味、父、雅治がどういうことを言っているか理解できなかった。例えできたとしても、信じたくなかった。
「なぜ、わかった?」
「聖良の戦い方が妙に高天原の戦い方だったんです。聖良と手合わせた凌雅と、少し戦いを見た私とで意見は一致しました」
「凌雅か。懐かしいな。彼奴は今、どうしている?」
「上級軍将軍まで昇格しましたよ。それに信官長も兼任しています」
「上級軍将軍だと? 水楊と万励はどうした?」
七緒は返答に困った。信用してもない上司を庇って死んだのだ。ここで正直に犬死にと言えば、彼らの矜恃を踏みにじることになる。七緒は苦渋の選択の末に答える。
「……殉職しました。私を庇い……」
「そうか。彼奴ららしいな」
七緒は爪が皮膚に食い込むほど、ぎゅっと拳を握り締め、怒りを抑えた。
――彼奴ららしい、だって? 今もなお、彼らを貶すつもりなのか?
「七緒先輩? どういうことなんですか?」
「あ、ごめん」
はっと我に帰り、七緒は聖良に状況説明しなかったことを詫びる。
「聖良。今から真実しか言わない。信じられなくても、ちゃんと受け止めてね」
七緒は一拍置いて、真実を話す。
「新堂雅治、高天原では巌剛矯という名だった。八年前まで高天原で巽国総将軍を務めていたが、緋尊暗殺未遂により高天原から追放された」
「……!」
聖良は視線で否定を雅治に望んだが、肯定の意で静かに首を縦に振った。
「すまない。聖良。産まれた時から気配で分かっていた。長い間、緋尊を片腕としていたから。娘を奪われるのではと高天原の者にも報告しなかった。そして、このことはいずれ言わなければならないと思っていた」
聖良は俯いた。一番恐れていたが、同時に尊敬していた父親にも高天原の存在を肯定された。夢だったらと何度願ったことか。
「蓮。いや、巽」
「いいですよ。呼び慣れている方で」
「では蓮。お前がここに来るのは、荷物を持ってやる以外にも理由があるだろう」
「さすが剛矯殿。よくお分かりで」
その前にと雅治は二人に家に上がるように促し、七緒はお言葉に甘えて、と靴を脱いで上がる。聖良も信じられないまま家に上がる。雅治は二人を居間に案内して座らせ、お茶を出した。
「昔話は面倒だ。用件だけ率直に」
「聖良が寮に滞在する許可が欲しいのです」
聖良は父親に限ってそんなことはない、許すはずがないと思っていたが、雅治は黙っていた。
「ちゃんとした理由はあるだろうな」
「もちろん。高天原で大分面倒事が起きまして。常に蒼尊の星来がいないと困るんです」
「それは……私が聞いても支障はないか」
七緒は無言で水滴がついたガラスのコップに入った麦茶を飲む。
「四天士を殺そうとする愚か者が現れました。術を使って太宰を操り、危うく私と星来は殺されそうになりました」
「バカな!」
滅多に取り乱さない雅治が驚きのあまり吐くように叫び、聖良は驚いて肩を縮ませた。
動揺を見せない七緒は、新堂家の麦茶を気に入ったらしく、一気に飲み干した。
「理由は分かりません。操った張本人は全くわかりませんし。魔物を多勢操っていたことから相当な者かと」
七緒は呑気に自分のコップに麦茶を注ぐ。聖良はどうしてそんな呑気でいられるのか不思議だった。
「だとしたら余計、聖良を家に留めて置かなければ。いつ攻めてきてもいいように、私が特別な稽古をつける」
分かっていませんねぇ、と七緒は溜め息をつく。
「人が雛を育てても飛ぶことは教えられないってこと、分かりますか?」
雅治は眉をひそめた。
「元総将軍の貴方が稽古をつけたら、そりゃ強くなるでしょうけど。でも、それでは四天士の力は使いこなせないままです。相手が四天士の力を以てしてでないと倒せない奴だったら、どうするんです」
聖良は七緒の感心した。七緒は勝ち誇ったように二の句を継ぐ。
「貴方は八年も高天原での実戦から退いている。貴方の力が衰えてると断言はしませんが、ここは現役の将軍職を預かる者に任せていただけませんか。それにこちらには凌雅の他に二人、将軍職の者がいますから」
雅治は返す言葉がなく、俯く。聖良がちらりと七緒の横顔を見ると、雅治に見られていないことをいいことに、満足げだった。
(やっぱり、七緒先輩はすごいな)
もっともな意見を出すと、人々の納得か、納得しか得られないことに逆上する怒りを得る、と聞いたことがある。果たして七緒の説得はどちらだろう。
しばらくして、雅治は苦虫を噛み潰したような顔で顔を上げる。
「私の意見を言う前に訊く。聖良を強くすることができるか。死なせないと誓うか」
「いずれも肯定しましょう」
対照的な表情の二人は一触即発の雰囲気を醸し出す。先に動いたのは、雅治。七緒の横に来て、跪いた。
「聖良を、頼む。絶対に守ってくれ。全て任せる」
その次に雅治は顔を上げ、聖良を見つめる。
「聖良。蓮は間違ったことは言わない。この人の言うことをちゃんと聞くんだぞ」
「分かりました」
七緒は二杯目を飲み干すと、壁に掛けられた時計を見る。
「さて、聖良。そろそろ夕食の時間だし、持ってく物持ってって行こう」
「待ってくれ。八年前から気になって、昨日更に……いや、いいか」
七緒は訝しく思い、立ち上がろうと立てた膝を、正座の状態に戻した。
「先代巽国太宰、呀 千宵は覚えているだろうか?」
「あぁ、はい。懐かしい名前ですね。共に追放された仲間がどうかしました?」
「いや、それが、もしかしたら追放されていないかもしれん。それかもっと酷い状況になっているかもしれん」
七緒の表情がぐっと険しくなった。
「八年前、私は高天原と中つ国を行き来する者のための門に千宵と共に義官に連行された。そこまでは良かった。しかし、手続きを済ませて門を通ろうとした時、千宵のみが別のところに連れていかれた」
七緒は何も言わずに話を聞く。顔の険しさだけが増していく。
「私と千宵は中つ国でも面識があった。久しぶりに千宵と話してみたいと思い、中つ国の千宵がいた東京に行き、昨日千宵の家を訪ねたが……」
「あ、だから母さんが『父さん、しばらく外泊する』って言ってたんだ」
聖良は今の状況から考えると、どうでもいいことを理解すると、この場を壊したのではないかと恐れた。しかし、その様子はなかった。
「千宵は『元からいなかった者』になっていた。家族に訊いても『そんな人は家にいない』と返された」
「それは……中つ国に現れた魔物の処理をした後のような時のように、ですか?」
雅治は頷く。七緒は顎に指を当てて怪訝な顔をした。
「それに中つ国に追放されていない、と言うなら蓮の耳に挟んでおきたいことがある」
やっぱり止めようか、と考えてから言うことを決意する。
「千宵は多少なら術が使えた」
「そ、そんな!」
七緒は目を見開いた。
「あの、訊いていいですか? 術って四天士以外の人はどうやって使えるようになるんですか?」
「術は天賦の力。特定の人じゃないと使えない。だから術で犯罪が起こったら結構犯人を絞りこむことができるから、普通はやらない。でも、多少しか使えないなら……」
「八年も経った。その間鍛練していたと考えれば辻褄があう。術は研けば鋭くなるものだ」
七緒は渋い顔をして考えた。
もし、あの時自分を殺そうとしたのもこのことの一貫なら、腑に落ちることもある。
(でも、千宵の目的って?)
「そう言えば、そろそろ夕食の時間、じゃなかったのか」
「あ、そうだ。麦茶、ご馳走様でした。聖良、荷物をまとめにいこう」
熱した鉄のような色の夕焼けに染まる道を、七緒と聖良の二人は持ってきた旅行用鞄を肩から下げて歩く。
「本当に、千宵って人なんでしょうか」
七緒は吐息をつくと、空を仰いだ。
「六割方は決定、と言っていいかもしれない。これで事が早く片付くのか、かえってややこしくなったのか……」
よそ見をしていたせいか、空き缶を蹴ってしまう。飛んでいった空き缶はカラカラと音をたてて転がる。
「あーもう! 止め止め! これ以上脳を使ったら破裂する!」
「な……七緒先輩!?」
「やだやだ! 文化祭の企画とかならいくらでも頭使えるけど、こんなこんがらがったことは拒否っ!」
「あ、七緒先輩!」
何か吹っ切れたように、七緒は猛ダッシュで走り去っていった。
「七緒先輩、こういうとこもあるんだ……」
呆れながら聖良は七緒を追いかけていった。